Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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日本経済論特講 II 小島 祥一
選択  2単位
【経済学専攻】 12-1-1110-0210-10

1. 授業の内容(Course Description)
 世界経済危機は、パートIが大規模な政策と新興国の成長で一段落した後、ユーロ圏財政破綻の危機でパートIIに移った。特に日本経済は、90年代のバブル崩壊後長期低迷し、さらに世界経済危機に巻き込まれて「失われた20年」となった。
 この危機を生きのびるためには、なぜ危機に陥ったのか、なぜ低迷が続くのか、どうすれば脱出できるのか、危機・低迷を繰り返さないためにはどうすればよいのか、各人が考えを深める必要がある。
 世界経済危機はアメリカの住宅バブル崩壊から起こったものであり、原因や対応策、その後の低成長、国債累増は、日本の経験とそっくりなため、「米欧の日本化」という見方が定着した。世界経済危機を知るためにも、日本経済の危機を知ることが必要となる。
 日本経済論特講Iでは、世界経済危機と日本の失われた20年、20世紀後半以降の日本の政治経済概略、日本の政治経済ゲームの4幕劇と堂々巡りについて、幅広く学んだ。この日本経済論特講IIでは、日本の危機の根源にある財政・国債破綻の危機と、人口減少・年金破綻の危機について、くわしく検討する。さらに、日本経済が高度成長からバブル発生・崩壊・長期低迷に陥った過程を理論的に解明するため、マクロ経済学のラムゼー・モデル、重複世代モデルを用いて、伝統的な経済成長論を概観するとともに、そこにバブルを導入するとどういう影響が現れるか、標準バブルと信用バブルはどのような仕組みで発生し崩壊するか、を検討する。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 世界経済危機、日本の経済危機について、日本経済の経験に基づいて、自分の見解が述べられるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 テスト100%。テストは、授業をまじめに受け、家で勉強し、最低限必要な知識(MR)を身につけたか(70%)、自分で考える力(自分流)を身につけたか(30%)をみる。出席しなければ単位はとれない。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:朝日新聞編『失われた20年』(岩波書店、2009年2月)
 参考文献:小島 祥一『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』(岩波書店、2007年1月)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 経済がどう動いているか、新聞、テレビ、ネットなどで毎日フォローし、自分でもコメントしてみること。
 教科書、参考書で授業に先行してテーマに親しんでおくこと。
 授業後、プリントを材料にして、考え方の流れを振り返り、不明な点を詰めること。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 世界経済危機、日本経済の危機をどう考えるか、いかに脱出するか、ユニークな発想を自ら試みてほしい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 第5章 国債・財政破綻の危機
  1.市場と政府の間のカネの流れ
【第2回】
  2.国債残高の累増
  3.公債依存度の増大、元利支払い比率
【第3回】
  4.財政投融資の仕組み
  5.国のバランスシート
【第4回】
  6.借換債の仕組み・国債の資金繰り状況
  7.一般会計・特別会計の歳出・歳入構造
【第5回】
  8.主要税目の税収の推移
  9.社会保障・税一体改革、成長戦略
【第6回】
  10.プライマリー・バランスと財政理論
  11.経済政策と金融工学理論
【第7回】
第6章 人口減少・年金破綻の危機
  1.人口ピラミッドの推移
【第8回】
  2.年金の仕組み
【第9回】
  3.社会保障のカネの流れ
  4.年金改革のさまざまな案
【第10回】
 第7章 経済成長とバブルのマクロ理論
  1.マクロ経済の時間的流れ
   ① 経済成長のプロセス
   ② バブル発生・崩壊・長期低迷のプロセス
【第11回】
  2.貯蓄率一定の経済成長モデル
   ① 資本蓄積のプロセス
   ② 黄金律
   ③ 技術進歩
【第12回】
  3.現在と将来の消費配分:貯蓄率可変の経済成長モデル
   ① ラムゼー・モデルとオイラー方程式
   ② 重複世代モデルと貯蓄のライフ・サイクル
【第13回】
  4.バブルのマクロ経済計算
【第14回】
  5.バブルなしの経済成長プロセス
【第15回】
  6.標準バブルと信用バブルの発生とマクロ的影響