Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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基礎演習 II 佐藤 光宣
選択  2単位
【現代ビジ】 12-2-2120-0258-02

1. 授業の内容(Course Description)
 この授業は、2年時に通年で履修すべき内容を備えているが、その後半部分に充当する。この意味で、春秋期で構成される授業全体のうちの一方のみの受講は、不可能ではないが推奨できない。
 この授業は4年制大学への編入を目指す学生が、進路先の学部で専門科目を学ぶために必須となる基礎学力を養うことを主眼とする。この学習を通じて得られるであろう諸能力は、社会生活を継続的に営む際に下支えとなる力――「人間力」――を形づくるに違いない。したがって、編入を希望せずに逸早く社会に巣立とうと志す学生においても、本授業の受講意義は大きいと言わねばならない。日々の学習を怠らない真面目で意欲ある学生は、その編入希望の有無にかかわらず、これを私は分け隔てなく受け入れて毎回の授業を誠心誠意行う。
 授業の内容と水準は、帝京大学経済学部ないしは法学部で2年時秋期に開講される「基礎演習Ⅱ」・「基礎教養演習Ⅱ」に沿ったものとなる。すなわち、授業は、日本語の諸能力を形づくる多面的な要素を鍛え上げるとともに、極めて不安定な累積的過程を歩みつつある世界システムの性質と機能について一定の知見を得られるよう指導することを目指して展開する。
 授業は春期のそれに引き続いて、一定の基本方針のもとに行われる。すなわち、本授業は、まずもって古典に親しむことを通じて多少なりとも教養教育の実をあげようとするものである。このような地道な学習を通じて、教養は単なる雑学ではないことが周知徹底されるであろう。学生が専門的知識をさらに身につけ、あるいは資格を取得して社会に巣立つに際して、この教養ほど価値を持つものはない。それは、自分を含めた人間理解を十全にするからである。同時に授業は、昨今の内外の様々な諸問題をめぐる新聞記事と論説を中心に読み進めることを通じて読解力を養い、問題として取り上げるべき事柄を明確にしてゆく。その際、この問題に関して発議がなされ、論作文がまとめられ、討議と添削がそれらに続いて反復される。この一連の学習過程を通じて、日本語の諸能力を段階的に磨いてゆくことが授業内容となる。こうして学生諸君は正確な人間になる道筋に乗るであろう。
 したがって、学生諸君は、論理的な思考を促すような気持ちで文章を読み書きするように心掛けるのが良い。そして、授業の進展とともに、物事を的確に要約する能力を高めることが肝要である。そのことは、授業内容の質を高めることにも繋がるからである。このことは、学生が教養を蓄積する度合いに応じて実現してゆくであろう。また、そのように指導する。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 フランシス・ベーコン(Francis Bacon)は、その著『随想録』(Essays, 1597)のなかで、「読むことは充実した人間をつくり、話すことは機転の利く人間をつくり、書くことは正確な人間をつくる」と述べている。読解、作文および会話の諸能力は、この授業において涵養されるべき諸項目であることは言を俟たないが、ベーコンによって述べられた斯くあるべき人間に向かって成長すべく学生と知的体験を供にすることこそ、本授業の目標としたいところである。その過程では、「わが実力の不十分なることを知るこそ、わが実力の充実なれ」とのアウレリウス・アウグスティヌス(Aurelius Augustinus)の至言に気づかされることになろう。このような認識に立ち至ることができれば、この授業目標もまた到達の域に達したと言うべきであろうが、学生自身が自ら内面的価値を高め社会生活に歩み出す勇気を得てもらうことこそ授業の真の到達目標に他ならない。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 秋学期期末試験(最終授業時間内に実施)、学習到達度調査小テスト(数回実施予定)、およびこれらの試験結果に平常点を加えて評価を決する。また、正当な理由なくして追試験等は実施できない。なお、レポートによる救済措置は予定していない。詳細は次の通りである。
 (1)この授業の評価は、秋学期期末試験(50%)、学習到達度調査小テスト(20%)、および平常点(30%)により総合的になされる。但し、この基準は授業の進行状況によって若干変更することがある。
 (2)授業に顔を出すだけの学生は授業の到達目標までの過程に自ら関与しない以上、単位取得は困難である。授業の開始前と終了後に毎回行う出欠調査は、出席点の機械的算定のために行うのではない。選択科目たる本授業への出席は学生の権利であり、その権利の行使がいかに主体的に行われるかが重要である。権利の行使には責任が伴うのである。学生には積極的な勉学の姿勢が強く求められるのであって、かかる姿勢が見受けられた時にのみ出席を実質あるものとして認め、これを平常点として積極的に評価する。この趣旨において出席調査は厳格に行われる。よって、出席するに値する授業を私は心掛けねばならない。
