Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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日本の産業 II
(産業論 II)
和田 正武
選択必修  2単位
【経済】 12-1-1110-0584-06

1. 授業の内容(Course Description)
 産業活動は昔から我々の生活を支える経済基盤であった。産業活動によって我々は生計をたて、消費する物資を得、種々のサービスを享受してきた。また地域の産業活動は地域経済を潤し、地域の文化を育ててきた。そして国レベルでは産業は国力の源泉であった。この授業では我々の生活と産業活動のかかわりを、いろいろの角度から光をあて検討する事により改めて産業活動の我々にとっての意味を理解するとともに、その日本における産業活動が大きな転換期を迎えている現在、これまでの日本産業の発展プロセスを見直しつつこれからの我々の生活と産業活動との新たな関係を展望することとしたい。産業論Ⅱでは産業組織(業界内の競争環境、独占禁止法、特許法など)、中小企業問題(ベンチャー企業、地域と中小企業)、産業立地と地域経済、産業技術、環境問題といったテーマを取り上げる。最後にこれからの産業社会とグローバリゼーションの問題を考えたい。産業論Iで履修したさまざまな産業のことを、新しい視点から考察してほしい。産業論Iを履修していることが望ましい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 日本の産業Iに引き続き、さまざまな産業分析の視点を学ぶ。そのことによって、特定の産業業種の特徴、発展性、問題点などを、自分なりに分析し、更に深く理解できるようにする事を目標とする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 期末テスト(記述式)60%、出席状況40%(適宜、授業中にミニテストを行う)。また出席率3分の1以下の者は成績評価しない。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 参考書
  1.『現代中小企業論』(清成忠男 日本経済新聞社)
  2.『産業組織政策』(小西唯雄 東洋経済新報社)
  3.『現代産業組織論』(井手秀樹 放送大学)
  4.『日本経済地理読本』(東洋経済)
  5.『イノベーションと日本経済』(後藤 晃、岩波新)
  6.『グローバル経済の本質』(伊藤元重、ダイヤモンド社)
  7.『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(シュティグリッツ、徳間書店)等
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 上記参考書を1冊でも完読すること。また日頃から、新聞の経済欄、経済雑誌に目を通す習慣をつけること。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 産業活動に関心があり、自分でテーマを見つけて勉強したいと言う学生を歓迎する。日々新聞の経済記事に目を通すことを期待する。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 「産業組織論(1)」:
 産業組織とは?ビール産業を例にした産業秩序の話。独占と寡占市場のこと。市場競争を決定する要因と産業による違いの理由を理解する。
【第2回】
 「産業組織論(2)」:
 独占禁止法のこと。歴史とその意義。市場経済体制の守護としての法律。日本に置ける導入の経緯とその受容。近年における運用事例。グローバル経済の中での独占禁止法の意味。
【第3回】
 「産業組織論(3)」:
 知的財産権と特許法。特許法の意味。技術開発を支援することと技術の使用権の占有を認めることの意味を考える。企業経営戦略の中での特許の扱い。ますます熾烈化する最近の特許紛争。
 課題:産業組織論の主要テーマは何かを整理してみよう。
【第4回】
 「中小企業論(1)」:
 中小企業とは?産業活動における中小企業の役割、位置づけ。産業ごとの中小企業の位置づけが異なること。日本における中小企業の特徴。
【第5回】
 「中小企業論(2)」:
 これまでの中小企業論。下請け構造の中の中止企業。弱い存在としての中小企業から、経済を活性化させる主体としての中小企業への見方の変化。
【第6回】
 「中小企業論(3)」:
 ベンチャー論。廃業率と開業率。先細る開業率を高める必要性。開業率を高める工夫としてのベンチャービジネス支援策。シリコンバレーモデルとクラスター構想。
 課題:近日、中小企業への期待が高まっているのはなぜか?中小企業が大企業に勝る点にはどのようなものがあると考えられるか?
【第7回】
 「中小企業論(4)」:
 中小企業と地域経済、特に産地の問題。産地構造の特徴。同業者、関連業者の集積によるメリット。市場環境の変化による産地の変貌と地域経済の衰退、それに対する工夫の事例を学ぶ。
【第8回】
 「地域産業論(1)」:
 日本の産業の地域分布。地域経済と産業立地。産業の発展、衰退に伴う地域経済への影響。産炭地の疲弊。鹿島、むつ小川原におけるコンビナートの立地などによる地域経済の変化。
【第9回】
 「地域産業論(2)」:
 日本における産業立地政策の変遷。大工業地帯の形成と国土の均衡ある発展、分散立地へ。高度経済成長期の終焉により、企業誘致から内発型地域開発へ。経済構造改革特別区構想と地域産業政策
【第10回】
 「地域産業論(3)」:
 ウエバーによる産業立地論。物流費、人件費、集積のメリットという重要3要素。製造業、サービス業、流通業の立地選択。市場立地型、消費地立地型、集積地立地型など。
 課題:産業ごとの立地条件を考えてみよう。ビール工場、鉄鋼工場、自動車工場、半導体工場、縫製工場、デパート、コールセンター、アウトレットモールなど。
【第11回】
 「地域産業論(4)」:
 現在の地域経済の問題点。地場産業、地域における産業集積。産業の空洞化への対応。内発型地域開発の事例。(一村一品運動、地域ブランド、産業クラスターなど。)
 課題:自分の故郷の主要産業を調べ、その立地の経緯を調べてみよう。故郷の立地条件の評価をしてみよう。
【第12回】
 「産業技術論」:
 産業技術の発展史と日本の技術発展プロセスの特徴。
 新しい技術による、古い技術の代替のメカニズム(デジカメ、携帯電話など)、産業組織への影響
【第13回】
 「環境ビジネス論」:
 環境ビジネスとは?環境ビジネス市場の成立条件としての規制、経済的インセンティブなど。背景としての地球温暖化、資源の枯渇など。リサイクル産業。持続可能な社会の構築への貢献
【第14回】
 「グローバル経済下の日本産業」:
 縮小する日本市場と拡大する新興国市場。海外の拡大市場への戦略。ガラパゴス症候群からボリュームゾーンへの展開へ。
 課題:今後日本の産業はどの方向を目指して発展するべきか、考えてみよう。
【第15回】
 まとめ