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授業の内容(Course Description) |
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古代アテネの民主政では、専門家を排して、徹底した素人民主主義の原理が貫かれた。一般市民が集まる民会が最高決定権を握り、裁判でも陪審員となった市民が最終判決を下した。時にそれは衆愚政と呼ばれるような失敗を犯しながら、150年以上にわたって健全に機能してきたことが今日の研究で明らかになっている。 この授業ではまず、ペルシア戦争勝利の立役者であるテミストクレスの生涯をたどりながら、天才的政治家と成長しつつあるアテネ民主政の葛藤を見ていく。次に民主政を鋭く批判するプラトンの著作を読み、そもそも政治とは何かについて考える。それから最新の研究書によってその実態を明らかにし、素人民主主義の意義を考察する。 議会制民主主義をとる現代の日本においても、裁判員制度や検察審査会において、素人である国民が積極的な役割を果たすことが期待されている。アテネ民主政の実態を解明することは、主権者としての我々の意志決定にも貴重な示唆を与えてくれるであろう。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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テキストと研究文献の基本的な内容を理解し、発表課題をまとめ、発表と討論ができること
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3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
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出席30%、討論への参加40%、授業内レポートの提出30%
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4. |
テキスト・参考文献(Textbooks) |
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仲手川良雄『テミストクレス』中公叢書(図書館2階の指定図書を利用) 橋場弦『丘のうえの民主政』東大出版会(図書館2階の指定図書を利用) プラトン『ゴルギアス』岩波文庫
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5. |
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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毎回、テキストの指定された範囲をあらかじめ読み、発表用のメモを用意してくること。 欠席した場合は、その回の課題を所定の答案用紙に書いて、次の授業で提出すること。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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黙って座っているだけの者には単位を出さない。 声を出すことが嫌いな者は受講しないこと。 夏休みに読書の宿題を出す。
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7. |
授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 オリエンテーション 古代ギリシア史概説・テキストの説明 【第2回】 仲手川『テミストクレス』第1章 テミストクレスの生い立ち 【第3回】 仲手川『テミストクレス』第2章 テミストクレスの海軍戦略 【第4回】 仲手川『テミストクレス』第3章 デルフォイの神託 【第5回】 仲手川『テミストクレス』第4章 サラミスの海戦 【第6回】 仲手川『テミストクレス』第5章 亡命と最期 【第7回】 仲手川『テミストクレス』終章 テミストクレスと民主政アテネ 中間レポートの作成 【第8回】 プラトン『ゴルギアス』:ソクラテス対ゴルギアス 【第9回】 プラトン『ゴルギアス』:ソクラテス対ポロス 【第10回】 プラトン『ゴルギアス』:ソクラテス対カリクレス(1) 【第11回】 プラトン『ゴルギアス』:ソクラテス対カリクレス(2) 【第12回】 プラトン『ゴルギアス』:ソクラテスにとって政治とは何か 【第13回】 橋場弦『丘のうえの民主政』第3章 参加と責任のシステム 【第14回】 橋場弦『丘のうえの民主政』第5章 民主政の再生 【第15回】 アテネ民主政をめぐる総括討論と最終レポートの作成
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