Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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バイオサイエンス II 益子 計夫
3群  2単位
【三群】 12-1-1607-0487-02

1. 授業の内容(Course Description)
 それぞれの生物は、種、集団および個体を基本単位として固有の形態的、生理的、生態的特性をもって生存している。これらは、共通の祖先種(集団)が、その遺伝的連続性(時間的つながり)を保ちながらも、さまざまな方向へと多様化した結果によるものである。ヒトという生物種も、この「生命の糸」の延長上にあることを忘れてはならないだろう。このような連続性と多様性の基盤をなすものが、遺伝子として書き込まれた情報の伝達と、その過程で生ずる遺伝的変異である。
 この講義では、春期(前期)のバイオサイエンス I と連続するものであり、その履修を前提として講義をすすめてゆく。この講義ではとくに、量的形質の遺伝現象への基本的アプローチと集団レベルの遺伝学的理論を学び、それを通して「歴史的存在としてのヒトや自然生物集団」への認識を深化させる契機としたい。
 なお、下記の授業計画は、受講者の基礎的知識の習得状況(バイオサイエンスⅠの履修)その他によって多少変更することがある。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 生命のありようについて幅広く理解を深め、たとえば,「人種」間の遺伝的差異とその要因、自然生物集団の遺伝的多様性や進化要因、あるいはヒトの遺伝的疾患に医療はどのように対処すべきかなどの問題を自分自身の言葉で考えられるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 期末試験(成績評価上のウエイトとして、おおよそ50%)および出席状況や随時の課題への取り組み等(同50%)により総合的に評価する。規定回数(2/3)以上の出席は単位認定上の必須要件である。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:『人間の遺伝学』S. シンガー 著(関谷 訳)、東京化学同人
 さらに、随時配付されるプリント資料を教材として活用する。
 参考文献:『現代進化学入門』C. パターソン 著、岩波書店
      『生物進化を考える』木村資生著、岩波書店(新書)
      『遺伝学概説』J. F. クロー著、培風館
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 最初に教科書の秋期学習部分を通覧すること。また、毎回の受講にあたり、講義該当部分を事前に読んでおくこと。講義終了後は、知識の確認・補完上、上記参考文献を参照することが望ましい。バイオサイエンスⅠと同様、本教科は随意選択科目であり、ある程度の基礎的知識があり、その上に立ってさらに知識を深めてゆきたいという受講者を想定して講義を進める。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 この講義は、同一担当者によるバイオサイエンス I (春期)と密接に関連しており、それが履修済みであることを前提とする。受講上、初歩的な(高1程度)数理的素養があることが望ましい。講義後半では簡単な代数計算(対数、平方根計算)のできる卓上計算機を準備しておくと便利であろう。出欠記録に不正があった場合、それ以降の出席停止など相応の対処をとる。指定された教科書は必携。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 はじめに:講義の概要と留意事項の説明を行う。
【第2回】
 遺伝子発現の調節-1. 遺伝子情報の発現に関する調節作用の重要性をヒト・グロビン遺伝子などを例に学習を進める。
【第3回】
 遺伝子発現の調節-2.遺伝子情報の発現はどのようなしくみで調節されているのか、大腸菌の乳糖代謝を例に理解を深める。
【第4回】
 ヒトのゲノム構成と染色体地図-1.ヒト染色体のなりたち、DNAと遺伝子の構成、染色体上における遺伝子の線状配列の意味を理解する。
【第5回】
 ヒトのゲノム構成と染色体地図-2.同上(続)。
【第6回】
 量的遺伝形質-1.ヒトの身長や体重など、個体間の差異が量的に変化する形質は、そのままではメンデル理論が適用されない。しかし、複数の遺伝子座の累積効果を組み入れることにより、取り扱いが可能となることを学ぶ。
【第7回】
 量的遺伝形質-2.同上(続)。
【第8回】
 遺伝率-1.遺伝率の理解の前提として、分散、共分散、回帰、相関などいくつかの基本統計量を把握する。
【第9回】
 遺伝率-2.形質発現における遺伝作用と環境作用の相対的効果としての遺伝率を学ぶ。
【第10回】
 遺伝率-3.実際に遺伝率の推定に取り組む。
【第11回】
 生物集団の遺伝-1.集団レベルで遺伝や進化現象を扱う場合の基礎となる遺伝子型頻度および遺伝子頻度の考え方を理解する。
【第12回】
 生物集団の遺伝-2.集団レベルで遺伝現象を扱う際の基本原理としてのハーデイ・ワインベルグ則を理解する。
【第13回】
 生物集団の遺伝-3.遺伝子頻度の変化要因としての、突然変異と自然選択、そして遺伝的浮動、個体の移住の意義を理解する。
【第14回】
 生物集団の遺伝-4.同上(続)。
【第15回】
 まとめ、試験