Web Syllabus(講義概要)

平成25年度

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英語圏の文学 I 小山 郁夫
選択  2単位
【外国語】 13-1-1410-0225-07

1. 授業の内容(Course Description)
 シェイクスピア(William Shakespeare/1564~1616)の悲劇『マクベス』の前半を読みます。
 なぜ今、400年前の作品/本を読むんでしょうか、最新の音楽やケータイ小説がいくらでも楽しめるというのに?なぜ今、悲劇なんか読むんでしょうか、こんなに暗い世相の中で?
 あるとき学生がセミナーでこういいました、「本が私の教師です」と。聞いてみると、彼女は人生の節目節目で素晴らしい本に出会い、それを読むことで色々な困難を乗り越えてきたそうです、その中にシェイクスピアは含まれていませんでしたが。昨年この授業で統計を取ってみると、100人中3分の1の学生は読書に興味があるが、3分の2は全く興味がない、と結果が出ました。しかし更に聞いてみると、その3分の2の学生は今までほとんど読書をしたことがないとのことでした。やってみなければ、それがいいかどうかなんて分らないのが当然です。ですから授業ではまず、本の読み方をレッスンしましょう、特に人間の心理の理解の仕方を中心に。「本」からどうやって心の栄養を得るか、そのやり方を身に付けて下さい。「本」はサプリと同じです。
 次はどの本を選ぶか、の問題。
 またあるとき別の学生がいいました、「家でできることは授業でやらないでください」、と。全部の理はないが、なるほどと思いました。シェイクスピアは濃密です。井上ひさしは、「シェイクスピアは海である」といいました。全ての心の栄養分が入っている、ということです。しかしそれは、エッセンシャル・オイルのように水で薄めて使う必要があります。そうすればあなたはそこに、おそらく、あなたのどんな「悩み」や「問いかけ」にも反応してくれる「美のサプリ」を見つけることでしょう。普通作品は、その作者が死ぬと、急速に読まれなくなります。「古く」なるからです。ところがシェイクスピアは、400年後の今も世界のいたるところで、上演され読まれ続けています。それは、シェイクスピアが未だに「新しい」ことの1つの証明です。「時間」は全ての裁判官です。
 ではなぜ、この暗い時代に「悲劇」なのか?
 『マクベス』は、野望に燃えた女と男の、悪夢の実現と破局の物語です。そこには、黒い炎が美しく燃え盛っています。武人マクベスは、「殺す」ことを通じて、自分で考え行動することを身につけました。もちろん、「殺す」ことによって様々な「悲しみ」の雨が地上に降り注ぎました。しかし、「喜び」が人間を強め成長させるように、「悲しみ」でしか強められない人間の深みがあります。音楽に、長調と短調があるのと同じです。悲劇は、悲しみがもたらす人間の成長を表現します。暗い時代が訪れるのは、意味があります。「時代」そのものがそれを求めている、といえるかもしれません。
 もうひとつシェイクスピアの素晴らしさは、「ことば」です。人からかけられたことばが人間を「作り」ますが、自分で作り出したことばも自分を形成します。また、何かひっかかっていることをことばにできると、心のトラウマが癒される時があります。シェイクスピアのことばは、あなたが自己を形成し癒すことばを生み出すことの、手助けになるでしょう。「それは、戦いに勝って負けたとき(When the battle’s lost and won)」、「おれにはアーメンといえなかった(I could not say,‘Amen’)」、「おれのこころはサソリでいっぱいだ(full of scorpions is my mind)」。シェイクスピアの生の声の録音は残っていませんが、シェイクスピアの生の声の響きは聞くことができます。これは「文学」がもたらす1つの奇跡です!ある人いわく「努力が奇跡を生み、奇跡が努力を生む」。それをみんなで体験しましょう。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 1.努力した受講者全員が、合格点を取ること。
 2.「コトバ」の力を実感すること。
 3.『マクベス』のことを自分の言葉で話せるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 最後の授業に行う期末小テスト
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 教科書:シェイクスピア『マクベス』(小田島雄志訳、白水Uブックス)
 参考書:1)バフチーン『フランソワラブレーの作品と中世ルネッサンスの民衆文化』(せりか書房)
     2)グレーヴィチ『中世文化のカテゴリー』(岩波書店)
     3)阿部謹也『ヨーロッパを見る視角』(岩波書店)
     4)ブルーノ『英雄的狂気』(東信堂)
     5)シュタイナー『メルヘン論』(風の薔薇)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 1.『マクベス』を1回は通読すること。
 2.毎回少しずつ読みますので、当日の講義の部分は、授業前に読んでおくこと。
 3.翻訳で通読した後、黒沢明の『蜘蛛の巣城』を、DVDで見てみること。(これは、メリックに所蔵されています。)
 4.参考書の5つの本の中から1つを選び、1つの章だけでもよいので読んでおくように。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 1.授業中の私語を控え、授業に集中してください。(これが最も大切です)
 2.遅刻はしないで、早めに着席すること。(これも同じくらい大切です)
 3.私が話しをしているときは、その前は横切らずほかの所を通ってください。(「赤い糸」が途切れてしまうから)
 4.第1回目の授業が最も大切ですから、第1回目の授業には必ず出席してください。
 5.授業には続けて出ること(テストのときだけ来るのはいけません)。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 イントロダクション
【第2回】
 シェイクスピアの生きた時代と作品
【第3回】
 『マクベス』1幕1場の、音読と解説
【第4回】
 『マクベス』1幕2場の、音読と解説
【第5回】
 『マクベス』1幕3場の、音読と解説
【第6回】
 シェイクスピアの劇場論
【第7回】
 『マクベス』1幕4場の、音読と解説
【第8回】
 『マクベス』1幕5場の、音読と解説
【第9回】
 『マクベス』1幕6場の、音読と解説
【第10回】
 『マクベス』1幕7場の、音読と解説
【第11回】
 『マクベス』2幕1場の、音読と解説
【第12回】
 『マクベス』2幕2場の、音読と解説
【第13回】
 『マクベス』2幕3場の、音読と解説
【第14回】
 『マクベス』2幕4場の、音読と解説/および、全体の振り返り
【第15回】
 まとめと期末小テスト