Web Syllabus(講義概要)

平成26年度

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東洋史特殊講義2C- I 柿沼 陽平
選択必修  2単位
【史】 14-1-1340-3482-08

1. 授業の内容(Course Description)

 本講義は、中国古代史に関するものである。
 昨年2013年度の講義では、前期に殷代~漢代の概説をおこない、後期に三国時代(とくに劉備中心)の検討をおこなった。本年度の本講義では、前期にとくに三国時代(とくに諸葛亮孔明と司馬懿仲達)の検討を行なう予定である。
 三国時代とは、いわゆる『三国志』の時代のことである。そのおおまかな内容にかんしては、漫画の横山光輝『三国志』、小説の吉川英治『三国志』、映画『レッドクリフ』、ドラマ『三国』・『三国演義』などをつうじて知っている学生も多いのではないだろうか。本講義を受講予定の学生は、できればこれらを授業前にみておいてもらいたい。
 では、ほんとうの三国時代とはいったいどのようなものだったのか。じつは上記の漫画・小説・映画・ドラマなどはもっぱら後世の創作にもとづいており、必ずしも史実とみなせない点がおおく含まれている。しかし、大学における学問のひとつとして『三国志』の世界を研究するばあいには、当然そのような創作をそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。三国時代にかんする史料を厳密に読解し、民間伝承や出土文字史料、あるいは考古遺物の検討をもふまえたうえで、改めてじっくりと『三国志』の世界を読み解いていく必要がある。そこで本講義では、とりあえず諸葛亮孔明という人物を主人公にしつつ、最新の歴史学的知見を駆使しながら、『三国志』の時代背景を読み解いてゆきたい。このような授業をつうじて皆さんに、『三国志』の内容と魅力を理解してもらうとともに、大学での中国古代史の歴史学的研究方法を学習してもらいたい。
 なお本講義を受講するにあたり、学生諸君が事前に『三国志』にかんする詳細な知識をもっておく必要はない。授業ではとにかく平易な日本語による解説を心掛けるつもりである。ただし上述の漫画・小説は読みやすいものであり、どちらも一読の価値がある。そしてそれらを読んでおいた方が、もちろん授業の内容をはるかに簡単かつ正確に理解できることであろう。

2.
授業の到達目標(Course Objectives)

 ・中国古代史の概略を理解する。
 ・中国史の基本的な学習方法を学ぶ(字書・辞書・事典の引き方、論文の読み方、卒論の書き方などを含む)。
 ・最新の三国志研究の動向を把握する。
 ・魏晋南北朝時代の時代的特質を理解する。

3.
成績評価方法(Grading Policy)

 ・平常点50%(出席率、授業中の態度等)。
 ・試験50%(授業中に説明する基本的用語について、簡単な穴埋め問題を課す)。

4.
テキスト・参考文献(Textbooks)

 【参考文献】
  陳寿(裴松之注、井波律子訳)『正史三国志5』(筑摩書房、1993年)※メリックの2階指定図書(R/柿沼/1-14日)です。

5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)

 授業で説明した内容の理解に努める。授業中に紹介した論文・書籍を適宜読む。

6.
学生への要望・その他(Class Requirements)

 私語厳禁。まじめな学生を歓迎します。

7.
授業の計画(Course Syllabus)

【第1回】
 オリエンテーション(本講義の目的と概要)
 本講義の目的と概要について説明する。
【第2回】
 中国古代史の学習方法
 中国古代史の学習方法を解説する。中国古代史に関する漫画・小説・ドラマ・映画等々を紹介し、さらに簡単な研究書・中級の研究書、辞書・字書・事典の選び方、留学の必要性の有無や方法などを概説する。
【第3回】
 『三国志』の学習方法
 『三国志』の歴史学的な研究手法を学習する。漫画や小説に基づいて『三国志』を語る素人的な発想と異なり、じっさいに大学という場において『三国志』を研究する意義・学習方法・研究動向などがいったいどのようなものなのかを簡単に説明する。
【第4回】
 諸葛亮の出生
 三国時代の時代背景および、諸葛亮の出生を説明する。
【第5回】
 三顧の礼
 劉備によって諸葛亮が登用された。その場面を史料に即して検討する。
【第6回】
 赤壁の戦い
 史上有名な赤壁の戦いがじっさいにはどのような戦いだったのかを史料に即して検討する。
【第7回】
 蜀漢成立1
 劉備と諸葛亮が蜀漢を建国したときの政治状況を概説する。
【第8回】
 蜀漢成立2
 劉備と諸葛亮が蜀漢を建国したときの政治状況を概説する。また劉備がなくなったあと、諸葛亮がいったいどのようにして蜀漢を立て直そうとしたのかも検討する。
【第9回】
 諸葛亮の南征
 劉備の死後、諸葛亮は蜀漢よりも南にひろがる「南蛮西南夷」の地域に出陣する。これを「南征」という。伝説によると、その矛先は雲南をこえて、遠くベトナムやインドにまで達したともいう。漫画や小説では、そのときに孟獲という人物が大暴れをしたことになっている。では南蛮西南夷社会のほんとうの姿とはどのようなものだったのか。この点を史料にそくして厳密に検討する。
【第10回】
 諸葛亮の北伐1
 南征を終えた諸葛亮はいよいよ北方の曹魏政権をほろぼすために出陣する。この戦いを「北伐」という。では北伐とは具体的にどのような戦争だったのか。実地調査をふまえ、最新の歴史学的知見をもちいながら、「北伐」の実態を解明する。
【第11回】
 諸葛亮の北伐2
 南征を終えた諸葛亮はいよいよ北方の曹魏政権をほろぼすために出陣する。この戦いを「北伐」という。では北伐とは具体的にどのような戦争だったのか。実地調査をふまえ、最新の歴史学的知見をもちいながら、「北伐」の実態を解明する。
【第12回】
 蜀漢滅亡
 諸葛亮の死後数十年たち、いよいよ蜀漢が滅ぼされる。いかに。この点を詳細に検討する。
【第13回】
 諸葛亮の伝説
 諸葛亮の死後、諸葛亮に関してさまざまな伝承・伝説がうまれた。われわれが現在漫画や小説でみる諸葛亮像はいったいいつどのように生み出されたのか。そのような伝承・伝説にはいったいどのようなヴァリエーションがあるのか。この点を検討する。
【第14回】
 蜀漢の経済構造
 以上の講義をつうじて蜀漢の歴史を概観した。そこでこの回では最後に、人口統計などをもちいて、蜀漢の経済構造・社会構造を検討する。要するに蜀漢とはいったいどのような社会であったのか。漫画や小説でいわれるように、劉備や諸葛亮はほんとうに民のことを第一にかんがえる仁君・天才軍師であったのか。この点を明らかにする。
【第15回】
 まとめと試験