Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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児童生徒理解と心理教育的アセスメント 芦澤 清音
選択  2単位
【教職大学院】 12-1-1333-1556-05

1. 授業の内容(Course Description)
 授業は、2名の教員によるティーム・ティーチングの形態で行う。
 通常学級には多様な子どもたちが在籍している。いわゆる「気になる子」の行動の背景は、発達障害など発達の偏りによるもの、虐待、不適切な養育、貧困、異文化など、家庭の育ちに起因するものなど様々である。また、それらが複合的に関連し合っていることも多い。さらに、子どもを理解するには、学校での人間関係その他、学校環境との関連も見逃すことはできない。このように子どもたちの気になる姿の背景は多様であり、教師は、それらの多様な子どもたちを理解し、学級づくりをしなければならない。
 本授業では、子どもの発達的理解を中心に、その他子どもが示す多様な行動の背景について理解を広げる。まず、児童生徒の心身の発達や心理・行動特性を知るために必要な心理検査の理論的根拠と実施方法、解釈の仕方を学び、教育・医療・保健相談等の専門機関及び学校で実施された心理検査の具体例をもとに検査資料の解釈に関する理解を深める。また、行動観察の視点、観察の仕方、観察メモの作成などの方法論を理解し、各自が観察を実施して得られた資料の解釈までの一連の過程について、実践的に学んでいく。さらに、学んだ知識の応用として、過去の事例を記述し、解釈を行う。そして、心理教育的アセスメントが実際の指導場面やクラスづくりにどのように活用できるかについて検討し、 実践的な活用法についての理解を深める。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 <A類学生>
 ・心理検査の意義と実施方法を理解し、専門機関からの検査等報告書を読み取ることができる。
 ・学校場面での児童生徒の行動記録をもとに、問題となる行動を個人の特性と学校内の人間関係や授業・教育環境との相互関係から総合的に解釈し、問題行動のメカニズムについて説明することができる。
 ・児童生徒が示す行動について、包括的なアセスメントをすることができる。
 <B類学生>
 ・心理検査の理論的根拠に基づいて、専門機関からの検査等報告書を読み取り、校内及び保護者が理解できるように説明することができる。
 ・学校場面での児童生徒の行動記録をもとに、問題となる行動を個人の特性、及び、人間関係や授業内容・方法など授業・教育環境との相互関係から総合的に解釈し、問題行動のメカニズムについて理解し、実践指導に活用することができる。
 ・児童生徒が示す行動に関する包括的なアセスメントをすることができ、アセスメントに基づいた指導計画を立案し、校内におけるキーパーソンとして専門機関と連携することができる。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 心理検査、行動観察の実際をとおして、児童生徒を理解する可能性と限界について理解できたか、WISC―Ⅳその他の心理検査の結果の解釈ができるようになったか、心理検査と行動観察を総合した包括的アセスメントをすることができるようになったか、心理教育的アセスメントに基づく指導についてのアイデアがどの程度広がったか、を総合して評価する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト
  特定のテキストは使用しない。
 参考書
  上野一彦他編『軽度発達障害の心理アセスメント―WISC-Ⅲの上手な利用と事例』日本文化科学社
  新版K式発達検査研究会編『新版K式発達検査法』2001年版 ナカニシヤ出版
  芦澤清音著『発達障がい児の保育をインクルージョン』大月書店
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 WISC検査は、授業外に受講生同士で実施し、検査結果資料を作成し、授業内で検討を行う。また、それ以外にも、各自アセスメント事例を授業時間外に作成し、授業で検討する。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 児童生徒理解について、日常から子どもの視点に立ち、内面を理解しようとする姿勢を持ってもらいたい。子どもに関心を持ち、多角的に子どもを見るように心がけてもらいたい。授業が、自由で活発な意見交換の場となるように、主体的、積極的に参加してもらいたい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 心理教育的アセスメントとは
  児童生徒の特性を理解する一手段としての心理教育的アセスメントの概要と意義について学ぶ。
【第2回】
 アセスメントの視点-事例から学ぶ-
【第3回】
 WISC―Ⅳ知能検査の理論と実施方法
  A、B類学生は、WISC―Ⅳの理論と実施法について理解する。
【第4回】
 WISC―Ⅳ知能検査の体験 
  代表者が検査者と被験者になり、他の学生は見学する。
  その後、授業外に、全員検査を体験する。
  A、B類学生は、相互に検査者と被験者になり、検査を体験し記録の仕方を学ぶ。 
【第5回】
 心理検査の解釈方法を学ぶ
  各自の検査結果の解釈仕方と報告書の書き方を学ぶ。
  A、B類学生は、WISC―Ⅳ知能検査の結果の解釈の方法と報告書の作成方法を学ぶ。
【第6回】・【第7回】
 検査結果を解釈し報告書を書く
  各自検査報告書を持ち寄り、解釈について検討しあう。
  ・A類学生は、検査結果の読み取り、 解釈の仕方について学び、心理発達特性をより詳細に知るための心理検査法についての理解を深める。
  ・B類学生は、検査結果の読み取り、 解釈の仕方について学び、心理発達特性をより詳細に知るための心理検査法について理解を深める。更に、学校現場における心理検査の利用と限界について考察する。
【第8回】
 その他の心理検査を学ぶ
  ・新版K式発達検査の理論、実施方法を学ぶ
  ・A、B類学生は、新版K式発達検査の理論と実施法について理解し、実施場面を観察する。
  さらに、新版K式発達検査を使用した事例の解釈を学び、その活用と限界を理解する。
【第9回】
 行動観察の意義を学ぶ
  ・子どもの行動の背景と意味を文脈に即して把握する方法としての行動観察の意義を理解する。
  ・B類学生は、観察の基づく実践事例について具体的にイメージ形成できるように報告し、討議を通して児童生徒の理解を深めると同時に、柔軟で、多様な視点を持つことの意義を深める。
【第10回】
 行動観察の方法論を学ぶ
  行動観察のための各種の具体的な方法や手順・留意点、観察資料を体系的・組織的に構成するために効果的な観察メモの取り方などを学ぶ。併せて、参与観察、フィールドワーク、アクションリサーチの意義について理解する。
【第11回】・【第12回】
 行動観察の事例検討と観察記録の整理・検討
  ・各自、実習校や、在任校の実践事例を持ちより、検討資料を作成し、事例検討を行う。
  ・A類学生は、実習校の事例について検討する。観察記録の整理と分析・考察を行う。
  ・B類学生は、これまでの実践事例を振り返り、観察記録の整理と分析・考察を行い、学校向け、及び、保護者向けの報告書の作成を試みる。
【第13回】・【第14回】
 包括的アセスメントの実際
  ・心理検査と行動観察に基づく結果・記録を総合して、子どもの全体像についての理解を深めるために包括的アセスメントを行う。
  ・B類学生は、これまでの実践事例が包括的な心理教育的アセスメントの要件を満たしているかを検討する。
【第15回】
 実際の教育指導場面への活用
  ・心理教育的な包括的アセスメントから得られた結果を、 指導場面にどのように活用できるかを検討し、 指導計画を作成する。
  ・B類学生は、校内研修等において教職員に指導計画を適切にプレゼンテーションし、助言指導・コンサルテーションするための方策を考案する。