Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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グローバリゼーションと国際教育 土屋 千尋
選択  2単位
【教職大学院】 12-1-1334-1586-01

1. 授業の内容(Course Description)
 本授業では、前半は、教育開発についての講義と平行して他国の教育実情を自ら研究し、日本との比較をこころみる。後半は、日本国内に焦点をあて、日本語を第一言語としない子どもたち、文化間を移動する子どもにたちはだかる「制度の壁」「ことばの壁」「こころの壁」について把握する。そして、すべての子どもが、社会に包摂され、自己存在感・自己有用感をもって、学校生活がおくれるようにするための具体的実践について考察する。これらの作業と演習形式の授業を通じて、自己の課題にせまる一助とする。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 グローバル化する世界において、教育は一国内の動きのみならず広く世界的な文脈に影響を受けている。また、教育は社会の発展に向け重要な役割を担っており、世界的な課題を認識し、その解決に向けての教育の役割を知ることは、新時代の教員の不可欠の力量である。以上のような観点から、本講義では、国際理解をふかめつつ、文化間を移動する子どもの前にたちはだかる課題を把握し、ひろい視野をもち、教育実践ができる教員を育成することを目的とする。
 <A類学生>
 教育を世界的にみることで、授業づくりの発想をひろげ、教育方法の考案における創意工夫ができる。それらを学校外の人々とも恊働してすすめることができる力を身につける。
 <B類学生>
 世界的視野から日本の教育を捉え直し、各国および国内の例から授業改善を積極的に行う資質を身につける。また、学校単独はではなく、地域・行政をまきこんだ教育支援ネットワークを形成していくことができる力をやしなう。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 平常点(課題提出、授業へのとりくみ)60%、期末試験(レポート)40%
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 江原裕美編『国際移動と教育 東アジアと欧米諸国の国際移民をめぐる現状と課題』明石書店
 江原裕美編『開発と教育 国際協力と子供たちの未来』新評論
 江原裕美編『内発的発展と教育 人間主体の社会変革とNGOの地平』新評論
 黒田一雄・横関祐見子編『国際教育開発論』有斐閣
 永田佳之編『国際教育協力を志す人のために』学文社
 佐藤学・澤野由紀子・北村友人編『揺れる世界の学力マップ』明石書店
 齋藤ひろみ編著『外国人児童生徒のための支援ガイドブック』凡人社
 佐久間孝正『外国人の子どもの教育問題』勁草書房
 多文化共生キーワード事典編集委員会『多文化共生キーワード事典』明石書店
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 テキスト・参考文献をよみこむこと
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 オリエンテーションおよび国際協力の仕組みと動向1(講義)
  開発、国際協力、国際教育開発の歴史と概念を学ぶ。
  履修者は指定された課題を必ず読んでくること。詳しいことは第一日目に指示するので初日の欠席者は受講できない。
【第2回】
 国際協力の仕組みと動向2(講義と輪読)
  世界銀行、地域開発銀行、ユネスコ、ユニセフなど国連機関の役割を学ぶ。
  日本の国際協力、JICA、国際協力銀行、NGOなどについて学ぶ。
【第3回】
 世界の教育課題:発展途上国1(輪読)
  教育開発の概念について学び、EFAについて知り、教育普及の状況を資料から把握して、発展途上国の教育について考える。
【第4回】
 世界の教育課題:(輪読)発展途上国2 先進工業国1
  教育改革の概要、学力問題 
  PISAなど国際学力調査が示唆するものについて考える。
【第5回】
 世界の教育課題:先進工業国2(輪読)
  ・A類学生には、教員から基礎的な指導を行いつつ、統計資料等から分析させ考えさせる。
  ・B類学生には、共同で統計等の分析をさせつつ、教室での授業への応用を考え討議させる。
  ・A類学生、B類混合のグループを作ってブレーンストーミングをする。
【第6回】
 日本と世界 (発表)
  これまでの学習に関係する開発教育・比較教育のテーマについて調べたことを発表する。 
【第7回】
 日本と世界 (発表) 
  これまでの学習に関係する開発教育・国際理解教育のテーマについて
   調べたことを発表する。発表について討議を行い、エッセンスを抽出する。
  最後の授業時に自分のテーマでのレポートを提出。
【第8回】
 日本国内の教育の概観(講義)
  日本国内の外国につながる子どもの教育・支援について、外国人集住地域および散在地域における現状と課題、そのとりくみを概観し、学校における具体的なJSLカリキュラム(教科志向型・トピック型)についてしる。
【第9回】
 日本国内におけるケーススタディ1(グループワーク)
  中国にルーツをもつ子どものライフコースの事例をとりあげ、中国帰国者の背景と課題についてまなび、外国につながる子どもの母語・母文化保持と適応教育の実際について考察する。
【第10回】
 日本国内におけるケーススタディ2(グループワーク)
  ブラジルにルーツをもつ子どものライフコースの事例をとりあげ、日系移民の歴史と課題についてまなび、外国につながる子どもの不就学の問題について考察する。
【第11回】
 日本国内におけるケーススタディ3(グループワーク)
  ベトナムにルーツをもつ子どものライフコースの事例をとりあげ、難民の背景、難民条約のもつ意義をしり、外国につながる子どもの国籍・在留資格について、まなぶ。
【第12回】
 日本国内におけるケーススタディ4(グループワーク)
  エジプトにルーツをもつ子どものライフコースの事例をとりあげ、外国につながる子どもの子どもや保護者の宗教に対する理解と課題をまなぶ。外国につながる子どもにとっての日本の学校文化をあらためてとらえなおす。
【第13回】
 日本国内におけるケーススタディ5(グループワーク)
  フィリピンにルーツをもつ子どものライフコースの事例をとりあげ、国際結婚の課題についてまなぶ。また、外国につながる子どものアイデンティティの問題について考察する。
【第14回】
 地域とのネットワークづくりのあり方(講義とグループワーク)
  ・愛知県豊田市保見団地の地域の教育支援ネットワークづくりにおける学校の位置づけについてまなぶ。
  ・A類学生は、地域ボランティアと学校をどうむすびつけるか考察して発表する。
  ・B類学生は、学校と他機関連携および行政との連携のあり方について考察して発表する。
【第15回】
 まとめ(グループワーク)
  第8回~第14回の授業をふりかえり、外国につながる子どもたちの教育のあり方についてまとめ、
  <A類学生>は聴講していない仲間にむけて、
  <B類学生>は職場の同僚にむけて、講義をするためのプレゼンスライドを作成する。