Web Syllabus(講義概要)

平成25年度

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法律学演習 II 中江 章浩
必修  2単位
【法律】 13-1-1210-0382-09

1. 授業の内容(Course Description)
 リーガルマインドという言葉をよく耳にしますが、これは実社会という公道に自分の人生を乗り入れるための自動車免許のようなものです。いわば、実りある社会生活を送るためのパスポートといえ、「論理」+「論理を超えた洞察」という2面性を持っています。具体的には、論理性・抽象性(一般化できる能力)・実利性(現場重視)・システム性を持って物事を判断する能力のことで、物事を体系的に理解し、断片的な知識にあまりこだわりすぎないということを意味すると思います。このリーガルマインドのポイントは、様々な事件を同じものさしで解決すること(法的安定性)と、どの事件も皆が納得する結論になっていること(結果の妥当性)のバランスをどうとるかでしょう。そこで、本講座では受講者が、対立しあう利益を調整し問題解決への筋道をつけるための「法的安定性」と「結果の妥当性」のバランスのとり方を考えながら、公務員試験・行政書士試験などの各種資格試験問題を様々な角度から研究し、それに合格することを目標にします。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 市役所・県庁・警察官・消防官・法科大学院・国家公務員・行政書士・司法書士・社労士試験などに合格することが目標です。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 レポート(1回)・授業の出席・班ごとのプレゼンテーション・自分の勉強成果のゼミホームページへのアップロード・授業中の発言などを総合して評価しますが、授業の出席を重視します。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:『社会保障のイノベーション』(中江章浩著 信山社)
 参 考 書:『21世紀の社会保障』(中江章浩著 第一書房)、『社会福祉エッセンス』(中江章浩他著 自由国民社)、『トピック社会保障法』(中江章浩他著 不磨書房)、『日本のNPOシステム』(中江章浩著 エヌピ-通信社)、『どうなる年金こうなるくらし』(中江章浩著 長崎出版)、『日本のなおし方』(中江章浩著 信山社)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 法学・経済学・社会学などの様々な分野から学際的に出題される公務員試験の準備は、同じく学際的な学問である社会保障論のポイントを組み直して行うことが合理的です。私自身の受験勉強や厚労省実務の体験を踏まえて授業を進めますので、指定テキストを事前に読んでおいてください。また、シラバスの授業計画の中に書かれている例題について、自分なりの答をまとめておくと授業理解が深まると思います。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 考えるための道具として法律の条文を使いますので、必ず、小六法を持参してください。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
 09月第4週  憲法(人権)
  例題
   介護現場が人手不足なのでインドネシアからケアワーカーを受け入れることは正しいか。仮に正しいとした場合、その賃金は日本人より安くても良いか。
  キーワード
