Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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行動規範論 II 宇多 浩
1群  2単位
【一群】 12-1-1501-0738-06

1. 授業の内容(Course Description)
 行動規範論Ⅱでは、前期に習得した倫理学説を踏まえつつ、それ以外の学説も紹介しながら、現代社会における倫理的な諸問題を具体的に考察していきたいと思います。
 講義の前半では、おもに現代世界においてグローバルな規模で生じている倫理的問題(格差、貧困、環境問題など)について、さまざまな立場から考察していくことにします。
 講義の後半では、未来世代の人間に対する倫理や、動物や生命に対する倫理など、旧来の倫理学の枠組みを超えた「新しい」倫理の諸問題について、共に考えていきたいと思います。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ・先進国の一員である日本人として、世界のグローバルな問題に対して然るべき関心と知識をもち、それらの問題に対して、自分なりの考え方をしっかりともてること。
 ・自然・環境・生命など、人間以外の存在に対しても、人間が一定の責任をもつことを理解できること。
 ・倫理的な問題を考察する際に、自分の意見の明確な根拠を示すことができるとともに、自分以外の意見やその根拠についても適切に評価できること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 ・平常点(約20%)とレポート(約40%)、学期末の定期試験(約40%)によって総合的に評価する。(定期試験は資料等の持ち込み不可)
 ・平常点は、数回に1回ほど課す授業内容についての感想文によって評価する。
 ・評価は厳正に行うため、普段から授業に出席し、授業内容を理解していることが前提となる。出席していても、授業の内容を理解していなければ単位の取得は困難であるので留意されたい。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 教 科 書:なし
 参考文献:シンガー 『グローバリゼーションの倫理学』(昭和堂)
加藤尚武編 『環境と倫理』(有斐閣)
伊藤恭彦 『貧困の放置は罪なのか』(人文書院)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 ・授業の内容に対応する参考文献の該当箇所を事前に読んでから、授業に臨むこと。
 ・授業の中で理解できなかった箇所は、参考資料を自分で調べて、理解しておくこと。
 ・レポートを作成するまでに、関連文献を必ず一冊以上読み、テーマの基本的論点を整理しておくこと。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 ある一つの問題に対して倫理学的に考察するというとき、ただ自分の考えを述べればよいと勘違いされている学生が見受けられます。一つの問題に対して倫理学的に考えるとは、自己の道徳的判断(~は正しい・正しくない)に対して、その根拠を反省的・自覚的に問いかけ、さらに自分とは異なる主張に対しても、その根拠を問いかけて、判断の妥当性を客観的に吟味する能力が必要とされます。このような思考を経なければ、一つの問題に対して、広い視野でもって考察することは決してできません。このような倫理学的な思考の営みに関心のある方の受講を希望します。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 講義の概要
【第2回】
 自由と平等 ― 富の分配と格差の問題について、リバタリアニズムとロールズの立場から考察する。
【第3回】
 貧困と海外援助(1) 世界的な貧困問題の現状を確認し、その背景を考察する。
【第4回】
 貧困と海外援助(2) 世界的な貧困の問題について、リバタリアニズムや「救命ボートの倫理」の立場から考察する。
【第5回】
 貧困と海外援助(3) 世界的な貧困の問題について、カント倫理学や功利主義、グローバルな正義論の立場から考察する。
【第6回】
 環境と倫理(1) 環境問題の現状を確認し、先進国の人々は環境に対していかなる責任をもつか、という問題について考察する。
【第7回】
 環境と倫理(2) 持続可能性という概念について確認し、持続可能な社会を実現するためにはいかなる条件が必要か、ということについて考察する。
【第8回】
 環境と倫理(3) 環境問題において、現代世代の人々は未来世代の人々にいかなる責任があるのか、ということについて考察する。
【第9回】
 動物と倫理(1) 動物の道徳的な地位について、いくつかの立場を説明する。
【第10回】
 動物と倫理(2) シンガーの動物解放論の立場から、動物実験の現状と問題点について考察する。
【第11回】
 動物と倫理(3) シンガーの動物解放論の立場から、畜産工場や食肉に関する問題を考察する。
【第12回】
 動物の殺処分の問題を検討し、それを通じて、人間の動物に対する責任の問題について考察する。
【第13回】
 自然と人間(1) 自然保護の二つの意味について確認しながら、人間中心主義と生命中心主義について考察する。
【第14回】
 自然と人間(2) シュヴァイツァーとテイラーの生命中心主義の思想について考察する。
【第15回】
 自然と人間(3) レオポルドの土地倫理の特徴とその問題点について考察する。