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授業の内容(Course Description) |
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本講義では、①「何らかの要素の集合からなり」、②「それらは、相互連関関係にあり」、③「何らかの法則により規定され」、④「ひとつのまとまりをなしている」というシステムについて検討する。システム思考は、こうしたシステム、および情報、制御から成り立っているが、ここでは、社会現象に適用し、社会システム論に焦点を合わせることにする。 社会システム論には、幾つかの立場があるが、具体的には、第一に、当該社会を構造(相対的に安定したパターン)、機能から考える構造機能主義、第二に、サイバネティックの考え方、第三に、自己組織性(主体が、環境に適応しながら自らを変えていく)のシステム、第四に、複雑系の科学(各主体が、複雑に非線形的に関連しあうという視点)について解説する。 さらに、第五に、社会を構成する要素(主体)として、経済システム(効率性を基準)、第六に、価値システム(「望ましさ」に関する規範、観念。統合の役割を担う)、第七に、文化システムについて検討を行い、かつ、全体社会システムのあり方を構想する。また、情報化に焦点を合わせ、情報の反復性、冗長性といった時代状況の中で、人々の「生活の質」が損なわれていることを明らかにする。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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①社会をシステム(相互連関関係からなる)として捉える眼を養うこと。 ②さまざまなシステム論の立場を理解して、理論的、論理的な思考を身につけるようになること。 ③実際に社会を構成する要素(経済システムなど)について、理解を深めるようになること。 ④「生活の質」(クオリティ・オブ・ライフ)の考え方を理解し、情報化社会のマイナスの側面について、考える機会とすること。
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3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
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成績評価は、出席点(20%)と試験(80%)による。試験は、配布資料、ノートを持ち込み可とする。成績評価においては、①授業の内容を如何に理解しているか、②それにより如何に社会現象、社会システムについての理解を深めているか、といった点について評価する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキストは、特に指定しない。授業中、随時、参考文献を紹介し、かつ、プリントを配布する。
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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最初の授業において、授業内容、授業計画を示し、文献も紹介する。それにより、授業に出席し、また、授業後、内容を復習して欲しい。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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社会は、さまざまな要素(主体)の相互連関関係から成り立っている。システム思考を身につけ、社会現象に適用し、社会をみる眼を養って欲しい。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 (イントロダクション) 授業の見取り図を描き、全体の授業のイメージを提示する。また、参考文献を紹介することによって、授業への取り組みが容易になるようにする。 【第2回】 (システムを見る眼Ⅰ ) インプット、アウトプット、プロセス、構造、機能などの解説を行う。 【第3回】 (システムを見る眼Ⅱ) さらに、システム、サブシステム、制御などの解説を行う。 【第4回】 (情報概念) 情報概念は、さまざまに使用されているが、ここでは、「意味をもった記号の集合」という立場を採用する。 【第5回】 (構造機能主義Ⅰ) 社会を構造(相対的に安定したパターンとしての構造。例、役割、集合体、価値、規範)、機能(システムの作用)として捉える構造機能主義の立場について解説する。 【第6回】 (構造機能主義Ⅱ) さらに、社会的資源の配分、構造変動(社会変動)などについて規定して、構造機能主義の動態化の可能性についても言及する。 【第7回】 (サイバネティックス) 通信と制御の科学としてのサイバネティックスの考え方を示す。 【第8回】 (自己組織性) 主体が環境に適応しながら、自らを変革していく、という自己組織性の考え方について解説する。 【第9回】 (複雑系の科学) 各主体が、複雑に関連しあいながら、新たな「質」を生むという複雑系の科学の立場を示す。 【第10回】 (経済システム) 経済システムを自動制御のシステムとして捉え、さらに、現代市場社会の長所と短所について言及する。 【第11回】 (価値システム) 価値の多様化、相対化、その規定力の弱体化という時代状況の中で、将来の価値の方向性を考える。 【第12回】 (文化システム) 文化の定義の多様性を明らかにし、生活様式の体系としての文化、当該社会を成り立たせるコード(約束事)としての文化などの視点から、現代的状況を把握する。 【第13回】 (全体システム) 経済システム、政治システム、価値システム、文化システムなどからなる全体社会システムのあり様を分析対象とする。 【第14回】 (情報化社会と「生活の質」) 情報概念を踏まえ、情報化社会の諸相を示し、かつ、情報が冗長になり、反復すると人々の「生活の質」が損なわれることを明らかにする。 【第15回】 (まとめ) 以上、システム思考、さまざまなシステムをめぐる論理、全体システムの下位システムについて、総括する。
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