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授業目標 |
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生物はただ1個の卵から発生し、決まった形を作り上げるとともに、さまざまな細胞を分化させます。ここでは、「細胞はいかにして分化するか」を理解することを目標にして、この発生のプロセスで起こるさまざまな現象について、主として形態形成と遺伝子発現調節という観点から発生分化のしくみを学ぶようにします。
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2. |
授業概要 |
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細胞分化の概念から解説を始め、分化した状態の安定性・細胞増殖のコントロールに付いて概観します。次いで、遺伝子としてのDNAの特徴に付いて説明した後、受精・卵割・胞胚形成・嚢胚形成に付いて説明します。その後、遺伝子発現調節として、転写および翻訳レベルの調節に付いて解説し、転写レベル調節を行う種々の因子に目を通します。その後、卵の母性成分による発生分化の調節について解説します。
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3. |
準備学習(授業時間外の学習) |
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この発生生物学では、生物学1、生物学2の基礎を踏まえ、更に基礎生化学、動物生理学1等の1年生の時の講義を基礎にして、動物発生のしくみを勉強するということになります。また、時に、分子生物学的な知識も必要になります。従いまして、広い範囲の生物学的な知識がこの発生生物学の講義の内容の理解には必要となりますので、その意味でこの講義は2年生で学ぶのに適したものであると思います。講義の内容は、単に講義時間中に話を聞いておれば良いという事ではなく、少し予習をしてくるのがよろしいと思われます。そのため、教科書を指定して進路を明確にしますので、毎回、教科書に目を通して来ていただきたいと考えています。
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4. |
授業計画 |
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【第 1 回】イントロダクション・細胞分化の概念。 【第 2 回】分化した状態の安定性・分化転換・決定の転換。 【第 3 回】細胞増殖と分化・細胞周期と遺伝子発現。増殖と分化の関係性。 【第 4 回】遺伝子としてのDNA。リダンダントDNAとユニークDNA 【第 5 回】受精直後の諸反応・多精拒否・母性mRNAの局在と活性化。 【第 6 回】卵割とDNAの複製・アイフォーム、複製単位。 【第 7 回】胞胚形成とMBT (midblastula transition)、卵にセットされたアポトーシス。 【第 8 回】DNAレベルの変化と遺伝子発現・トランスポソン・DNAのメチル化。 【第 9 回】発生分化によって遺伝子が変わるか・分子的アプローチ。 【第10回】発生分化によって遺伝子が変わるか・発生生物学的アプローチ。 【第11回】遺伝子発現の調節のレベル・翻訳レベル調節。 【第12回】遺伝子発現の調節のレベル・転写レベル調節。 【第13回】転写レベル調節を担う因子。転写因子。 【第14回】卵の母性成分による発生分化の支配。 【第15回】まとめ:1個の受精卵からどのようにして個体が生ずるか。
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5. |
成績評価の方法、基準 |
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成績の評価は筆記試験による。
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6. |
使用テキスト及び使用教材 |
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塩川光一郎著:「分子発生学」(東京大学出版会)をテキストとして用います。この教科書は上記の授業計画の進行とほぼ合致していますので、上記の授業計画に合わせて、教科書に沿って解説して行きます。
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7. |
その他 |
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講義中に大小さまざまな問題をなるべく多くの生徒諸君にぶつけて、生徒諸君の積極的授業参加を促すように努力します。2012年には筆者の親しくしておりますイギリスのガ—ドン博士がアフリカツメガエルのクローン研究でノーベル賞を授与されました。将来、アフリカツメガエルを用いる発生生物学に興味を持ち、論文作成なども考えている学生諸君には、塩川光一郎著:ツメガエル卵の分子生物学(東京大学出版会)を参考書に挙げておきますので、こちらの小さい本も勉強してみてください。
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