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授業目標 |
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植物を含めた生物多様性(biodiversity)が多くの医薬品創出の源となっている現実をふまえ、植物の分類法、植物の分布と生態および植物に含まれる化学成分に関する基本的知識を身につけるとともに、医薬品の創製プロセス(創薬といいます)および医薬品の基本的原料(シードといいます)はどこに求められるのかを学ぶことによって、広く遺伝資源(genetic resource)に対する重要性を理解し、生物多様性をはぐくむ地球環境の保全がいかに大切であるかを理解することを目的とします。
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2. |
授業概要 |
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地球上には25万種以上の高等植物が存在するといわれています。有史以来、人類は様々な形で植物資源を利用してきましたが、人類が病気の治療を目的として用いてきたものが薬用植物です。四大文明発生地で豊かな植物資源に恵まれた中国・インドでは病気の治療に植物資源が積極的に活用され、それぞれ独自の伝統医学が発達し、現在なお多種類の植物を治療薬として用いています。世界各地には同様の伝統医学が残されており、それぞれの地域の植物相の特色を反映した植物が薬物として活用されています。伝統医学は近代西洋医学に駆逐されるように衰退の一途をたどり、それとともに膨大な天然薬物に関する知識も失われつつありますが、現在使われている医薬品の少なくとも4分の1は高等植物成分とその派生品であるといわれていますように、依然として植物資源は新薬開発においてかけがえのない存在です。近年、医学の発達とともに多様な疾病に対する治療薬の開発が望まれるようになり、薬用植物のみならず広く植物資源が新たなシード源として注目されるようになりました。しかしながら、その道は決して平坦ではなく、様々な問題点を抱えています。本科目ではこのような状況を念頭において現在の薬用植物学のトピックを中心に講義を進めます。
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3. |
準備学習(授業時間外の学習) |
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本授業は、次に示しますように、薬用植物に関わる複数の専門分野をカバーします。 1.薬用植物はどのように識別するか → 植物形態分類学、系統分類学 2.薬用植物はどこにあるか → 植物地理学、植物生態学 3.代表的な薬用植物の成分 → 天然物化学、生薬学 4.植物成分から薬を創るプロセス → 創薬科学 5.薬のシードを天然物から探索する → バイオプロスペクティング、民族植物学 以上に関連する授業科目はありませんので、本講義を正しく理解するには事前の準備学習が必要となります。このために分野ごとの参考書を集めるのは大変ですが、WEB上にオンラインテキストを用意してありますので、その必要はありません。まず、トップページを開き、各メニューの中から「薬用植物学・電子テキスト」を選びクリックしますと、オンラインテキストの索引が出てきます。その中で本講義に関連する項目は次の通りです。各項目をクリックし学習してください。また、iPhone、iPadなどの携帯端末でも閲覧が可能です。 ホームページアドレス:http://www2.odn.ne.jp/~had26900/index.htm 植物の分類序論 植物の分類と名前について 植物種の記載について 植物の外部形態で留意すべきこと 植物形態分類学の基礎 葉の形態 花の形態 果実、種子の形態 植物の系統分類 生物多様性と遺伝資源 植物の成分概説 一次代謝物と二次代謝物、二次代謝物の特性による分類 アルカロイド、強心配糖体 薬用植物から医薬品の創製 医薬品開発プロセス、先導化合物としての植物資源 バイオプロスペクティングについて 民族植物学について 喘息の特効薬エフェドリンは漢方薬成分 魔女の秘薬ジギタリスは心臓病の妙薬 高等植物起源医薬品:ニチニチソウは抗がん薬原料である
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4. |
授業計画 |
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本科目は5回の集中講義(1回で3コマ)で、次のように授業を進めます。 1.植物形態分類学の基礎 1-1.薬用植物とは何か、植物の名前と学名、植物種の記載と分類 1-2.葉の形態と葉序、花の形態と花序・性、花式 1-3.果実の分類と形態、種子の形態 2.植物系統分類、分布と生態、生物多様性・遺伝資源1 2-4.植物の系統分類と進化・分化 2-5.植物の分布と植物相・植生、植生遷移 2-6.生物多様性の定義と日本・世界の生物多様性の現状 3.生物多様性・遺伝資源2、植物成分概説1 3-7.遺伝資源とは何か(コムギの発生とバナナの分化) 3-8.薬用植物の成分:一次代謝物と二次代謝物、アルカロイド 3-9.アルカロイド:ケシ(アヘン)、アヘンの製法 4.植物成分概説2、医薬品創製とシードの探索 4-10.強心配糖体 4-11.化学分類学、医薬品創製プロセス、重要なる医薬原料としての植物成分 4-12.天然界から医薬品シードの探索:バイオプロスペクティングと民族植物学 5.民族植物学、植物と日本文化 5-13.民族植物学の歴史的成果と民族植物学の最前線(学術調査紹介) 5-14.植物と日本文化1:多様な品種の創出、独特の栽培法の確立 5-15.植物と日本文化2:朝鮮人参栽培化にみる我が国先人の創意工夫
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5. |
成績評価の方法、基準 |
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レポート(小テスト付き)により評価します。したがって、追再試験は行いません。課題は最後の授業の終了時にお渡しします。授業の欠席が多い場合、レポートの受付を拒否することがありますので、留意してください。
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6. |
使用テキスト及び使用教材 |
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教科書は使用しませんが、必要な資料は全てプリントとして配布します。
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7. |
その他 |
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授業はプロジェクターを用いてプレゼンテーション方式で行います。
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