Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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超域文化概論 臼井 隆一郎
必修  2単位
【超域文化専攻】 12-1-1410-2414-09

1. 授業の内容(Course Description)
 超域文化論の根本概念は「域」である。「域」を軽々と「超」える時代には文化の根底に位置していた「域」が忘れ去られることになろう。「域」の成立を主としてヨーロッパの神話資料から見直して、そもそも文化とは何であるのかを論じ、最終的には、21世紀の現在の文化を特徴付けている様々な「危機(リジコ)」の国家民族単位を超えた超域的性格に目を向けたい。
 「文化」や「言語」など、通常、従来の「文化学」が前提としていた諸概念が揺らいでいることを確認するすることになるが、これは避けられない。「文化」や「言語」を柱としていた民族国家の精神空間が超域化していることに、現代社会の根底的矛盾が露呈していると考えられるからである。
 「域」がある種の共同体生活を営む人間に安全を保証する空間であるとすれば、「超域」空間は即、「危険・冒険」領域を意味することになる。しかし、現代の超域文化の中で生起する「危機」は古代のそれとはまったく性質を異にしている。この超域文化特有の「危機」に対していかなる安全保障が講じられるのかを考えたい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 個々の院生が何を特殊に研究しているにせよ、当専攻の考え方を共通理解して貰うことが目的である。押しつける気はなく、個々の研究の置かれた世界への意識を養って欲しいからである。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 院生の数は非常に限られていると予想するので、一方的な講義形式というよりは、個々人のインターフェイスを重視したい。積極的な発言を期待する。成績評価はそうした平常点を重視することになる。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 授業の流れに応じて適宜、紹介したい。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 授業で触れた書物は読むようにして貰いたい。一冊の書物には、限られた時間で口にできる容量を遙かに越えた内実が含まれているものである。通学時間をいかに有効利用するかを考えて欲しい。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 個々の院生の持つ知的関心を尊重する。積極的にみずから発信するよう心掛けて欲しい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
「導入」
【第1回】
 ガイダンス 超域文化論とは?
「域と超域」
【第2回】
 域とは。
【第3回】
 墓と境界線
「人間と言語」
【第4回】
 直立歩行のヒト 顔の自由 ヒトの根本矛盾
【第5回】
 牛とAB
「農耕と牧畜」
【第6回】
 牛と資本主義、牛と牧草地の確保、森林の後退、石炭の発見、ヨーロッパ(エウロペの神話)。
【第7回】
 森林から見る政治謙抑と自然(エコロジー問題の歴史的起源)
 「森林と沼沢」の古代的エコロジー
【第8回】
 大航海時代を支える船舶用材木資源と森林危機
【第9回】
 造船と貴金属、木材枯渇と石炭
 エコロジー問題
【第10回】
 「エコロジーの時代」(ヨアヒム・ラートカウ)
【第11回】
 「褐色革命」(ナチズムのエコロジー)
 超域文化の中の日本と日本語
【第12回】
 「大地のノモス」と「危機社会」(ベック)
【第13回】
 超域文化の中の母語と外国語 母語とは何か。
【第14回】
 21世紀の超域文化
【第15回】
 まとめの討論。