Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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日本の財政 II
(財政学 II)
古市 将人
選択必修  2単位
【経済】 12-1-1110-1939-05

1. 授業の内容(Course Description)
 日常生活において、150円で150円の価格を持つジュース1本を買うことは、150円とジュース1本が対応していることを意味している。そのため、ジュース2本が欲しければ、300円をお店に支払わなければならない。当然ながら、買い逃げ、食い逃げは違法である。しかし、私たちが日々享受している公共サービスには、以上の関係が必ずしも当てはまらない。例えば、あるBさんが、「私は、隣のAさんよりも、20倍税金を納めている。だから、Aさんの20倍の公共サービスを受け取るべきだ。または、私の子どもはAさんの子どもの20倍の教育サービスを受けるべきだ」と発言したとしよう。端的に言うと、公共経済においてBさんの論理は成立しない。
 「納税額と公共の財・サービスの関係」の特殊性が、上記の極端な仮想例に現れている。納税額と公共サービス量は、一対一の関係をもっていないのだ。しかし、公共サービスの財源は税金ではないのか、という疑問が生まれてくるだろう。この問題に答えるためには、政府が毎年度作成する「予算」について、学ばなければならない。
 政府は、税金を財源に公共サービスを私たちに供給する。さらに、政府は公共サービスや税制を通じて、所得の再分配という役目をはたしている。市場経済の下でもたらされる所得や資産は、個人の能力・努力などの多様な要因に左右されており、これを、所得税の累進構造や社会保障給付を通じて再分配を図ることは、社会の秩序を確保するためにも重要なことである。このような貨幣の徴収と分配の実態を明らかにし,社会の秩序安定を図る政府の活動を分析する学問のことを財政学という。日本財政を理解するのに必要な制度・理論・歴史から現状の財政問題にわたる幅広いテーマを本講義では扱う。
 日本の財政Ⅱでは、日本の財政Ⅰに続き日本財政を理解するのに不可欠な制度と近年の動向を扱っていく。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 国や地方自治体の財政の行く末は私たちの生活に大きな影響を与え続けていく。本講義の目標は,今日の財政問題に対して受講生に一定の理解をもってもらうことである。日本の財政Ⅱでは、中央政府と地方自治体の間の財政移転の実態と歴史についての理解を得てもらうことを目標としている。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 基本的に、試験の成績で評価する。
 ただし、試験の点数が基準値(C判定)に達しなかった場合は、出席点による救済措置が適用される。出席回数が大きいほど、この救済措置は強力になる。成績評価・試験方法に関する詳細は第1回の授業時に説明するので、可能な限り出席してほしい。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストは、特に指定はしない。毎回の講義において、プリント・資料を配布する予定である。
 講義に関係する参考文献として、以下の文献を挙げておく。参考文献は、講義にて適宜紹介する。
 参考文献
  金澤史男編『財政学』有斐閣。
  神野直彦『財政のしくみがわかる本』岩波書店
  神野直彦『財政学』有斐閣。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 取り上げるトピックは豊富なので,配布するプリント・資料を活用して積極的に復習をおこなってほしい。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 日本の財政Ⅰの知識がなくても理解できる講義内容にする予定である。しかし、なるべく日本の財政Ⅰと併せて履修してほしい。
 授業に出席して私語をせずに勉強する学生の履修を希望する。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 授業のガイダンスと基礎知識の確認・復習
【第2回】
 日本の財政Ⅰの復習:財政とはなにか
【第3回】
 社会保障論(1):総論
【第4回】
 社会保障論(2):福祉の準市場化について
【第5回】
 租税論入門
【第6回】
 公債論入門
【第7回】
 地方財政の理論と実際(1):総論
【第8回】
 地方財政の理論と実際(2):財政調整制度論の役割について
【第9回】
 地方財政の理論と実際(3):地方交付税の実態について
【第10回】
 行政改革とNPMについて
【第11回】 
 日本の地方政府(1):二元代表制と政府間財政関係
【第12回】
 日本の地方政府(2):居住地課税と普遍主義的給付
【第13回】
 地方財政と破綻法制
【第14回】
 予算の正当性と日本財政の特質
【第15回】
 まとめ

 ※ 進度などの関係で、一部変更する場合がある。