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授業の内容(Course Description) |
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これまで太平洋戦争の開戦経緯や終戦経緯の研究は盛んに行われてきたが、戦争期間中の経緯については意外なほど研究のメスが入らなかった。純粋に軍事問題であり、政治力学が入る余地がないと決めつけられたことが主な要因らしい。この期間中も歴史の一部であり、したがって歴史学としての検証を加え、空白の部分を残してはならないと考える。 総力戦と呼ぶ場合、人的物的資源を総動員する意味に取られることが多いが、国家が歴史の過程で蓄積した諸能力や欠陥・矛盾もすべて戦争に投入するという広い意味に解釈すべきである。そのため戦争中に、国家の欠点や矛盾が暴露され、敗戦に影響したと思われる点が幾つもあった。それらは日本社会の本質にも係わるものであり、日本及び日本人について考える上で看過できない。本演習では、こうした問題を提起し、議論をして理解を深める。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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戦争という国力の爆発的燃焼には、国家が抱える諸問題も顕在化し、戦争の展開に深刻な影響を与える。戦争を戦いの期間という固定的な認識だけでなく、例えば国家の諸矛盾や体質の一斉放出といった見方もできるという柔軟な視線も必要であることを理解してもらう。
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3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
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演習中の議論を評価の一項目とする。 演習の一週間後に、議論内容に関する意見をレポートとして提出してもらい、これを主にして総合評価する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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演習ごとにレジメを配布する。
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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毎回レジメを配布するので、それをノートに書き写し、ノートに自説や刺激された他者の説を書き込んでほしい。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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昭和20年代に出版された戦記物は、検閲が解除され、言いたいことが何でも言えた状況になったがために、極めて資料的価値が高いが、今日では入手が困難である。各地の古書店を訪ねて、こうした戦記物を探し出し、資料として報告してほしい。
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7. |
授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 調査研究事項の選択 【第2回】 太平洋戦争か大東亜戦争か 【第3回】 総力戦て何だろう 【第4回】 大本営の実態について 【第5回】 島嶼戦のメカニズム 【第6回】 現代戦(統合戦)には通用しない統帥権体制 【第7回】 日本軍(人)はなぜ同じ戦法を繰り返すのか 【第8回】 教訓(戦訓)に学ばない日本人 【第9回】 経験(体験)を記録しない、記録を残さない日本的体質 【第10回】 慣習法・成文法と戦争の仕方の相違 【第11回】 太平洋戦争に対する反省は正しかったか 【第12回】 戦後、太平洋戦争関係資料はどこにいったか 【第13回】 戦後、誰が太平洋戦争史を書いてきたか 【第14回】 海軍善玉、陸軍悪玉という戦後の評価は正しいか 【第15回】 まとめ 日本人にとっての太平洋戦争
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