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授業の内容(Course Description) |
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軍人を賛美し、軍隊を称揚する風潮がどのように形成されていったかを検討する。上意下達の命令により軍人や軍隊を賛美した例がないではないが、やはり草の根運動的な国民、社会の間から澎湃と盛り上がる風潮でなければ長続きしないし、一種の文化として社会に定着しない。 そのためには国民に、社会全体に軍人・軍隊に関する様々なエピソードや逸話が注入され、軍人・軍隊を尊敬する気風、称賛する意識がはぐくまれなければ、実現はむずかしい。戦前においては、主に活字、文学的活動を通して国民や社会に働きかける書き手や団体が存在した。本講義では、こうした書き手や団体を取り上げ、その活動を辿りながら、当時の風潮が盛り上がるメカニズムを検証する。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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尋常小学校卒業程度が日本人一般の教育水準であったが、こうした国民への軍事思想の注入には、どのような題材を利用するか、また内容、表現をどうするか、こうした点まで考慮して作品が創作された。 こうした考慮は戦後にはないもので、戦前・戦後の相違を明らかにする上で格好のヒントになる。このような相違に関心を持ってくれれば、大きな収穫である。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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出席を重視し、5回程度の小テストを行う。 最後にレポート提出を科し、総合的に成績を判定する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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『桜井忠温全集』、『小笠原長生全集』、『東郷元帥詳伝』、『日露戦役誠忠録』
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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戦前の戦記物に目を通し、そこに読みとれる目的、読者に対するメッセージを看取してほしい。 単に興味深く読んでもらいたいだけでなく、ある意図が強く込められていたことを明らかにしてほしい。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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つねに戦後と比較しながら考えること。 戦前と戦後の落差、相違を直視し、戦争によって何が変わったかを感じ取ること。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 伝統文化と時代・社会の風潮 【第2回】 軍神はどのように作られたか、その目的とは何か 【第3回】 戦史の編纂方針と内容 【第4回】 誠忠録の編纂 【第5回】 誠忠録による軍人の顕彰と理想化 【第6回】 顕彰碑の建立 【第7回】 小笠原長生の活動 【第8回】 桜井忠温の活動 【第9回】 乃木希典の顕彰 【第10回】 東郷平八郎の顕彰 【第11回】 乃木神社と東郷神社 【第12回】 在郷軍人会の活動 【第13回】 愛国婦人会の活動 【第14回】 軍人伝の編纂 【第15回】 軍国主義と近代日本の模範人物
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