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授業の内容(Course Description) |
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世界経済危機は、パートIが大規模な政策と新興国の成長で一段落した後、ユーロ圏財政破綻の危機で、パートIIに移った。特に日本経済は、90年代のバブル崩壊後長期低迷し、さらに世界経済危機に巻き込まれて「失われた20年」となった。 この危機を生きのびるためには、なぜ危機に陥ったのか、なぜ低迷が続くのか、どうすれば脱出できるのか、危機・低迷を繰り返さないためにはどうすればよいのか、各人が考えを深める必要がある。 世界経済危機はアメリカの住宅バブル崩壊から起こったものであり、原因や対応策、その後の低成長、国債累増は、日本の経験とそっくりなため、「米欧の日本化」という見方が定着した。マクロ経済学的に見れば、両者は同じ原理から解釈できるはずである。 マクロ経済学は、世界経済危機を予見できなかったばかりでなく、あらゆる市場行動は合理的である、という市場楽観主義を広めて危機を引き起こした元凶ですらある。だが、いったん危機が起こってしまうと、事後的にマクロ経済学のどこが間違っていたのか、どう解釈し直したらよいのか、危機に至る過程と危機への対応、危機から脱出する過程をどう分析するか、が重要なマクロ経済学のテーマになる。 この授業では、世界経済危機と日本の「失われた20年」の現状を把握し、マクロ経済学の基本的流れをたどり、その有用性と限界を明らかにした後、バブル発生、崩壊、長期低迷のマクロ経済学的解釈を試みる。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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世界経済危機、日本の経済危機について、マクロ経済学の観点から、自分の見解が述べられるようになること。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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テスト100%。テストは、授業をまじめに受け、家で勉強し、最低限必要な知識(MR)を身につけたか(70%)、自分で考える力(自分流)を身につけたか(30%)、をみる。出席しなければ単位はとれない。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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参考文献:小島祥一『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』(岩波書店、2007年1月) 小島祥一『官民もたれ合い経済の長期低迷-簡単な2部門動学モデルによる理論分析』 『帝京経済学研究』第39巻第2号所収、2006年3月 小島祥一『企業努力なき景気対策では財政破綻-90年代日本の経験の確率論的分析』 『帝京経済学研究』第40巻第1号所収、2006年12月
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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経済がどう動いているか、新聞、テレビ、ネットなどで毎日フォローし、自分でもコメントしてみること。 教科書、参考書で授業に先行してテーマに親しんでおくこと。 授業後、プリントを材料にして、考え方の流れを振り返り、不明な点を詰めること。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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世界経済危機、日本の経済危機について、ユニークな発想を自らも試みてほしい。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 第1章 世界経済危機と日本の「失われた20年」 1.ユーロ圏財政破綻の危機で世界経済危機はパートIIへ 2.世界経済危機パートIからパートIIに至るメカニズム 【第2回】 3.各国の金融緩和・財政拡大策と90年代日本の比較 4.日本経済のゼロ成長、デフレ、高失業、世界シェア低下 【第3回】 5.日本経済のゼロ金利、国債残高累増、人口減少 6.米欧の日本化 【第4回】 第2章 マクロ経済学の基礎 1.マクロ経済の循環 (1)モノの流れ 【第5回】 (2)カネの流れ (3)時間的流れ 【第6回】 2.ケインジアンの45度線分析 【第7回】 3.数式による45度線分析 【第8回】 4.IS-LM分析 5.世界経済のIS-LM分析 【第9回】 6.数式によるIS-LM分析 【第10回】 7.マンデル・フレミング・モデル 【第11回】 第3章 マクロ経済の動学的経路 1.経済成長論 (1)資本蓄積と経済成長の仕組み 【第12回】 (2)経済成長の黄金律 (3)技術進歩と経済成長 【第13回】 2.消費の2時点間配分と貯蓄 (1)リカードの中立命題 (2)消費のオイラー方程式 【第14回】 3.完全予見、合理的期待が成り立たないときに生ずるバブル 【第15回】 4.合理的バブルの理論と現実の比較
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