Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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社会システム論 II 三重野 卓
選択  2単位
【社会】 12-1-1350-3251-04

1. 授業の内容(Course Description)
 本講義は、「社会システム論Ⅰ」の続編である。ここでは、まず、数量的情報として、1970年代に注目された社会指標(社会統計の体系化、「福祉」、「生活」の視点からの評価)、および、1990年代から注目されている政策のアウトカム(成果)を測定する政策評価の指標体系について、詳細に検討を加える。ここで、政策とは、目標、手段、評価基準から成り立っているものである。政策システムが、事前性(ブループリント)の性格をもつと計画となる。計画化の原理としては、最適化原理(一定の制約のもとでの目標関数の最大化)、規範原理(特定の価値理念との関係で評価)などを挙げることができる。
 その一方で、戦後西欧世界で、福祉国家の考え方が一般化したが、それは、博愛、平等、公正、公平などを理念とし、社会保障政策、雇用政策、経済政策が三位一体をなし、社会権、生存権(日本では、憲法25条の健康で文化的な最低限の生活の保障)を基礎とするものである。こうした福祉国家、さらに、福祉社会の歴史を認識しつつ、産業化の進展と福祉国家の関係、ケインズ主義的福祉国家、社会民主主義体制などについて、検討を加える。さらに、福祉国家レジーム論の考え方をシステム論との関係で明らかにする。そこでは、エスピン・アンデルセンの『福祉資本主義の三つの世界』を手がかりに解説を行うことにしたい。また、福祉国家の時系列比較のために、OECDの社会支出(高齢、遺族、障害、保健など)のデータを紹介し、その動向を明らかにすることにしたい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ①政策評価の考え方を理解し、国、地方自治体が実際にどのように取り組んでいるか、各自、関心を持つようになること。
 ②福祉国家の現状と問題点を理解し、さらに、福祉社会のあり方を明らかにすること。
 ③国際比較データに慣れること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 成績評価は、出席点とテストによる。テストでは、配布資料、ノートを持ち込み可とする。実際の成績評価は、①授業を如何に理解しているか、②如何に問題意識を深めているか、という点から判断する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストは、使用しない。参考文献は、授業中に随時、紹介するが、例えば、エスピン・アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』ミネルヴァ書房、2001、上山信一『「行政評価」の時代』NTT出版、1998、など。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 最初の授業時に見取り図を描く。それにより、問題意識を深めて欲しい。また、プリントを多く配布する。各自、それをもとに、授業の内容を復習して欲しい。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 公共政策、福祉問題に興味を持って欲しい。また、国や自治体のホームページを開き、政策評価の情報などにアクセスして欲しい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 (イントロダクション) 「社会システム論Ⅰ」の授業内容をまとめ、復習し、さらに、本講義の構想を提示し、文献を紹介する。
【第2回】
 (数量情報と社会指標) 社会指標の機能として、当該社会の状態を「認識」し、福祉の観点から「評価」し、「社会制御」のための用具として有用性を発揮するという視点を示す。
【第3回】
 (政策評価の考え方) 政策評価の論理について解説する。さらに、アメリカ合衆国やイギリスの動向や、わが国における官庁、地方自治体の動向を明確にする。
【第4回】
 (政策システムと評価) 政策、施策、事業からなる政策システム、およびその評価を、評価主体(公共当局、第三者機関など)との関連で検討する。
【第5回】
 (計画化の原理) その原理として、①最適化原理、②規範原理、③マクシミン原理、④ミニマックス原理などについて解説する。
【第6回】
 (社会計画) 社会計画の考え方を政策の事前性、ブループリントの作成として位置づけ、社会状態の手動制御としての社会計画の論理を明らかにする。
【第7回】
 (福祉国家の考え方) 平等、公平などを価値理念とし、社会保障政策を中核に雇用、経済政策と三位一体となる福祉国家の歴史、その実際を明らかにする。
【第8回】
 (福祉国家と福祉社会) 福祉国家、および公共当局を相対化する福祉社会、福祉ミックス、福祉多元主義の考え方を示す。
【第9回】
 (福祉国家Ⅰ) 福祉国家の発展は、産業化の進展(ひとりあたりGDPの増大)、高齢化(65歳以上人口比率)、社会保障の制度の経過年数から説明されるという理論(=福祉国家の収斂理論)について検討する。
【第10回】
 (福祉国家Ⅱ) ケインズ主義的経済政策、および社会民主主義的政権が福祉国家を推進したということに言及する。福祉国家は、男性の稼ぎ手中心であるというジェンダー論者からの批判も紹介する。
【第11回】
 (福祉国家レジーム論Ⅰ) 福祉国家レジーム論は、各主体の相互連関というシステム論の立場から解釈できるという視点を明確にする。
【第12回】
 (福祉国家レジーム論Ⅱ) エスピン・アンデルセンの福祉国家レジームにおける脱商品化(労働力が商品価値を失ったとき、生活が保障されるか)、階層化(階層差を温存しているか)の視点を明確にする。
【第13回】
 (福祉国家レジーム論Ⅲ) レジーム論として、社会民主主義型福祉国家、大陸型(保守主義型)福祉国家、自由主義型福祉国家について検討を加える。
【第14回】
 (OECDの社会支出) 国際比較のための社会支出データ(OECD諸国、時系列)を紹介し、かつ、解釈を加える。
【第15回】
 (まとめ) 以上、数量データと政策情報、社会計画論の基礎、福祉国家レジーム論を総括し、今後の方向性を展望する。