Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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共生社会論 I 三重野 卓
選択  2単位
【社会】 12-1-1350-3251-01

1. 授業の内容(Course Description)
 本講義では、第一に、「異質性、多様性を踏まえて共に在る」、「自省しながら対話する」、「協働、葛藤を繰り返す」という共生、および、共生システム、ネットワークとしての共生社会の概念を明らかにすることから始める。それを踏まえて、第二に、共生のさまざまな側面、すなわち、男女の共生、高齢者と他の世代との共生、外国人との共生、市民共生など、共生の諸相について検討する。その場合、ジェンダー(社会的性差)、エスニシティ(民族性)概念について、詳しく、議論する。さらに、自然界と人間界の共生、人間世界でのマクロレベル、ミクロレベルでの共生、中間項としての地域における共生などについても検討を加える。第三に、現在、共生社会が主張される一方で、格差社会も注目を集めている。また、共生社会が実際の市場社会、競争社会を損なうのではないか、という危惧もあるが、こうした点を踏まえて、将来の方向性を模索することにしたい。
 その一方で、第四として、共生を考える場合の基礎概念として、想像力、連帯、異質性などが重要になる。また、社会、および個人の表層、深層の視点も不可欠であり、如何に深層での共生が可能か、ということが課題になる。第五として、さらに、具体例として、高齢者に焦点を合わせ、「生命の質」の考え方を明らかにし、かつ、「生命の質」を踏まえた共生のあり方を定式化する。そして、第六に、福祉社会と共生社会の関連に焦点を合わせ、協働システムとしての共生社会のあり方について考察することにしたい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ①現在、共生社会という用語がキーワード、キャッチフレーズの中で使用されている場合が多い。各自、共生の意味を考え、体系的に理解することが課題になる。
 ②共生には、さまざまな側面がある(男女の共生、障害者との共生など)。各自、具体的なテーマを設定し、思考を深めることが課題になる。
 ③若干、抽象的であるが、想像力、表層、深層など、共生社会を考えるためのキーワードについて理解し、共生社会、福祉社会のあり方について理解を深めること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 成績評価は、出席点、テストによる。ノート、配布資料の持ち込みを可とする。評価においては、①授業の内容を如何に理解しているか、②そして、各自、共生について如何に理解を深めているか、といった点が問われることになる。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストは使用せず、プリントを配布する。参考書としては、三重野卓『「生活の質」と共生(増補改訂版)』白桃書房、2004。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 本講義ではテキストを使用しないが、最初の授業で、詳細な授業項目を示す。各自、それを踏まえて、共生についての情報に関心を持ち、授業内容をより深く理解して欲しい。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 共生、および共生社会は、官庁、地方自治体などでしばしば使用される用語である。新聞、雑誌、テレビ、インターネットなどを活用して、共生の観点から、現代社会に関心をもって欲しい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 (イントロダクション) まず、本講義の見取り図を描き、共生、および共生社会に関する検討課題を示す。
【第2回】
 (社会変動) 共生社会論が登場した背景を経済社会の成熟化、グローバル化、高度産業化、価値の変動などとの関係で明らかにする。
【第3回】
 (共生の考え方) 「異質性、多様性を踏まえて共に在る」、「自省しながら共に在る」、「協働する」という視点から、共生の考え方を明らかにする。
【第4回】
 (共生の諸相) さまざまな共生現象を明らかにし、とりわけ、ジエンダー、エスニシティの観点を提示する。
【第5回】
 (自然界における共生) 一方、自然界に目を向け、片利共生、相利共生、相乗共生の例を示し、さらに、利益の観点が社会科学的な共生論で利用可能か、という点について検討する。
【第6回】
 (自然界、人間界の共生) さらに、こうした自然界と人間界の共生、および、人間界におけるミクロ、マクロレベルの共生について解明する。
【第7回】
 (格差社会) 近年、格差社会、および共生社会が注目を集めている。共生社会と市場社会が、トレード・オフの関係ではなく、補完関係にあることが望ましい。
【第8回】
 (共生をめぐる諸概念Ⅰ) 共生を考える場合、基礎概念として想像力、連帯、異質性を挙げることができる。ここでは、それらの有効性を検証する。
【第9回】
 (共生をめぐる諸概念Ⅱ) 共生論では、社会、および人間の表層、深層について検討する必要がある。深層の理論的基礎を心理学、社会学の視点から定式化する。
【第10回】
 (高齢者との共生Ⅰ) 共生では、他者の欲求は抑えてはならないが、自ら抑えることは可能である。高齢者の「生活の質」、他の世代の「生活の質」の確保を踏まえた共生について定式化する。
【第11回】
 (高齢者との共生Ⅱ) 実際の高齢者と他の世代の共生について、その現状を素描する。
【第12回】
 (福祉社会) ところで、共生社会について考える場合、福祉社会の視点が必要になる。ここでは、国家、公共当局を相対化する福祉社会の考え方について検討する。
【第13回】
 (共生社会と福祉社会) 共生社会と福祉社会は如何なる関係にあるか、ここでは、共生社会の基礎の上に福祉社会が成り立っているという視点を提示する。
【第14回】
 (協働システムへ向けて) 上記の議論を踏まえて、協働システムとしての福祉社会の方向性について明確にする。
【第15回】
 (総括) 本講義で指摘した共生、および共生社会の考え方、共生の諸相、共生のための基礎概念、共生社会と福祉社会との関係についてまとめ、総括する。