Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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行動規範論 I 宇多 浩
1群  2単位
【一群】 12-1-1501-0738-05

1. 授業の内容(Course Description)
 行動規範論 I では、道徳や倫理に関する哲学者たちのさまざまな思想を紹介し、それを通じて、人間にとっての善き生や幸福のあり方について考えたいと思います。
 講義の前半では、おもにプラトンやアリストテレスの思想に即しながら、人間にとって善き生とはいかなる生なのか、善き生と幸福とはどのように関係しているのか、ということについて考察します。
 講義の後半では、おもに人間の行為について、行為の道徳性はどこに根拠をもつのか、行為の道徳性はいかなる基準によって判定されるのか、といった問題について考察していきたいと思います。(授業の内容と順序は、若干変更することがあります。)
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ・道徳理論に関する基本的な知識を習得する。
 ・行為の道徳性の根拠について、とりわけ功利主義とカントの倫理学の違いについて理解する。
 ・善き生や幸福な生、行為の道徳性の根拠について、自分自身の見解を論理的に表現することができる。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 ・平常点(約20%)と、計2回行う定期試験(各40%)によって総合的に評価する。(定期試験は資料等の持ち込み不可)
 ・平常点は、数回に1回課す授業内容についての感想文によって評価する。
 ・評価は厳正に行うため、普段から授業に出席して授業内容を理解していることが前提となる。出席していても、授業内容を理解していなければ、単位の取得は困難であるので留意されたい。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 教 科 書:なし
 参考文献:レイチェルズ 『現実をみつめる道徳哲学』(晃洋書房)
      永井均 『倫理とは何か―猫のアインジヒトの挑戦』(産業図書)
      加藤尚武 『現代倫理学入門』(講談社学術文庫)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 ・参考文献の中にある、授業の内容に該当する章を読んでから授業に臨むこと。
 ・授業の中で理解できなかった箇所は、参考資料を自分で調べて、理解・確認しておくこと。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 私たちは物事の善悪や、正不正、幸福といった言葉を普段何気なく使用していますが、それらの意味について、自覚的に考えることはあまりありません。しかしこれらの言葉も、その歴史をたどれば実に多くの含蓄をもっており、多くの哲学者や思想家によって探求されてきました。
 講義では、私たちがごく日常使用している倫理的な概念を、その背景にある思想や理論にまで遡って考察していきます。このような内容に関心のある方の受講を要望します。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 授業の概要
【第2回】
 徳の倫理(1) プラトンの対話篇『ゴルギアス』に即しながら、「正しく生きること」と幸福の関係について考察する。
【第3回】
 徳の倫理(2) プラトンの対話篇『国家』に即しながら、「正しく生きること」と幸福との関係についてさらに考察する。
【第4回】
 徳の倫理(3) アリストテレスの『ニコマコス倫理学』に即しながら、徳(優れた性格)と幸福との関係について考える。
【第5回】
 利己主義と利他主義 ― 道徳的な利己主義と利他主義との関係について考察する。
【第6回】
 社会契約説(1) ホッブズの社会契約説を紹介し、その背景にある近代的人間観について考察する。
【第7回】
 社会契約説(2) 「囚人のジレンマ」の事例に則しながら、社会契約説の背景にある道徳的意味について考察する。
【第8回】
 道徳的相対主義とその問題 ― 道徳的な判断の基準はそれぞれの時代や文化に相対的なものであるのか、ということについて考察する。
【第9回】
 中間試験
【第10回】
 功利主義(1) 行為の道徳性は、ある行為が人々にどれだけの幸福をもたらすかによって決まるのか?
【第11回】
 功利主義(2) 行為功利主義と規則功利主義の違いについて説明する。
【第12回】
 カントの倫理学(1) 行為の道徳性は、内面の意志や動機のあり方によって決まるのか?
【第13回】
 カントの倫理学(2) 人格の尊厳とは何か? なぜ人格を手段として扱うことは許されないのか?
【第14回】
 道徳における「運」の問題 ― 自己の意志の及ばない行為に対して、どの程度まで道徳的責任を問いうるのかということについて考察する。
【第15回】
 講義のまとめ