1. |
授業の内容(Course Description) |
|
この講義では、日本の戦国末期(16世紀末)から幕末維新期(19世紀半ば)までの約270年間における社会思想の歴史を、秩序観、倫理観、政治経済観、職業観、学問観などを中心に概観する。キリシタン禁教の思想、徳川幕府の支配政策、朱子学をはじめとする儒教思想の展開、民衆意識の高まり、国学や蘭学の発達、西洋像の変遷、対外観の展開、幕末思想の諸相などを扱う。 現代日本と徳川時代の日本とは、19世紀半ばの明治維新、20世紀半ばの敗戦、さらに1960年代以後の高度経済成長(大衆社会化)という三つの大変動によって隔てられている。このため徳川時代の社会思想に対する現代人の関心は非常にうすい。しかしそこには我々が学ぶことで、現代にも活用できる深い思索や社会分析の試みがある。そうした知的遺産の概要を紹介する。
|
2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
|
19世紀半ばに「西欧の衝撃」に直面した日本は、それまでの徳川幕藩体制を廃して明治維新を遂行し、近代的な主権国家として再生した。この変革を可能にした思想的な背景要因について、正確な理解をもつことをめざす。またこの理解を通じて、現代の日本人に欠けている知的な根無し草状況を克服し、現代世界に対処するうえで必要な思想的基礎作りをめざす。
|
3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
|
定期試験(80%)。期末試験の欠席者は0点の評価となるので注意すること。 平常点(20%)。毎回の講義への出欠状況をみて、平常点の評価に反映させる。遅刻の常習者は減点する。
|
4. |
テキスト・参考文献(Textbooks) |
|
拙著『改訂版日本政治思想史-近世を中心に』(放送大学教育振興会)を教科書として使う。
|
5. |
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
|
・指定した教科書の該当箇所を事前に読んでおくこと。試験の答案に基本概念の誤記がしばしば見られるが、これは授業をよく聴いていないだけでなく、教科書をきちんと読んでいないという不勉強を暴露するものである。 ・授業のおりに、各回の講義内容と密接に関連する研究書の章や節、また雑誌論文などを指示するので、予習復習のさいに必ず参照すること。
|
6. |
学生への要望・その他(Class Requirements) |
|
・私語しないこと。質問のための時間をもうけるので、分からない点は遠慮なく質問すること。私語をくり返す者は退室させる場合があるので注意すること。 ・この科目では、歴史上の思想家と対話して、彼らのいう所を自分の頭で理解することが大切である。現代人としての自分の価値観や見方から離れて、相手に即して相手を理解する柔軟さが必要になる。その点に留意して、講義をきいてほしい。また週に一度講義を聴いてノートをとるだけでは、十分な理解に達することは難しい。知識を真に身につけるためにも、予習復習を欠かさないようにして欲しい。
|
7. |
授業の計画(Course Syllabus) |
|
【第1回】 講義の趣旨説明 【第2回】 キリシタン禁教の思想 【第3回】 徳川幕府の支配政策と儒教 【第4回】 朱子学の概要(Ⅰ) 【第5回】 朱子学の概要(Ⅱ) 【第6回】 伊藤仁斎の儒学 【第7回】 荻生徂徠の儒学(Ⅰ) 【第8回】 荻生徂徠の儒学(Ⅱ) 【第9回】 石門心学の思想 【第10回】 経世思想の展開 【第11回】 蘭学と国学の発展 【第12回】 本居宣長の国学 【第13回】 西洋像の変遷 【第14回】 後期水戸学の国体思想 【第15回】 幕末思想の諸相
|