Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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社会福祉学 II 三重野 卓
選択  2単位
【社会】 12-1-1350-3251-12

1. 授業の内容(Course Description)
 本講義は、「社会福祉学Ⅰ」の続編として位置づけられるものである。「社会福祉学Ⅰ」では、社会福祉のみならず、社会保障制度における所得保障、医療保障も位置づけている。ここでは、第一に、「社会福祉学Ⅰ」の各論部分の続きとして、介護保険、年金についてそのメカニズムを明らかにする。一方、社会福祉は、ニーズのあるひと、ハンディキャップを負ったひとへのパーソナル・サービス(対人サービス)である。第二として、社会福祉の対象、すなわち、貧困・低所得者、子ども、障害者について検討を加える。そこでは、「生活の質」、「生命の質」(クオリティ・オブ・ライフ)の視点が不可欠になる。本講義では、高齢者の「生活の質」に焦点を合わせ、検討することにしたい。
 さらに、第三として、福祉サービスが機能する「場」として、コミュニティ(地域性と共同性)に焦点を合わせ、コミュニティ・オーガニゼーション、コミュニティ・ケアなどの考え方を紹介する。そして、第四として、社会福祉の運営体制として、集権、分権化と地方自治体の位置づけ、およびサービス利用の枠組みについて紹介する。
 そして、最後に、第五として、社会福祉における権利問題について、詳細に、検討を加えることにしたい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ①介護保険、年金について、それぞれ、介護サービス、所得保障の視点から理解すること。
 ②社会福祉の多様な領域を理解し、各自、関心のある領域を明確にすること。
 ③社会福祉、医療における「生活の質」ないしは、「生命の質」の重要性を理解すること。
 ④社会福祉の機能する「場」としてのコミュニティ、社会福祉の運営体制、権利擁護について、理解を深めること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 成績評価は、出席点、テストによる。テストでは、テキスト、配布資料、ノートの持ち込みを可とする。評価においては、①授業の内容を如何に理解しているか、②そして、各自、如何に福祉について、それぞれの考えを持つようになっているか、問われることになる。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 参考文献は、椋野美智子、田中耕太郎『はじめての社会保障-福祉を学ぶ人へ(最新版)』有斐閣、2012。平岡公一ほか『社会福祉学』有斐閣、2011。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 本講義では、テキストを使用しないが(上記、椋野、田中は、「社会福祉学Ⅰ」から引き続き使用)、最初の授業において詳細な授業項目を示す。各自、それを踏まえて、福祉に関心を持ち、参考文献等で予習し、授業を踏まえて、その内容をより深く、理解して欲しい。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 福祉は、日常生活でしばしば使用される言葉である。新聞、雑誌、テレビ、インターネットなどを使用して、福祉の観点から現代社会に関心を持って欲しい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 (イントロダクション) 「社会福祉学Ⅰ」の論点をまとめ(福祉政策の原理、社会保障の機能、歴史、財政、医療保険、生活保護)、「社会福祉学Ⅱ」の授業計画を示す。
【第2回】
 (介護保険Ⅰ) 介護保険が制度化される前の介護サービスについて概観し、かつ介護保険の保険者(運営主体)、被保険者、保険料などについて、解説する。
【第3回】
 (介護保険Ⅱ) 介護保険における介護認定、給付の種類(施設サービスなど)、利用者負担、介護提供体制などについて、明らかにする。
【第4回】
 (年金Ⅰ) 所得を保障する仕組みとしての年金について概観し、かつ、被保険者、その保険料について解説する。
【第5回】
 (年金Ⅱ) とりわけ、老齢年金に焦点を合わせ、老齢基礎年金、老齢厚生年金の状況、さらに、給付水準の決め方などについて検討を加える。
【第6回】
 (貧困) 貧困者、低所得者に焦点を合わせ、そもそも貧困の定義はどうか、という点について検討する。さらに「格差から貧困へ」という時代において、不平等の測定、貧困・不平等の現状を明確にする。
【第7回】
 (子ども) 子どもの福祉に焦点を合わせつつ、児童福祉制度を概観し、さらに、保育、ひとり親世帯、児童虐待などについてその実態を明らかにする。
【第8回】
 (障害者) そもそも「障害」とは何か、という点について考察し、さらに、障害による差別の禁止、所得問題、障害者雇用などについて、検討を加える。
【第9回】
 (高齢者) 老い、老化について、生理的側面、精神的側面、社会的側面から明らかにし、さらに、高齢者のための福祉政策について解説する。
【第10回】
 (「生活の質」Ⅰ) 「生活の質」は、本来、社会学、経済学の用語であったが、現在、社会福祉、医療の分野で多用されている。「生活の質」から「生命の質」へ、という動向について検討を加える。
【第11回】
 (「生活の質」Ⅱ) さらに、「生活の質」の測定問題(主観的側面、機能的側面、社会的側面)、生命倫理、緩和医療などとの関係から検討を加える。
【第12回】
 (コミュニティ福祉) コミュニティと福祉の関係について、コミュニティ・ケア、コミュニティ・オーガニゼーションなどの考え方を示し、コミュニティにおけるネットワークの必要性を指摘する。
【第13回】
 (運営主体) 社会福祉の運営主体との関わりで、サービス利用の仕組みを明らかにし、さらに、分権、集権化と地方自治体の役割、サービス供給体制のあり方を明確にする。
【第14回】
 (権利擁護) 社会福祉における権利問題について、とりわけ、オンブズマン制度、アドボカシーの考え方、成年後見制度、サービスの質の視点などについて検討を加える。
【第15回】
 (総括) 以上、社会保障の各論、および社会福祉のさまざまな領域、社会福祉を横断する視点、すなわち、コミュニティ、運営主体、権利問題などについて再考し、まとめとしたい。