Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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心理学基礎文献研究 II 繁桝 算男
必修  2単位
【心理】 12-1-1360-1818-06

1. 授業の内容(Course Description)
 科学とは方法であって、特定の分野を指す言葉ではない。したがって、心理学は科学であるかどうかを問うのはあまり意味がない。心理学では、科学的方法による場合とよらない場合があり、心理学全般が科学であるというのは難しいからである。それでは、科学のための方法とは何か?科学における理論であっても、究極的には理論の構築は主観によるといわざるを得ないが、科学的方法の場合は、この理論は、再現性のあるデータと対決させられる。科学的方法とは、再現性のあるデータを取得し、そのデータによって理論を検証する方法である。そのうちでも、因果関係を明らかにするためには実験的方法が特に優れている。
 心理学でも世に知られた興味深い実験が数多く存在する。そのような実験によって何が明らかになり、何が未解決の問題として残されているかを考察することは、科学としての心理学を論ずる上で、また、心理学の知識を深めるために役に立つ。この授業では、「心は実験できるか」という本を読み、心理学における実験の意味を議論し、新しい心理学の研究を企画する。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 科学としての心理学について理解を深め、心に関する問題について、自ら仮説を作り、その真偽を確かめるための実験や調査を企画する。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 出席の程度、発表、中間レポートと最終レポート、討論への参加などを総合して評価する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 ローレン・スレーター(岩坂彰訳)『心は実験できるか』紀伊国屋書店
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 発表は原則としてパワーポイントを用いて準備する。授業時での発表の後の討論に基づき、発表資料を改善して、中間レポートとする。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 面白い本なので、まずは理解してみる。しかし、深く読むほど疑問も生じるはずである。知識を鵜呑みにせず、批判的に読んで、関連する現代の発展をインターネットなどで調べてみよう。また、心の問題や社会の問題に対しても、紋切り型の意見ではなく、自分なりの意見を持つことを考えてみよう。(もっとも、すべての問題に対して批判的に考えるのはつらすぎる。自分にとって重要な問題だけで良い。)
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 イントロダクション 発表の方法と割り当て、討論あるいはディベートの方法などを決める
【第2回】
 スキナー箱を開けて
 スキナーの学習理論をめぐる発表と討論
【第3回】
 権威への服従
 ミルグラムの服従実験についての発表と討論
【第4回】
 患者のふりして病院へ
 ローゼンハンの診断実験についての発表と討論
【第5回】
 冷淡な傍観者
 ダーリーとラタネの介入実験についての発表と討論
【第6回】
 理由を求める心
 フェスティンガーの不協和理論をめぐる実験についての発表と討論
【第7回】
 中間まとめ
【第8回】
 針金の母親を愛せるか
 ハーローの赤毛猿の実験についての発表と討論
【第9回】
 ネズミの楽園
 アレグザンダーの依存症実験についての発表と討論
【第10回】
 思い出された嘘
 ロフタスの偽記憶実験についての発表と討論
【第11回】
 記憶を保持する脳神経
 カンデルの神経強化実験についての発表と討論
【第12回】
 脳にメスを入れる
 ロボトミーをめぐる発表と討論
【第13回】
 いくつかの論点の整理と討論
【第14回】
 いくつかの論点の整理と討論
【第15回】
 まとめ