Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
憲法A 金澤  誠
教職  2単位
【教職】 12-1-1210-1952-07A

1. 授業の内容(Course Description)
 この講義は、日本国憲法にかんする、いくつかの裁判例や制度を理解することを目的としています。テキストである、中村睦男編『はじめての憲法学(第2版)』(三省堂・2010年)を用いて、原則として、1回の講義で、ひとつの項目をとりあげて、当該テーマの議論状況を考えることにしたいと思います。
 より具体的な目標としては、やや安直な言い方かもしれませんが、公務員試験に出題されるような、憲法の問題を解くための、「最低限度の」能力を(せめて!)身につけられるようになれれば、と思っています。つまり、最高裁判決を中心とするいくつかの裁判例や、憲法が予定しているいくつかの制度を、「しっかりと」理解できるようになることが目的です。
 もちろん、法学部の専門科目の講義ですから、ある程度の掘り下げた議論もする予定でいます。たとえば、あるひとつの考え方(ひとつの判決)を理解したうえで、それと対立するような考え方(裁判例や学説)も、「同時に」理解できるようになれれば、理想的です。
 皆さんにとっては、残念かもしれませんが、現実の世界においては、名探偵コナンのような、「真実はいつもひとつ!!」という世界が、常に成り立つとはいえません。むしろ、「昨日の正解(常識)が、今日の不正解(非常識)に変わること」が、よくあります。ですから、みなさんには、そうした現実の世界(の複雑さ)を、なんとなくでよいから、感じ取れるようになってほしいと思っています。
 憲法Aは、おもに人権と呼ばれる領域を、勉強することになります。はたして、「みんなで決めてよいこと」と「個人で決めるべきこと」は、どのように区別できるでしょうか。「権利を主張するヤツは、わがままである」という主張は、どこまで正しいでしょうか。みんなが考えている、シャカイの「ジョーシキ」って、「いつ」「どこから」「ジョーシキ」になったんでしょうか?
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 おもに、憲法判例を素材とすることで、次のようなことを目指したいと思います。
 ①講義でとりあげた複数の憲法判例の内容を、両当事者の主張を踏まえつつ、説明することができる(社会には、いろいろな人がいて、いろいろな意見があることを認識できる。正解がひとつではないことを認識できる。そして、「真実はいつもひとつ!」ばかりでないことに気づけるようになる)。
 ②新聞や法律雑誌、さらには、2ch(?)などで、日々議論されている、法律問題について、法的根拠を挙げながら、批判もしくは受容できる(昨日の自分より、ほんの少しだけ新聞記事を読めるようになった気になる。世の中の怪しい(?)評論家に対して、軽いコメント【ツッコミ?】をいれられるようになる)。
 ③講義でとりあげた判例や制度に関連する問題を、自分で発見し、それにかんする解決方法を提示することができる(自分ひとりで、ある程度の分量のレポートを書けるようになる。憲法の役割に関するイメージを、近所の何も知らない小学生【小学生は迷惑?】に対して、ほんの少しだけ教えられる)。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 試験による評価が原則です。論述式の問題が多くなると思います。
 試験では、基本的な語句を、正確に理解しておくことが重要となります。 ただ、暗記するだけではなく、関連する学説、関連する裁判例を踏まえて理解しておきましょう。
 出席状況も考慮することがありえます。場合によっては、講義中の発言による加点、レポートや自由報告(口頭報告)による加点、小テストによる加点もありえます。最初の講義に参加して、この点(成績評価方法、試験日程、試験内容など)を確認してください。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストとして、中村睦男編『はじめての憲法学(第2版)』(三省堂・2010年)
 参考文献として、岡田信弘編『憲法のエチュード(第2版)』(八千代出版・2009年)、芦部信喜『憲法(高橋和之補訂)(第5版)』(岩波書店・2011年)、高橋和之・長谷部恭男・石川健治編 『憲法判例百選ⅠⅡ(第5版)』(有斐閣・2007年)、棟居快行・赤坂正浩・松井茂記・笹田栄司・常本照樹・市川 正人『基本的人権の事件簿(第4版)』(有斐閣・2011年)、初宿正典・高橋正俊・米沢広一・棟居快行『いちばんやさしい憲法入門(第4版)』(有斐閣・2010年)、大沢秀介編『判例ライン憲法(第2版)』(成文堂・2011年)、山口進・宮地ゆう『最高裁の暗闘ー少数意見が時代を切り開くー』(朝日新書・2011年)、笹田 栄司・大沢 秀介・井上 典之・工藤達朗 『ケースで考える憲法入門』(有斐閣・2006年)、野坂泰司『憲法基本判例を読み直す』(有斐閣・2011年)などを挙げておきます。
 最後に、個別テーマですが、表現の自由に関する小説(ラブコメ!)として、有川浩『図書館戦争』(講談社文庫・2011年)(シリーズもの)を挙げておきます。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 テキストの該当箇所を、可能な限り、あらかじめ読んでくることを求めたいと思います。講義が終わった後の復習もできれば、理想的です。資料として配布した、公務員試験等の問題を、せめて(!)解けるようになってほしいと思います。もちろん、それ以上のレベルになってほしいことは、いうまでもありません。試験対策だけではない、法律科目としての面白さを、ほんのちょっとだけでも、感じ取ってくれれば、と思います。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 ①難しくいえば、社会で生じている法的現象に興味を持つことが求められます。憲法に関する事件は、テレビや新聞などでよく報道されています。それを、自分で「発見」することが重要になります。
 ②軽くいえば、みなさんは、まだ大学1年生(たぶん?)ですから、憲法に関する知識は、最低限度のもので構いません。それよりも、想像力(妄想力?)をもって、実際にいろいろな紛争を見ていく(いろいろ悩みつつ、社会を探検していく!)姿勢が、何よりも重要になります。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 イントロダクション(講義の進め方についての確認をします!)
