Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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英語圏の文学 II 小山 郁夫
選択  2単位
【外国語】 12-1-1410-0225-08

1. 授業の内容(Course Description)
 シェイクスピア(1564~1616年)の悲劇『マクベス』を鑑賞します。
 イギリスが生みだした、人類全体への素晴らしい贈り物には、たとえば、「<ビートルズ>の音楽」「ニュートンやファラデーの物理学や数学」が挙げられます。文学の面で言いますと、それは、「シェイクスピアの劇と詩」ということになります。これらはいまだに、無限の光と熱を放ちつづけています。
 授業の始めに、シェイクスピアがどのような時代に生きていたのか、その時代背景の話しを大まかにしましょう。
 (その一端をお話ししますと、当時、「劇場経営」は1つの全く新しい「ビジネス・モデル」であり、ストラドフォードから上京したシェイクスピアは、それに果敢に飛び込んで行きました。当時は、政治・経済・宗教・科学・哲学など、あらゆる面で革新的な事態が発生し「混沌(カオス)」のきわまった時代でしたが、シェイクスピアはむしろそれを喜びとともに前向きに捉えました。そして、仲間と協力し支え合い、そのどれもが永遠の光を放つ「劇作品」を20年間の間に、劇団員と当時の人々のため、37編ほど書き上げました。)
 次に、悲劇『マクベス』を、重要な場面に焦点を当て、順番にゆっくりと音読していきます。
 劇の内容に関していえば、『マクベス』は、女の生きる「悲しみ」、男の生きる「悲しみ」、正義を貫くことの「悲しみ」、「人間として生きる悲しみ」等を描いた作品です。宮沢賢治の「よだかの星」に似た物語です。ヨーロッパ文学における「悲劇」の意味を実感し、実学的に考えていきましょう。
 日本人は、気質的に、「メランコリー」の人が多いといわれています。物事を深く受け止めるという気質です。同時に、「悲しみ」の感情から人生を深めていく気質でもあります。『マクベス』をゆっくり読みながら、マクベスの悲しみ、マクベス夫人の悲しみ、マクダフの悲しみ、に共感し、読者および観客としてのあなた自身の悲しみを強め、そして自分を強くしていく話しをします。
 同時にこの作品では、「善」と「悪」の問題が色濃く出てきます。「悪から、悪の中からこそ、全く新たに誕生する善」のテーマを、もう1つの中心軸として話しを進めます。なぜ、この世に悪があるのでしょうか?なぜ、悪は魅力に満ちているのでしょうか?なぜ、青年は悪を通過しなければならないのでしょうか?実学的に考えていきます。
 自分を超えて創造することの素晴らしさと、『マクベス』という芸術作品の一つ一つの宝石のような言葉が、どれほど光り輝き、人間を勇気づけ最終的に本当の希望を与えうるのか、皆さんにお伝えしようと考えています。
 どうぞ、肩の力を抜いて、けれども私語は慎み、聴きにきてください。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 1.シェイクスピアから解き放たれる光と熱を感じること。
 2.自分自身の悲しみの感情を深め、清めること。
 3.「私こそ<悪人>マクベスだ」と言えるようになること。
 4.生きる希望を発見すること。
 5.努力した受講者全員が、合格点を取ること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 最後の授業に行う期末小テスト
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 教科書:シェイクスピア『マクベス』(小田島雄志訳、白水Uブックス)
 参考書:1)バフチーン『フランソワラブレーの作品と中世ルネッサンスの民衆文化』(せりか書房)
     2)グレーヴィチ『中世文化のカテゴリー』(岩波書店)
     3)阿部謹也『ヨーロッパを見る視角』(岩波書店)
     4)ブルーノ『英雄的狂気』(東信堂)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 1.『マクベス』を1回は通読すること。
 2.毎回少しずつ読みますので、当日の講義の部分は、授業前に読んでおくこと。
 3.翻訳で通読した後、黒沢明の『蜘蛛の巣城』を、DVDで見てみること。(これは、メリックに所蔵されています。)
 4.参考書の4つの本の中から1つを選び、1つの章だけでもよいので読んでおくように。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 1.授業中の私語を控え、授業に集中してください。(これが最も大切です)
 2.遅刻はしないで、早めに着席すること。(これも同じくらい大切です)
 3.私が話しをしているときは、その前は横切らずほかの所を通ってください。(「赤い糸」が途切れてしまうから)
 4.第1回目の授業が最も大切ですから、第1回目の授業には必ず出席してください。
 5.授業には続けて出ること(テストのときだけ来るのはいけません)。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 イントロダクション
【第2回】
 シェイクスピアの生きた時代
【第3回】
 『マクベス』1幕1場~2場から数か所の、音読と解説
【第4回】
 『マクベス』1幕3場~4場から数か所の、音読と解説
【第5回】
 『マクベス』1幕5場~7場から数か所の、音読と解説
【第6回】
 振り返りの中間テスト
【第7回】
 『マクベス』2幕1場~2場から数か所の、音読と解説
【第8回】
 『マクベス』2幕3場~4場から数か所の、音読と解説
【第9回】
 『マクベス』3幕1場~2場から数か所の、音読と解説
【第10回】
 『マクベス』3幕3場~6場から数か所の、音読と解説
【第11回】
 『マクベス』4幕1場~2場から数か所の、音読と解説
【第12回】
 『マクベス』4幕3場から数か所の、音読と解説
【第13回】
 『マクベス』5幕1場~3場から数か所の、音読と解説
【第14回】
 『マクベス』5幕4場~9場から数か所の、音読と解説
【第15回】
 まとめと期末小テスト