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授業の内容(Course Description) |
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今年度は新カリキュラムへの移行措置として、「日本経済史」2コマを同一内容で行います。「戦後日本経済史」は来年度、「現代日本経済史」(3年時配当)で受講してください。 「日本経済史」が扱う対象は、幕末・維新期から第2次世界大戦期までの「戦前日本資本主義」です。このうち春学期では、明治維新から産業革命(軽工業)までの講義を行います。この時期の日本経済は、欧米先進資本主義の「外圧」に対抗して、政府の「近代化政策」のもとでめざましい資本主義的発展をとげました。しかしその反面、「富国強兵」のための急速な上からの資本主義化は、軍事工業偏重でありながら重工業に弱点を持つアンバランスな経済発展、官民の癒着構造、大経営と中小経営の間の二重構造などのさまざまな問題点を生み出し、最終的には日本社会をアジア太平洋戦争へと導く結果となりました。したがって講義のポイントは、近代日本の急速な経済成長を可能とさせた内外の条件を探りながら、同時に、その条件が日本の近代社会の展開をどのように制約したかを考えることにあります。それは決して「過去」の問題ではありません。ここで取り上げる諸論点は形を変えて必ず戦後の日本経済にも投影されているはずです。受講者諸君が現在、君たちがその中にある現代日本経済の実情と問題点を頭におきながら「歴史」に耳を傾けてくれることを望んでいます。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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明治維新以降の経済成長のアウトラインを知った上で、その急速な発展を可能とさせた諸条件と、「上からの資本主義化」に伴う諸矛盾を理解する。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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学期末試験の成績による。小テスト等、成績評価に反映する出席調査は一切行わない。ただし「授業を聴きに来てくれた人にいい成績をつける」のが成績に関する私の基本姿勢なので、出題方法は出席回数に応じて得点できるように工夫してある。私もプロの教員なので、わざわざ出席調査をしなくても答案を見ればその受講者が授業を聴いていてくれたか否かを判別できるという自負を持っている。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキスト:『日本経済史』(第2版)石井寛治 東京大学出版会
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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日本列島には近代日本の経済発展を跡づける「歴史的遺産」が点在している。日常生活の中で、あるいは旅先で出会うこうした歴史的遺産に興味を持ち、その「解説」などを読んで、日本の経済近代化を考える視野を広げて講義に臨んでほしい。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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授業は毎回サブノート形式のプリントを配布して、それに沿って進めてゆく。受講者が講義を聞きながらプリントの空白部分=重要項目を埋めてゆけば自然にわかりやすいノートができるようになっている。ただし、プリントには「項目」と「データ」しか印刷されていないので、授業を聴かない限り、プリントを持っていても無意味である。 「日本の近代史はこんなにおもしろいよ!」ということをできるだけたくさんの人にわかってもらいたい、そのために多くの人に「聴きにきて」ほしい、というのが私の偽らざるホンネである。当然のことではあるが、私は君たちに興味を持って「聴いてもらえる」ような講義ができるように努力するつもりなので、君たちも私が講義に行くのが楽しみになるようにうまく私を乗せてほしい、と思う。大学の講義は教師と学生が協力して作り上げてゆくものだ、というのが私の信条である。それを君たちにも実感してもらいたいと思う。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 ガイダンス 【第2回】 序 「近代」日本の「経済成長」① 「経済成長」の特質と時期区分 【第3回】 「近代」日本の「経済成長」② その問題点と「日本経済史」講義の主眼 【第4回】 1 明治維新① 明治維新の諸勢力と討幕派 【第5回】 明治維新② 明治維新政府の財政的基礎 【第6回】 2 資本の本源的蓄積 1 「原蓄」とは何か 【第7回】 2 地租改正① 地租改正の要点 【第8回】 地租改正② 地租改正をめぐる諸問題 【第9回】 3 殖産興業政策① 殖産興業政策前史と工部省段階 【第10回】 殖産興業政策② 内務省段階と農商務省段階 【第11回】 4 日本型原蓄と諸階級 【第12回】 3 産業革命 1 産業革命とは何か 【第13回】 2 日本産業革命の諸相① 綿業(1) 【第14回】 日本産業革命の諸相② 綿業(2) 【第15回】 まとめと試験
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