Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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歴史・文化財学方法論 I 今村 啓爾
必修  2単位
【日本史・文化財学専攻】 12-1-1340-3206-12

1. 授業の内容(Course Description)
 歴史・文化財学方法論Ⅰ(副題:文化財行政研究)
 日本史学と考古学、加えて民俗学は近年相互の交流と協力関係が密になり、総合歴史学といった傾向を強めている。そのため歴史学の基本資料である古文書に加え、金石文・史跡・考古資料・重要文化財を含む文化財の保護と保管に細心の注意をはらい、その活用に努める必要が高まっている。このための知識と技術の体系が「文化財学」であり、文化財や社会教育関係の行政職員・博物館職員はいうまでもなく、歴史学・考古学の研究者全体が身につけることを要求される学識の体系である。これは、(1)文化財保護のための制度的側面、(2)古文書や文化財の価値の認定と整理分類の方法にかかわる側面、(3)調査と保存管理の実際にかかわる側面、(4)資料の研究者に対する公開と一般市民向けの教育活動、(5)資料保存のための科学技術的側面(保存科学)、(6)保護された文化財を現代社会に活用する方法などからなり、それを推進するにあたっては的確かつ総合的な歴史の理解が要求される。
 歴史・文化財学方法論Ⅰでは、文献史学・考古学・民俗学の協力関係という視点を基本にしながら、以上のうちの(1)~(3)を中心に講義を行うが、開発工事などで破壊されることが多く、年に数千の事前調査が行われる考古学関係遺跡の調査方法は関連する知識と技術が膨大であり、Ⅰではこの分野が占める比重が大きい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 歴史学の理解の上に、基本資料である文化財の種類と重要性を認識し、その保護・管理・活用を行うための実践的知識と技術を獲得し、歴史の研究教育・博物館・社会教育関係の職場において働ける能力を養う。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 レポート。自分で選んだいくつかの史跡を探訪し、その文化財としての価値、史跡として認定されるまでの過程、保護公開利用などについての現状と問題点について報告してもらう。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 奈良文化財研究所『文化財と歴史学』2003年
 文化庁文化財部記念物課『発掘調査のてびき』2010年
 雑誌『月刊文化財』
 文化庁文化財部記念物課『史跡名勝天然記念物重要文化的景観登録記念物指定等目録』2010年
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 歴史の現場である史跡や博物館等に所蔵されている文化財に積極的に触れるよう心がけ、机上の勉強に終わらないようにすること。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 とくに文献史学を専攻する学生には、歴史の現場である史跡を実見するする癖をつけ、博物館等に所蔵されている関連文化財に積極的に触れ、多角的な勉強をこころがけてほしい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 歴史研究と文化財の関係
【第2回】
 文化財保護のための制度的側面(1) 文化財保護思想の歴史と文化財の種類・整理・指定・保護
【第3回】
 文化財保護のための制度的側面(2) 国の文化財保護法と 都道府県の文化財保護条例
【第4回】
 文化財保護のための制度的側面(3) 文化財の調査と価値の認定、文化財をめぐる諸問題
【第5回】
 埋蔵文化財の調査と報告(1) 遺跡の破壊と保存運動の歴史。記録保存と費用の原因者負担という原則
【第6回】
 埋蔵文化財の調査と報告(2) 埋蔵文化財調査の準備・実施・報告の流れ、発掘調査の実際
【第7回】
 埋蔵文化財の調査と報告(3) 出土遺物の整理分析作業の実際とデータの収集保存
【第8回】
 埋蔵文化財の調査と報告(4) 研究と報告書の刊行にかかわる作業と手続き
【第9回】
 埋蔵文化財の調査と報告(5) 遺物の保管と公開、各種資料の保存にかかわる特徴と研究利用に係る諸問題
【第10回】
 埋蔵文化財の調査と報告(6) 我国における埋蔵文化財調査と考古学・文献史学の発展
【第11回】
 文化財の整理公開と市民向けの教育活動(1) 代表的な史跡と保護活用の現状
【第12回】
 文化財の整理公開と市民向けの教育活動(2) 代表的な重要文化財・国宝の保管と活用の現状
【第13回】
 文化財の整理公開と市民向けの教育活動(3) 代表的な無形文化財と無形文化財の特質
【第14回】
 資料保存のための科学的技術(保存科学)(1) 保存科学の種類と実際
【第15回】
 資料保存のための科学的技術(保存科学)(2) 文化財の保存条件と遺構遺物の復元に係る問題