Web Syllabus(講義概要)

平成26年度

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租税法 II 古市 将人
選択  2単位
【観光経営】 14-1-1110-1939-24A

1. 授業の内容(Course Description)

 ある人が特定の規則に従うのはなぜだろうか。例えば、普段、人が青信号を確認しながら横断歩道を渡っているのはなぜだろうか。法律があるからだろうか。そうかもしれない。しかし、おそらく多くの人々は道路交通法を読んでいないはずだ。また、事故の可能性、教育の重要性など、無数の理由を思いつくであろう。このように自分の生活を振り返ってみれば、法と自分の行動には不思議な関係が成立していることに気がつかないだろうか。
 その上で、「なぜ、私たちは政府に税金を支払うのだろうか」という質問を考えてみてほしい。この疑問に私たちはどのように答えれば良いのだろうか。この疑問に対して、憲法に規定されている「納税の義務」を持ち出すのが一番手っ取り早い答え方であろう。または、政府が供給する公共サービスの財源調達のためであると、説明する人もいるかもしれない。実際、私たちが日々利用する道路・公園・保育園・小中学校・介護施設は、国や地方自治体が建設し整備しており、その財源は租税によって調達される。
 しかし、よくよく考えてみると私たちは税金を支払った見返りとして特定の政府のサービスを受け取ってはいない。個別の公共サービスを利用するたびに、税金を支払うことはない。つまり、お店では商品とお金が一対一の対応関係をもつが、納税額と納税者の受け取る公共サービス量は一対一の対応関係をもっていないのである。
 この税と公共サービスの関係を出発点として税制を理解するために必要な基本的な制度・理論・歴史を、本講義では扱っていく。特に本講義では、日本の税制を租税の理論(租税論)の観点から理解することを一つの目標とする。実定税法の諸規定や税制改革の動向は租税論の成果を基礎としている場合が多く、日本の税法を理解するのに租税論の学習は必要不可欠である。もちろん「理論」と「現実」との間には大きな乖離があり、理論のみならず税制史の流れについても触れていく。
 本講義では私たちの生活に密接に関係する地方政府の税金を主に扱う。

2.
授業の到達目標(Course Objectives)

 国や地方自治体が供給する公共サービスは私たちの生活に大きな影響を与え続けている。その公共サービスの財源である。租税の理論・制度・歴史について受講生に一定の知識をもってもらうことで、税制をめぐる議論を複眼的な視点で理解できるようになることが、本講義の目標である。具体的には以下の点が本講義の到達目標である。
 (1)地方税を評価するための考えを理解し、それを説明できる。
 (2)付加価値税の仕組みを理解し、それを説明できる。
 (3)地方消費税の意義を理解し、それを説明できる。

3.
成績評価方法(Grading Policy)

 基本的に、15回目の講義で実施する授業内試験の成績で評価する。
 ・加点レポートの提出(最大25点)。このレポートの提出は任意である。未提出であっても減点はされない。
 成績評価・試験方法に関する詳細は第1回の授業時に説明するので、履修を考えている方は、可能な限り出席してほしい。

4.
テキスト・参考文献(Textbooks)

 特に指定はしない。毎回の講義において、講義ノート(キーワード等を空欄にしている)を配布する。講義に関係する基本的な参考文献として、以下の文献を挙げておく。適宜参考文献は紹介する。
 参考文献
 ・宇波弘貴[2013]『図説 日本の税制 平成25年度版』財経詳報社。
 ・神野直彦[2013]『税金 常識のウソ』文藝春秋。
 ・諸富徹[2013]『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』新潮社。

5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)

 取り上げるトピックは豊富なので、配布するプリント・資料を活用して積極的に復習をおこなってほしい。税制度の論理と歴史的な流れを把握して欲しい。

6.
学生への要望・その他(Class Requirements)

 予備知識ゼロの学生にも理解できるように講義する予定である。ただし、租税法Ⅰを履修済みの学生はより効率よく学習することができるだろう。そのため、可能ならば租税法Ⅰと併せて履修することが望ましい。
 授業に出席して私語をせずに勉強する学生の履修を希望する。

7.
授業の計画(Course Syllabus)

【第1回】
 イントロダクション:授業のガイダンスと基本用語について
【第2回】
 租税法Ⅰの復習
【第3回】
 租税論の基本用語について
【第4回】
 日本の地方税体系と税源配分論(1)
【第5回】
 日本の地方税体系と税源配分論(2)
【第6回】
 地方所得税(1):住民税の基本的な仕組み
【第7回】
 地方所得税(2):控除か手当か
【第8回】
 消費税の理論とその仕組み(1)
【第9回】
 消費税の理論とその仕組み(2)
【第10回】
 地方消費税の理論とその仕組み(1)
【第11回】
 地方消費税の理論とその仕組み(2)
【第12回】
 これまでの講義の復習・補足
【第13回】
 環境税の理論・制度・歴史
【第14回】
 地方自治体の独自課税と地方環境税 
【第15回】
 国際課税とグローバル・タックス
 ※ 進度などの関係で、一部変更する場合がある。