   介護労働者の離職率、介護報酬の決定過程、インドネシア/フィリピンの介護職・看護職の実態、3K労働報酬の世界的傾向、移民政策の世界的傾向、国籍と出入国管理、不法滞在者5年半減計画、技能実習、外国人登録制度廃止と在留カード(Residence Card)、Economic Partnership Agreement、Trans-Pacific Partnership、血統主義と出生地主義、米国アリゾナ州の不法移民法取締強化法への違憲判決、グリーンカード、ドイツ国籍法の出生地主義一部導入、永住市民権(denizenship地方参政権を持つ外国籍住民)、外国人の人権、基本的人権の原理、基本的人権の限界、包括的基本権と法の下の平等、アファーマティブアクション、日本人と地球人、グローバリズムの本質、情報革命、
 10月第1週  憲法(統治)
  例題
   月3万円の国民年金しかない老人から介護保険料を取ることは正しいか
  キーワード
   租税法律主義、法律・条例・告示、旭川市国保条例訴訟(国保と租税法律主義)、総評サラリーマン税金訴訟(所得税の課税最低限と生存権)、効率と公平、ワーキングプア、強制加入保険、応能負担と応益負担、外形標準課税、非営利法人と課税、基礎年金水準、介護保険の減免3原則、生活保護基準の決め方、税金と保険料の違い(住民税非課税でも介護保険料半額負担)、社会保障における社会保険方式と税方式、国民年金保険料の免除基準、赤字企業の保険料負担と納税、サッチャー政権幕引きの前奏曲となった人頭税、弱者に負担を求める方法、消費税と給付付き税額控除、負担と給付の対応性、税金と保険料の強制執行、保険者機能、
 10月第2週  行政法(組織)
  例題
   日本年金機構(旧社会保険庁)の保険料徴収率が大幅に低下した原因は、自治体に依頼していたフリーターからの年金保険料徴収を自ら行い始めたからであるという意見は正しいか。また、年金・医療・福祉は国・自治体・個人のどこが運営主体になるべきか。
  キーワード
   社会保障の官民分担、エスピンアンデルセンの福祉資本主義の三つの世界、後期高齢者医療広域連合と県の違い、市町村が保険者である国保・介護保険の慢性的赤字、共通番号制、社会保障個人口座、Central Provident Fund、国と地方の関係、地方自治と連邦制、廃藩置県、明治・昭和・平成の市町村大合併、地方分権一括法、地方分権推進法、地域主権改革一括法、機関委任事務の廃止理由、法定受託事務、固有事務と自治事務、道州制、広域連合、機関訴訟、機関委任事務と団体委任事務、住民自治と団体自治、教育委員公選・自治体警察の廃止に代表される逆コース、法律と条例の関係、国家行政組織法、歳入庁構想、国税庁、県税事務所、県税と市町村税の賦課徴収業務の共同化、保険料徴収率の低下、日本年金機構国民年金部、地方事務官、社会保険庁職員構成の3層構造、強制徴収、保険料免除、医療・介護における一部負担金減免の可否、
 10月第3週  行政法(補償)
  例題
   厚労省認可の血液製剤投与でのエイズ感染事件で、国・製薬会社・医師に過失があるといえるか。仮に違法無過失である場合、患者救済はどのようにすればよいか。
  キーワード
   損失補償法、国家無答責、賠償と補償の違い、国家賠償法、官僚の個人責任、費用負担者、固有責任、代位責任、公権力の行使、公務員、職務行為、典型的行政処分、違法性、故意・過失、予見可能性、回避可能性、公権力の不行使、独立行政法人、公の営造物、管理の瑕疵、製造物責任法、費用負担者、過失構造論、旧過失論、新過失論、新新過失論、過失論、薬事審議会、医薬品、中医協、繰り返される薬害、ウィルスとバクテリア、正常分娩と帝王切開、使用薬剤の記録、カルテの保存義務、個人情報の公開、和解と慰謝料、損害賠償のための特別税、サリドマイド、スモン(キノホルム)、薬害エイズ事件、薬害肝炎事件、フィブリノゲン、肝炎対策基本法、薬害イレッサ事件、集団予防接種事件、政策形成訴訟、嫌煙権訴訟、
 10月第4週  国際法(国籍)
  例題
   第二次大戦中に軍需工場で働くため日本に連れてこられた朝鮮人の孫は、生活保護を受けることが出来るか。日本再生戦略により招聘した、日本人と結婚し長年働いている中国人科学者は、土地購入権・地方参政権を持つべきか。
