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授業のキーワード |
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生命物質と環境、生体エネルギー変換、DNAと遺伝情報、タンパク質立体構造、バイオインフォーマティクス
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授業のねらい |
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バイオサイエンスは生物学・化学・物理学の3つの分野が互いに関連しつつ発展してきた。とくに,DNA,タンパク質の構造の解明は生物物理学・分子生物学などの新しい分野の誕生とともに実現した。このような発展は様々な他の分野に大きなインパクトを与えている。このような状況を理解できるようにすることを目的としている。
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授業の概要 |
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生命体は物質で出来ている。生命構成物質は主に軽い原子からなる。生命を構成する分子は分子量が大きい。分子の大きさと構造,分子の動きの速さ,分子に関連するエネルギーが,生物の理解にとって重要である。自由エネルギーの流れは生命にとって必須である。この流れを捉える生物の精妙な機構を,タンパク質分子の機能と関連させて解説する。「ATPとはなにか」,「なぜATPがエネルギーの通貨として使われるようになったのか」,「ATPはどのような場面でつかわれるのか」などの問いに答えつつ,タンパク質とATPの結合の意外な側面にも触れる。タンパク質は分子レベルでの生命機能を担っている。このタンパク質の機能は,進化の過程で選択された立体構造を通して発揮されている。タンパク質の立体構造はどのように決定されたか,立体構造がどのように機能と結びつくのか,遺伝情報との関係に触れつつ解説する。
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授業内容のレベルと準備学習・関連科目 |
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学部教育での生物学・生化学の基本的知識を前提に講義しますが,準備学習としては教科書の該当ページを読むだけでなく,そこに書いてある問題も解くようにすること。各授業の該当ページは、授業タイトルの後の大括弧内に書いてある。該当するページがない場合は、予習プリントを読んで準備すること。
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授業の形式 |
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講義形式で授業を行う。場合によってはプロジェクターを使用する。
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授業内容 |
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(1) 生命物質の創成 [39-50] 生命はなぜ炭素原子を主な素材として選んだのか。窒素は何がだめなのか。 (2) 生命構成分子 [50-82] DNAの素子としての塩基,アミノ酸などの化学進化について。 (3) 水と生命分子の関係 [68-69] 水の特殊な性格と疎水結合・水素結合の果たす役割。 (4) 自由エネルギー獲得の代謝経路とその進化の環境との関係 [83-118] 無酸素環境での生命,環境の酸性化,プロトン・ポンプの出現の意義 (5) 電気化学ポテンシャルと膜電位 [403-423] 電流は筋肉で発見されたのはなぜか?筋収縮と電気現象について。 (6) 化学ポテンシャルとエネルギー共役 [107-118] 生合成での自由エネルギーの流れについて。 (7) 生体膜とATP合成系 [453-477] 酸素環境でのエネルギー代謝はなぜ効率がよいのか? (8) 分子モーターにおけるエネルギー変換 [587-609] リニアーモーターとしての筋肉での,化学エネルギーが力学エネルギーに変換するメカニズムは,どこまで分かっているか。 (9) タンパク質構造の階層性 [119-143] 遺伝情報だけからタンパク質の構造は決定されるのか? (10) タンパク質立体構造(2次構造)[126-135] 水素結合の果たす役割は何か?なぜ水の中で水素結合が安定なのか? (11) タンパク質立体構造(3次構造・4次構造)[136-143] 機能するタンパク質の構造と活性部位。 (12) タンパク質構造のモチーフ(バイオインフォーマティクス入門1)[予習プリント] モチーフはいくつあるのか?バイオインフォーマティクスの重要性。 (13) DNA構造と遺伝子情報(バイオインフォーマティクス入門2)[229-265] 遺伝子情報で進化がわかるか? (14) タンパク質の原子構造の研究法 [130-131] X線結晶解析法,NMR分光法,電子顕微鏡像三次元像再構成法について。 (15) 構造生物学演習 [予習プリント]
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成績評価の方法 |
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レポートで評価する。講義の内容に関するA4版のレポートを毎回作り,それらを合わせて試験期間の最終日に提出のこと。 テキストは水性ボールペン、図は鉛筆、色鉛筆の使用可(推奨)。
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テキスト、教材 |
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教科書:◎Essential細胞生物学(原書第2版)(南江堂,8000円)。
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