Web Syllabus(講義概要)

平成26年度

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行動規範論 II 宇多 浩
【Ⅱ】  2単位
【Ⅱ 人の心と思想を学ぶ】 14-1-1501-0738-04

1. 授業の内容(Course Description)

 行動規範論Ⅱでは、前期に習得した倫理学説を踏まえつつ、それ以外の学説も紹介しながら、現代社会における倫理的な諸問題を考察していきます。とりわけ講義では、格差・貧困・差別・環境問題などの現代的なトピックに対して、さまざまな倫理学的枠組みからアプローチしていく予定です。

2.
授業の到達目標(Course Objectives)

 ・現代社会における倫理的問題の所在について説明できる。
 ・倫理学的問題を考察する際に、自己の意見の根拠を明示できるとともに、対立する意見や根拠についても適切に評価することができる。

3.
成績評価方法(Grading Policy)

 ・期末試験(約60%)とレポート(約40%)の2つによって総合的に評価する。
 ・試験は資料等の持ち込みを不可とする。
 ・評価は厳正に行うため、普段から授業に出席し、授業内容を理解していることが前提となる。出席していても、授業の内容を理解していなければ単位の取得は困難であるので留意されたい。

4.
テキスト・参考文献(Textbooks)

 教 科 書:特になし
 参考文献:レイチェルズ『倫理学に答えはあるか』(世界思想社)
      シンガー『実践の倫理』(昭和堂)
      ネーゲル『コウモリであるとはどのようなことか』(勁草書房)
      その他の参考文献は、適宜、授業中に指示します。

5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)

 ・授業の内容に対応する参考文献の該当箇所を事前に読んでから、授業に臨むこと。
 ・レポートを作成するまでに、関連文献を必ず一冊以上読み、テーマの基本的論点を整理しておくこと。

6.
学生への要望・その他(Class Requirements)

 ある一つの問題に対して倫理学的に考察するというとき、ただ自分の考えを述べればよいと勘違いされている方がおられます。一つの問題に対して倫理学的に考えるとは、自己の道徳的判断(~は正しい・正しくない)に対して、その根拠を反省的・自覚的に問いかけ、さらに自分とは異なる主張に対しても、その根拠にまで遡って、双方の判断の妥当性を客観的に吟味する能力が必要とされます。このような思考を経なければ、一つの問題に対して、より広い視野でもって考察することはできません。このような倫理学的思考に関心のある方の受講を希望します。

7.
授業の計画(Course Syllabus)

【第1回】
 講義の概要
【第2回】
 自由と平等(1)現代における富の不平等な分配の現状を見ていく。
【第3回】
 自由と平等(2)「富の公平な分配はいかにあるべきか」という問題をいくつかの立場から検討する。
【第4回】
 優遇政策の問題 ― 差別と優遇政策に関する倫理的問題を検討する。
【第5回】
 貧困と海外援助(1)世界的な貧困問題の現状を示し、その背景を考察する。
【第6回】
 貧困と海外援助(2)世界的な貧困の問題について、「救命ボートの倫理」や近親者優先倫理の立場から検討する。
【第7回】
 貧困と海外援助(3)世界的な貧困の問題について、シンガーの功利主義やグローバル正義論の立場からみていく。
【第8回】
 動物の解放(1)シンガーの議論に即しながら、動物実験における倫理的問題を考察する。
【第9回】
 動物の解放(2)シンガーの議論に即しながら、食肉(大量生産方式の食肉加工工場)における倫理的問題を考察する。
【第10回】
 動物の解放(3)菜食主義を支持するさまざまな議論を見ていく。
【第11回】
 環境と倫理(1)地球環境問題の現状を理解するとともに、自由主義の限界について見ていく。
【第12回】
 環境と倫理(2)シンガーの議論に即しながら、「先進国の人々は環境問題に対していかなる責任をもつのか」という問題を考察する。
【第13回】
 環境と倫理(3)世代間倫理という概念について考察し、未来世代の人々に対する責任の問題を考察する。
【第14回】
 環境と倫理(4)ハーマン・デイリーの議論を参照しながら、持続可能性な社会とはいかなるものか、について考察する。
【第15回】
 講義のまとめ