  キーワード
   外国人の人権、血統主義、生地主義、定住外国人の地方参政権、特別永住者、サンフランシスコ平和条約、二重国籍、国籍と市民権、無国籍問題、帰化申請、国際結婚、国籍剥奪論、ドイツ戦後処理、塩見訴訟、被爆者補償、反射的利益、孫正義、ソフトバンク、日系ブラジル人、外国人土地法、水源地域の土地購入、中国憲法における生産手段の社会主義公有制・全人民所有制・勤労大衆集団所有制・合法的私有財産、
 11月第1週  民法(総則物権)
  例題
   登記を持たない善意の転得者・登記を持つ悪意の転得者の保護は、転得者の出現が、原権利者の詐欺理由による取消の前後で変わるか
  キーワード
   民法の精神、近代私法の3原則、私的自治の意味、アマゾン裸族の所有観念、所有権と入会権、中国憲法10条(都市の土地は国家所有・農村の土地は集団所有)、対抗問題、登記の公信力、ドイツ登記制度、司法書士、抵当権と登記、公示機能、物権の効力、物権的請求権、費用負担、物権法定主義、物権変動、意思主義、形式主義、物権行為独自性説、有償性の原理、相続と登記、時効と登記、即時取得、明認方法、占有権、
 11月第2週  テーマ研究
  例題
   2050年における日本の公的扶助のあり方
  キーワード
   水際作戦、世界人権宣言、ミーンズテスト、反射的利益、捕捉率、恤救規則、ワーキングプア、法定受託事務、自治事務、新自由主義、弁明の機会、行政手続法、ハイエク、濫用、裁量、国家責任の原理、無差別平等の原理、補足性の原理、取消訴訟、朝日訴訟、堀木訴訟、
 11月第3週  民法(債権)
  例題
   無謀運転をしてきた対向車を避けようとした、巡回中のパトカー(19歳の障害を持つ警察官が脇見運転)に、通勤途上で轢かれてしまった場合、どうすれば賠償を求められるか
  キーワード
   身体障碍者、精神障碍者、知的障害者、障害者の行為能力、刑法と不法行為の責任能力、障碍者自立支援法、心神耗弱、心神喪失、監督義務者、不法行為の要件、正当防衛・緊急避難の刑民比較、立証責任の相違、過失相殺、使用者責任、国賠法、固有責任、代位責任、官僚個人責任の有無、第3者のためにする契約、医療保険、自賠責保険、労災保険、通勤災害、損益相殺、保険代位、求償権、責任保険、損害保険、社会保険、三共自動車事件、共同不法行為、不真正連帯債務、公害、事実的因果関係不要論、
 11月第4週  民法(親族相続)
  例題
   両親の猛反対にもかかわらず駆け落ちした、18歳カップルの婚姻を、親は取り消せるか。また、後で男性の方が、一時の熱狂だった・できた子が自分の子ではなかったとの理由で、自ら取り消すことはできるか。いわゆるボケ老人の場合はどうか。
  キーワード
   婚姻成立の要件、法律婚・事実婚主義、実質的・形式的婚姻意思説、婚姻の無効・取消と離婚、制限行為能力制度の趣旨、遺言する能力、能力格差対策、行為・意思・権利・責任・不法行為・刑事責任能力と法律行為、原因において自由な行為、精神障害者・知的障害者・認知症、成年被後見人・心神喪失・心神耗弱、オフェリア・芥川龍之介・高村智恵子、統合失調症・癲癇・躁うつ病・アルコール依存症、契約と不法行為、婚姻取消事由、成立・効力要件主義、親権者の同意なき婚姻も完全・有効なものとして成立(最判(小)昭30・4・5)、現存利益、有印私文書偽造、後見人の同意がある成年被後見人の行為の取消、制限行為能力者の詐術、同意権と取消権、動機の錯誤、
 12月第1週  商法(手形法)
  例題
   19歳の法学部2年生が振り出した・盗まれた・妻が勝手に降り出した手形が、この事情を知らない第3者の手に渡ってしまった場合でも、支払いを拒むことができるか。小切手・宝石の場合はどうか。
  キーワード
