Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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発達障害児・病弱児の生理・病理 藤井 靖史
選択  2単位
【教職大学院】 12-1-1331-1359-08

1. 授業の内容(Course Description)
 発達障害児と病弱児の病理と生理を学び、障害児教育・病弱児教育に応用できる知識を得る。
 病弱児に対する医療と教育の相互関係を学び、医療的配慮から必要な教育上の制限や医療効果を高める上で必要な教育や学校生活の充実を実現するための問題点を整理する。
 代表的な疾患である広汎性発達障害と注意欠陥多動性障害に関して行われる医学的アプローチや診断方法、ソーシャルスキルトレーニングを理解し、学校教育への応用方法を学ぶ。
 事例を通じて学校と家庭、保健・医療機関との連携のあり方について学習する。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 <A類>
 ・発達障害児と病弱児の理解に必要な脳の発生・解剖・生理を理解する。
 ・発達障害に対する医学的アプローチや原因や病態の解明のための最新の研究を概観する。
 <B類>
 ・個々の子どもに対して、家庭と学校・地域教育委員会との協力体制や医療機関との連携を構築する応用力を育てる。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 発達障害児・病弱児の医学的と教育の連携に関する理解度(レポート)と、演習への取り組む姿勢を基にしてで評価する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト
  講義用に作成したテキストを使用する。
 参考書
  『発達障害医学の進歩 No.7』 有馬正高 他 診断と治療社
  『脳と神経の科学』 小林繁 他 オーム社出版局
  『心の理論 心を読む心の科学』 子安増生 岩波書店
  『自閉症スペクトラムの医療・療育・教育』 篠田達明 他 金芳堂
  『発達障害児の医療・療育・教育』 松本昭子 金芳堂
  『脳神経科学イラストレイテッド』 森寿 他 羊土社
  『小児ケアのための発達臨床心理』  岡堂哲雄 へるす出版
  『言語発達遅滞の言語治療』 小寺富子 診断と治療社
  『発達期言語コミュニケーション障害の新しい視点と介入理論』 笹沼澄子 編集 医学書院 他
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 準備学習は、特にありません。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 学習した知識内容を常に最新のものに置き換えて行くことが必要です。その為には、学生各自が在学中から知識を更新していくための学習方法や情報獲得手段を獲得することが望まれます。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 オリエンテーション  脳のしくみ
  脳の発生、解剖、生理を理解する。
【第2回】
 病弱児に対する医療と教育の関わり(1)
  病弱児の主な疾病のうち、慢性心疾患、慢性腎疾患、血液悪性腫瘍、慢性呼吸器疾患、神経筋疾患に対する医学的基礎知識を学ぶ。また、各疾患・各治療により生じる児童生徒の不安や心の動揺などを理解する。
【第3回】
 病弱児に対する医療と教育の関わり(2)
  病弱児に対して行われる医療が教育に及ぼす影響と、病弱児に対する教育や学校生活が医療効果に及ぼす影響について学ぶ。A・B類学生混合のグループを作り、医療効果を高めるための教育方法について協議し、その成果をまとめて発表する。
【第4回】
 発達障害総論
  発達障害を鑑別し、知的障害・小児の精神疾患との関係を理解する。
【第5回】
 広汎性発達障害(PDD)1(概念の変遷、診断、治療)
  PDDの概念の歴史的変遷を理解する。診断における心理検査や脳画像検査の役割と薬物療法を中心とした内科的治療について理解する。また、内科的治療において家庭や学校・保健機関との協力について学ぶ。
【第6回】
 広汎性発達障害(PDD)2(症状を説明する理論)
  「心の理論」障害説、中枢性統合理論障害説、実行機能障害説、超「男性脳」理論、ミラーニューロンシステム障害説などの代表的な理論について学ぶ。
【第7回】
 広汎性発達障害(PDD)3(療育)
  代表的な療育であるTEACCHプログラムの概要を学び、PDDにおける療育の実際について学ぶ。
【第8回】
 広汎性発達障害4(就学後の問題点とその対応)
  ・就学相談における医師や臨床心理士の役割と、学校選択の実際における諸問題を理解する。また、療育と特別支援教育との連携における問題点を整理する。
  ・A類学生は、学校におけるPDD児の実態を調査し発表する。
  ・B類学生は実際に経験したPDD児の学校での問題点を発表し、討論で司会をする。
【第9回】
 注意欠陥多動性障害(ADHD)1(概念、診断、治療)
  ADHDの疾患概念と診断方法を理解する。また、薬物療法を中心とした内科的治療法について理解する。
【第10回】
 注意欠陥多動性障害(ADHD)2(療育)
  ・Social skill training の概念を理解する。また、二次障害の予防のために、家庭や学校での対応や、医療の適切な介入について理解する。
  ・A類学生は、学校におけるADHD児の実態を調査し発表する。
  ・B類学生は実際に経験したADHD児の学校での問題点を発表し、討論で司会をする。
【第11回】
 小児の精神疾患
  PTSDや適応障害、不安神経症、小児統合失調症などについて医学的基礎知識を学ぶとともに、家庭や学校と医療現場の連携の重要性を理解する。
【第12回】
 学習障害(発達性読み書き障害を中心として)
  ・学習障害の概念と診断を理解する。
  ・種々の発達性読み書き障害について診断プロセスと、医学的対応方法を学び、事例を通じて個々の障害児に対する具体的な対応を学ぶ。B類学生の経験を取り入れる。
【第13回】
 言語発達障害(特異的言語発達障害、吃音)
  種々の言語発達障害の概念と診断プロセスと、対応方法を学び、個々の障害児に対する具体的な対応を考える応用力を身につける。B類学生の経験を取り入れる。
【第14回】
 症例検討(医療施設における障害児への対応の実際)
  A・B類学生混合のグループを作り、グループごとに医療施設での障害児への対応の実際を学び、担当した子どもの問題点を整理する。
【第15回】
 まとめ
  授業を通じて学んだことをもとにして、A類学生は、発達障害児と病弱児の生理についてまとめる。B1類学生は、自己の体験を振り返り、対象児への理解と対応の問題点を整理する。B2学生は、発達障害児や病弱児に関わる学校と医療機関の連携の在り方についてまとめる。