Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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社会学 II 三重野 卓
2群  2単位
【二群】 12-1-1350-3251-06

1. 授業の内容(Course Description)
 「社会学Ⅰ」では、社会をマクロレベルでみる方法を示してきた。ここでは、第一に、個に立ち返り、個と社会の関係をどうみるか、という視点が重要になる。第二に、人々は、社会的役割を担い、集団を構成し、そして、合理的に設定された組織に帰属するという点を明らかにする。第三として、現在、社会学の先端領域で、社会的ジレンマについての議論が盛んである。個人が合理的な行動を行った結果、社会が望ましくない状態に陥るというものである。こうした社会的ジレンマの考え方を紹介することにしたい。第四として、社会学を含んだ社会科学の分野で、社会関係資本という用語が注目を集めているが、それは、関係性それ自体、そして、社会に埋め込まれたものが資本として作用するというものである。こうした考え方をその測定なども踏まえて、明らかにすることにしたい(以上、「人と社会の関係」)。
 一方、社会問題が多発している現状を考慮に入れて、第五に、そもそも社会問題を如何に捉えるか、ということを明確にする。さらに、第六として、日本社会における社会問題の諸相について言及する。第七に、人々が「共に生きる」という共生社会が、こうした社会問題の解決に寄与するという点を明らかにする(以上、「社会問題の理解」のパーツ)。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ①社会をみる眼として、人と社会の関係について理解すること。
 ②人々の関係性、すなわち、ネットワーク、信頼、互酬性の規範の在り方が、社会にどのような影響を与えるか、という点について考えること。
 ③「組織の中の人間」というテーマについて考えること。
 ④社会問題が激化する現代社会において、社会の捉え方を身につけ、どのような社会問題があるか、解決法は何か、という点について考えること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 成績評価は、「社会学Ⅰ」と同様に、出席点、および、試験による。テキスト、およびノート、配布資料は、持ち込み可とする。試験では、①授業の内容を理解しているか、②それを踏まえて、自ら如何に考え、社会の中の一員としてのスタンスを確立しているか、共生社会の一員としてのあり方を考えているか、という点を重視して評価する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストは、「社会学Ⅰ」と同様に、社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座:社会理論と社会システム、社会学(第2版)』中央法規、2010。また、授業中、関連する図書を紹介する。さらに、プリントを配布する。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 授業では、テキストを使用し、さらに、範囲外のことについても、具体的な社会問題に言及しつつ、講義していく予定である。従って、テキストを事前に読み、理解し、また、授業後、授業で講義されたことをもとに、テキストの内容を補完し、現代の社会問題について、理解を深めることが望まれる。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 本講義では、社会学的なものの見方、そして、現代的な社会問題について、論じることにする。従って、新聞、雑誌、テレビ、インターネットなどを通じて、常に現代社会に関心をもって欲しい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 (イントロダクション) そもそも個人と社会の関係はどうか、社会は個人の単なる集計以上のものか(いわゆる、創発的性格の問題)、ということについて考える。
【第2回】
 (社会的行為) 社会的行為について、その考え方を示し、さらに、ミクローマクロリンケージという問題との関連で明らかにする。
【第3回】
 (社会的役割) 人々の社会的役割とは何か、自己と他者(自己の形成)との関係、社会的役割と社会的地位の関係は何か、という点について明らかにする。
【第4回】
 (社会集団) 集団とは何か、集団類型とは何か(例えば、ゲマインシャフトとゲゼルシャフト)、という点について、検討を加える。
【第5回】
 (組織) 近代組織の成立について、20世紀を概観し、とりわけ、官僚制について議論し、さらに、組織の多様性という現代的課題について検討する。
【第6回】
 (社会的ジレンマ) 社会的ジレンマの代表例として、いわゆる囚人のジレンマ、共有地の悲劇の考え方を示し、さらに、ジレンマ解消の方法(取り締まり機関の創設、規範意識の醸成など)を模索する。
【第7回】
 (社会関係資本) 社会連帯の考え方を歴史的に辿り、さらにそれとの関連で、社会関係資本について明らかにする。社会関係資本がマイナスに作用する社会的排除についても検討する。
【第8回】
 (社会問題と社会的逸脱) 社会問題とは何か、という問いについて検討し、とりわけ、犯罪を社会的な産物として捉え、社会病理現象を解明する。
【第9回】
 (社会問題の諸理論) 社会問題を理論的に解明するために、社会統制が犯罪を創出するというラベリング理論、レッテル操作により社会問題が構築されるという構築主義の考え方を提示する。
【第10回】
 (社会問題と社会学) 社会問題と社会学の関わりについて、歴史的に遡りながら検討を加え、かつ、その研究の現状を示す。
【第11回】
 (社会問題 各論Ⅰ) 非行の現在を描写し、その原因について多角的に検討を加える。
【第12回】
 (社会問題 各論Ⅱ) いじめとひきこもりの現状を描写し、その要因について多角的に検討を行う。
【第13回】
 (社会問題 各論Ⅲ) DVと児童虐待について、その現状を示し、発生要因について多角的に検討を加える。
【第14回】
 (共生社会と権利) 人権意識、差別、人権、生存権、社会権の観点から、共生社会のあり方、その方向性を示す。
【第15回】
 (まとめ) 以上、人と社会の関係、社会問題の現状について、総括する。