   善意取得、即時取得、有価証券、手形行為、物的抗弁、人的抗弁、商行為、行為能力と善意の第三者、手形の偽造、無権代理、債権譲渡、完全なる強迫、白地手形、融通手形、手形交換所、全国手形交換高、手形割引、金融、振出手形、インド・イスラームの為替手形の歴史、通行手形(関所手形)、切符手形(切手)、約束手形、為替手形、振出及び裏書の原因関係、二重無権の抗弁、通貨の所有権移転、小切手の歴史、
 12月第2週  刑法(総論)
  例題
   「世の中を悪くしているのは官僚である」と思いつめて、厚労省の官僚を襲撃してしまった中学生は牢屋に入るべきか
  キーワード
   構成要件理論、違法性、責任、違法性の意識、故意の要件、厳格故意説、制限故意説、責任説、事実の錯誤・違法性の錯誤、違法性阻却事由の錯誤、少年法、刑事未成年、非行少年、犯罪少年・触法少年・虞犯少年、児童相談所、刑の適用と執行、起訴、付添人、刑事処分、家庭裁判所、簡易送致、仮出獄、保護観察、刑事処分相当、検察官送致、逆送、刑務所、少年院、少年鑑別所、保安・保護処分、保安処分についての一元主義・二元主義の根拠、児童福祉法、児童自立支援施設、児童養護施設、国家賠償法、不法行為責任、
 12月第3週  刑法(各論)
  例題
   年金積立金を使って国民の為のリゾートを建設したところ大赤字を作ってしまった官僚は、個人責任を問われないのか
  キーワード
   確定的故意・未必の故意・認識ある過失・認識なき過失、認識説・認容説・動機説、刑法38条、事実の錯誤・違法性の錯誤、不作為犯、背任、委託関係、権限濫用説、背信説、事務処理者、二重抵当、財産上の事務、任務違背行為、冒険的取引、図利加害目的、身分上の利益、穴埋め背任、詐欺罪、委託物横領、大規模年金保養基地、匿名性、無名性、無謬性、贈収賄、公務員職権濫用罪、国賠法、制度的契約、
 12月第4週  経済学(マクロ)
  例題
   年金に貧富の格差縮小という機能を負わせるべきではないという意見は正しいか
  キーワード
   ジニ係数、所得再配分、需要の所得弾力性、ロールズ的正義、パレート最適、マクロ経済、経済予測、社会保障の経済的な意味、限界効用、ワルラスの法則、一般均衡理論、IS-LM曲線、セイの法則、サプライサイド経済学、ラッファー曲線、ケインズ・ヒックスモデル、マンデル・フレミングモデル、グレゴリーマンキュー、ニューケインジアン、日本文化の曖昧さ、パターナリズム、2階建て年金、標準報酬制度、マクロ経済スライド、全期間の平均標準報酬額、改定率、再評価率、給付乗率、物価変動率、名目手取り賃金変動率、公的年金被保険者等総数、調整率、基準年度以後改定率、
 13月第1週  経済学(財政金融)
  例題
   年金積立金が公金無駄遣い・デフレの温床になっているという意見は正しいか
  キーワード
   財政政策、一般会計と特別会計の違い、年金特別会計、労働保険特別会計、補助金、負担金、埋蔵金、天下り、財政投融資、財投債、財政法と会計法、多年度主義、金融政策、金融国家と産業国家、貨幣の役割、貨幣への需要、通貨供給量、ハイパワードマネー、金利、利子率、現在財と将来財、中央銀行の独立性、ゼロ金利政策、政府短期証券、借換債(割引短期国債借換)、国債引受の国際比較、日銀による国債引受、ハイパーインフレ、
 13月第2週  経済学(税制)
  例題
   年金がつぶれるので、消費税を10%上げるしかないという意見は正しいか
  キーワード
   国民負担率、応能負担、応益負担、累進性、逆進性、所得捕捉率、共通番号制、社会保障個人口座、Central Provident Fund、間接税、直接税、直間比率、付加価値税、前方転嫁(前転)、帰着、租税政策、徴税権、課税標準、課税対象、累積債務、社会保障給付費、国債価格、政策金利、公定歩合、直接統制、スダクフレーション、フィリップス曲線、年金債務、財政再計算、賦課方式、積立方式、段階保険料方式、 老いのコスト、自助と連帯、大競争時代、公の守備範囲、医療福祉重点型、