 (3)平常点は、授業時の質疑応答の態様および予習復習の達成度等によって積算する。授業の要点は、毎回、これを聞き逃してはならない。まずもって授業を虚心坦懐に聞き、その内容をノートに記さなければならないのである。また、ノートの内容は自ら更新を重ねていかねばならない。その際、思考の過程が、いわば知的成長記録として記されているのが良い。このような手順と平行して、授業の要点が各自で分析され、これを総合するために数多の書籍に向き合う知的熱意が求められる。もとより、授業の内容と形式は担当教員の能力と人間性に制約されるであろうから、この限界を突破すべく学生は発展の契機をまずは授業から得るべきである。ここから先が「自分流」を発揮すべき自学自習の領域となるが、そこに至る第一歩は生き生きとして授業に加わろうとする姿勢そのものに存する。平常点は、そのような意味での「自分流」の姿勢が学生に見出せた時にこそ付与される。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストは使用しない。私自身が用意した教材を授業開始時に、ほぼ毎回配布する。なお、授業で取り上げる参考文献は内容的に多様であるが一貫性を持ってる。また、その数は少なくない。学生は帝京大学メディアライブラリーセンターに日参して参考文献に接することが必須となる。そして、これを熟読し日本語に関する多面的な知識、ならびに一般的教養を深めるよう強く求める。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 授業は、その理解に困難なきように努め、とりわけ知的好奇心を触発するよう心して行う。この授業方針からして当然、授業時間外の学習内容については制限を設けていない。したがって、授業時間外の学習時間の長短や頻度についても、学生自らがこれらを定めることになる。もとより、継続は力なりと言うから、日々時間を捻出し、これを授業時間外の学習に最大限振り向けることが良策である。なお、書物と親しみ、これを随時まとめる習慣が身に付くように自学自習すべきである。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 繰り返すまでもなく、この「基礎教養Ⅱ」は通年で内容的に完結する選択科目のうちの2年時秋期配当科目であるけれども、「基礎教養Ⅰ」(春期)を履修していなくても受講自体は可能である。すなわち、事情の如何によっては、「基礎教養Ⅱ」を単独で受講することができるのである。けれども、こうした科目選択あるいは学習パターンは推奨できるものではない。本短期大学のカリキュラム編成と指導要領は全体を展望したうえで出来ており、実際にこの授業科目は、学生が編入などの進学に向けての準備や一般的教養の習得、および学問を発展させてゆくための基礎的支援を一貫して行うものだからである。
 それゆえ、授業に臨む際の姿勢は必然的に決するであろうが、とりわけ全授業回数の無遅刻での出席が強く求められる。怠惰な生活習慣に基づく遅刻の常習や頻回に及ぶ欠席から、人生に展望が開けるはずがないと思われるからである。
 なお、真面目で意欲的な学生は概して静かであるが、語らせれば雄弁である。このような学生を多く迎え、可能な限り内容のある授業を行いたい。その授業の水準を最終的に決定するのは学生自身である。実り豊かな人生に歩み出るための努力を、この科目を履修する際に発揮してもらいたい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 授業の課題と授業予定
 ―シラバスの解説を中心として―
【第2回】
 中村 元訳『ブッダのことば―スッタニパータ―』 ①第一章の特定詩句の考察
 ―その成り立ちと意義を中心に―
【第3回】
 中村 元訳『ブッダのことば―スッタニパータ―』②第二章~第五章の特定詩句の考察
 ―「怒り」・「言葉」・「嘘」・「死」・「幸福」をめぐって―
【第4回】
 セネカ著『人生の短さについて』
 ―読解と要約―
【第5回】
 経済活動の自由とその倫理的根拠
 ―アダム・スミス著『道徳情操論』に基づいて―
【第6回】
 William Shakespeare, MACBETH
  ―SCENE V. Dunsinane. Within the castle.―
【第7回】
 The Apocalypse of Saint John (Revelation)
 ―Chapter 3:17―
【第8回】
 新聞を読む ①政治経済面の要約
 ―学習到達度調査小テストと討議―
【第9回】
 新聞を読む ②社説の要約
 ―学習到達度調査小テストと討議―
【第10回】
 名言名句に親しむ
  ―学習到達度調査小テストと解説―
【第11回】
 千利休と戦国の茶
 ―山上宗二著『山上宗二記』、井伊直弼著『茶湯一会集』―
【第12回】
 「茶道」の精神と現今の「金銭文化」
(“pecuniary culture”)
 ―岡倉天心著『茶の本』 第六章「花への哀歌」を中心に―
【第13回】
  知らないと恥ずかしい日本語
 ―誤用を改める―
【第14回】
  帝京大学への編入試験に備えて
 ―過去問とその解説―
【第15回】
  秋期試験