Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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超域政治文化論特講 I 中村 楼蘭
選択  2単位
【超域文化専攻】 12-1-1410-0402-07

1. 授業の内容(Course Description)
 かつてグローバル秩序をもたらした東西冷戦構造が解体して後ヨーロッパでは広域秩序形成・地域統合の動きが活発化しついにEUを現出させた。ヨーロッパには政治的宗教的同一という統合の基盤はあったが、同時に多民族多言語の混在・凄惨な戦争の執拗な反復があった。EUはその東方への拡大過程でやや評価を落としているが、それでもその結成は文化的多様・相克、戦争・歴史問題といった障壁を乗り越えての偉業である。ヨーロッパ統合の経験は、東アジア共同体の形成を論考する場合の貴重な教材である。EUを研究し東アジア共同体に関する知見を広めたい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 到達目標:広域秩序の形成という超域的行為における成功モデルとしてのEUを研究し、東アジア共同体形成に関する知見を広める。
 テ ー マ:ヨーロッパ統合の経験に学ぶ広域秩序形成の処方
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 レポート(20%)、授業中の質疑応答・議論(40%)、定期試験(40%)の結果を総合的に判断して成績をつける。定期試験では、①確かな知識に基づいて意見を述べているか、②積極的に発言しているか、③相手の見解を理解したうえで適切な言葉で対応しているかなどを考慮して採点する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト
 適宜プリントを配布する。
 参考書・参考資料等
 特に指定しない。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 シラバスにそって事前の予習をしておいてもらう。また、授業の後、課題を課す場合もある。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 特になし。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 ガイダンス。21世紀における東アジア共同体形成を目指す動きを概説する。
【第2回】
 なぜ共同体を目指すのかをヨーロッパを例に解説する。
【第3回】
 東アジアで共同体が目指されるのはなぜかを解説する。既存の地域協力機構(ASEAN、APEC)に言及し、レポートの課題を与える。
【第4回】
 ASEANに関するレポート発表をさせる(サマリー配布)。質疑応答。
【第5回】
 APECに関するレポート発表をさせる(サマリー配布)。質疑応答。
【第6回】
 東アジアの既存機構はなぜ地域協力機構にとどまっているのかを考えさせる。議論。
【第7回】
 地域統合の難しさを説明する。ヨーロッパを例にとって、ヨーロッパ統合のために克服すべき問題として存在した文化面での障壁、言語・民族の相違(文化ナショナリズム)に着目する。
【第8回】
 ヨーロッパ統合の障壁となった戦争・歴史問題について説明する。
【第9回】
 ヨーロッパが問題克服のために行ってきた努力・試みを解説する。異文化理解、多様性の容認、和解などに言及する。
【第10回】
 ヨーロッパ、特にドイツ・フランス間で進められた歴史教科書の共通化プロジェクトについて説明する。
【第11回】
 東アジアの共同体形成の難しさを説明する。東アジアの多言語多民族状況について説明する。
【第12回】
 東アジアの戦争・歴史問題について説明する。
【第13回】
 ヨーロッパ以上に難しい東アジアの特殊事情を説明する。政治体制・宗教の相違・相克、覇権争奪を含意する共同体メンバーシップをめぐる争い(なぜ米国、インド、豪州を入れるか)などを扱う。
【第14回】
 これまでの授業内容を踏まえて、東アジア共同体の形成に関する議論を行う。ヨーロッパの経験(異文化理解、多様性の容認、和解、共通教科書など)や既存の地域協力機構ASEAN、APECの方式を参考にしながら考える。
【第15回】
 前回に引き続き、同一テーマで議論を行う。この議論をもって定期試験に替える。