【第2回】
 憲法を学ぶ前に(ケンポーは、法律より偉いってホント?そういや、ケンポー学者は、なんか偉そうかも?)
【第3回】
 裁判所(裁判所って、誰の味方?!どんなことをしてくれるの?たとえば、大学の単位を落とした場合、裁判所は助けてくれる?AKB選挙の結果に文句がある場合に裁判できる?嵐【ジャニーズ】のなかで誰が一番カッコいいかも決めてくれる?恋愛問題も解決してくれる?裁判官の「おっちゃん」に、これ全部わかるかな?)
【第4回】
 違憲立法審査制(どんなときに、ケンポー裁判ができるんだろう?実際にやってみる?!じゃあ、たとえば…)
【第5回】
 私人間効力論(外国人が、温泉入浴を断られたら、どうなるんだろう?憲法違反?ケンポーって、ご飯にかける、「ふりかけ」や「コショウ」にすぎないってホント?!)
【第6回】
 自己決定権①(なんで中学や高校の先生は、制服や髪型、髪の色にうるさいの?ゲーセンやカラオケの立ち入りを禁止する校則も、憲法違反にしちゃえ?!)
【第7回】
 自己決定権②(輸血は絶対に嫌だ!といっていたのに、病院で勝手に輸血されました。乳がんの手術の仕方について、お医者さんともめました…安楽死や尊厳死について、日本人はどう思っているんでしょうか?)
【第8回】
 プライバシー権(愛の告白メールの第三者への転送は、プライバシー侵害?カレログ【携帯追跡サービス】って、ヤバくね?!オービス、Nシステムって知ってる?ツイッターでも、プライバシー侵害は成立する?政治家や、芸能人や、スポーツ選手には、プライバシーってないの?のび太が、しずかちゃんの入浴シーンを覗くことは、プライバシー侵害?それとも、のび太の「知る権利?」)
【第9回】
 平等条項①(むかし、親殺しがありました。家族を殺すと刑罰が重くなるの?内縁の妻であればどうなの?妹の旦那さんでは?)
【第10回】
 平等条項②(ヒチャク差別って何?国籍法違憲判決、住民票の記載方法など、多くの問題がこれに関連しています)
【第11回】
 信教の自由(中学でも必修化の動きがありますが、剣道の実技をサボれますか?家庭科や理科の授業だとどうですか?)
【第12回】
 政教分離①(靖国神社ってどんなとこ?富士山って誰のもの?皆さんは、初詣とクリスマスの両方をしますか?)
【第13回】
 政教分離②(北海道砂川市に、【最近少し変わったんですが…】空知太神社がありました。【うちのゼミ生のように】ぜひ行ってみてください…国道12号は日本一まっすぐに長いので、制限速度に気をつけて、ゆっくり走ろう北海道!!ついでに、富平神社も探してみては?)
【第14回】
 表現の自由①(ケンポー学者は、ポルノが好きってホント?Youtubeでダウンロードしちゃダメなの?外国旅行のときの、税関チェックって、なんか嫌だよね。かばんの中をみんなの前であけるのって…)
【第15回】
 表現の自由②(マンガ・アニメを規制するっていうけど、大人が「残虐」だっていうマンガって、ホントに危ないの?ONE PIECEや、HUNTER×HUNTERってどう?!皆さんの意見を聞かせてください。今日は、アニメ・オタクの出番です。)