1. |
授業の内容(Course Description) |
|
わが国は、小さい国土に約1億2000万人が住んでおり、生活するために必要な石油エネルギーの約98%、食糧の約60%を海外からの輸入でまかなっている。わが国が原油の大部分を依存している中東地域からわが国までの海上交通路(sea lane)は、ホルムズ海峡―インド洋―マラッカ海峡―南シナ海―台湾周辺―東シナ海を通っており約6000海里もある。アジアやアフリカから運ばれる農産物や水産物などの食糧も、この海上交通路を通っている。したがって、この海上交通路に沿ったどこかの地域で、もし何か紛争が起これば、わが国への原油や食糧の供給は直ちに脅かされる。現在ソマリア沖には国連の要請に基づき海上自衛隊の護衛艦が対テロ護衛のため参画している。また、ハイチで起きた大規模地震の被災地を救援するため陸上自衛隊が活動している。これからもこの現実は変わらない。要するに、わが国ほど世界中が平和でないと困る国、わが国ほど危機管理を必要とする国は他にないのである。わが国は世界の平和のため、わが国の危機管理のため、より多くのことを為さなければならない。資金を提供して不安定な要因をなくす努力、紛争を予防する外交努力、紛争が起きればそれを沈静化させる努力、平和が回復すればそれを維持する努力などを、積極的に行わなければならないのである。わが国は、どのような形でこれに参画し国際的な責務を果せばよいのか。この講義は、国際関係の危機管理について基礎的な知識を整理したものである。
|
2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
|
危機の分類、災害対策基本法の対象となる自然災害による危機、人為的危機危機、とくに水資源、食糧、海上連絡線、国際平和維持活動、政府開発援助等に関する基礎的な知識を理解させ、新聞やテレビで紹介される各種の危機的事態の背景を理解できるようにする。
|
3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
|
授業への出席状況を重視する。出席率・小テスト・期末試験の成績を総合的に評価する。
|
4. |
テキスト・参考文献(Textbooks) |
|
参考書 志方俊之著『無防備列島』(海竜社) 参考書 志方俊之著『日本はこのままでは生き残れない』(PHP研究所)
|
5. |
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
|
当日の授業計画に示された項目の予備知識をインターネットで調査し、最低限のキーワードについて予習しておくこと。および当日の授業で筆記をさせた内容については、次回までに整理しておくこと。
|
6. |
学生への要望・その他(Class Requirements) |
|
出席率を最重視する。講義中、不定期にワンポイント・テストを行う。 「危機管理論Ⅰ」を受講した者は、なるべく秋期に「危機管理論Ⅱ」を受講するよう希望する。
|
7. |
授業の計画(Course Syllabus) |
|
以下の項目を、ほぼ1週間に一つのペースで進める。 【第1回】 危機の種類とその特性 【第2回】 危機管理の定義と過去の実例 (成功例と失敗例) 【第3回】 世界のエネルギー事情 【第4回】 わが国におけるエネルギーの需要と供給 【第5回】 世界の食糧・水事情 【第6回】 わが国における食糧の需要と供給 【第7回】 海上交通路の安全確保 【第8回】 政府開発援助(ODA)の実体 【第9回】 予防外交の実体 【第10回】 危機管理における国際連合の役割 【第11回】 国連安全保障理事会の機能 【第12回】 国連安全保障理事会の機構改革 【第13回】 国連平和維持活動(PKO)の歴史と現況 【第14回】 国際連合と有志連合 【第15回】 まとめ
|