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授業目標 |
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ナノテク(ナノメータないしは百万分の一ミリメートル精度の構造物を作る技術)の発達は、我々を、否応なしに、原子尺度の世界に導きつつあります。ところがこの世界では、巨視的な集団平均値のみを指標とする(古典力学的な)従来の取扱は通用しなくなります。これまで雑音として無視されてきた微妙な力や作用が主役に躍り出てきます。これらを排除するのではなく、積極的に活用できないでしょうか。そのためには、量子力学にまで遡って考える必要があります。ITの世界でそれを考えるのが量子情報科学です。数式による表現を学ぶことと同時に、図式やアニメーションによる、根底にある基本概念の直感的な理解を目標とします。
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2. |
授業概要 |
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本講義では、特に、量子コンピュータ(量子計算機)と量子暗号を中心として、電磁気理論、電磁波の偏向、電磁波の量子化、物質の量子論、粒子と波動の二重性、状態の重ね合せと干渉、量子相関、エンタングルメント、不確定性、量子計算の原理とアルゴリズム、量子暗号技術等につき理解を深めます。
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3. |
準備学習(授業時間外の学習) |
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本講義は量子情報科学についての入門コースであり、学部レベルの線形代数の知識を持っていることが望まれます。量子力学、量子情報通信技術、電磁波工学、光情報工学などと関連しますが、これらについての予備知識が無くとも理解できるように講義を行います。 講義に出席することが基本です。各自の興味、背景、能力等に応じて、LMSによりビデオ視聴や資料のダウンロードをして、練習問題、提示する参考書、インターネット等も活用し、自主的な研究・学習等を進め、量子の世界を自分のものにして行きましょう。
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4. |
授業計画 |
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(1) ナノワールドと量子論の必要性、波動関数、粒子・波動の二重性、不確定性原理 (2) ナノデバイスの固体物性 (3) ナノデバイスのエネルギーバンド構造 (4) 電磁現象のマクスウェル方程式 (5) 電磁波の伝搬と波動方程式 (6) 電磁場の量子化と演算子による表現 (7) 量子状態の遷移、ナノ物質による光の吸収と放出 (8) 量子状態の重ね合せ、干渉、観測と波束の収縮 (9) 量子相関、量子エンタングルメント (10) 量子状態の操作、量子ゲート (11) 量子ゲートの万能性、量子計算の原理 (12) 量子アルゴリズム、大きな数の素因数分解 (13) 量子コンピュータ・ハードウエア実現への試み (14) 量子暗号、量子通信 (15) 量子アルゴリズムの威力と量子情報科学の将来展望
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5. |
成績評価の方法、基準 |
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試験結果を基本とし、レポート等を参考にして評価します。
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6. |
使用テキスト及び使用教材 |
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教科書・資料: LMS;ビデオ視聴、資料ダウンロード 参考書: 1.「量子コンピューティング」 C.P.ウイリアムズ、 S.H.クリアウオータ (Springer, 2000) 2.「ファインマン計算機科学」 A.ヘイ、R.アレン編 (岩波, 1999) 3.「光・電子集積回路の物理」松枝秀明、応用物理学選書 (裳華房, 1989) 4.「量子コンピュータ入門」 西野哲郎 (東京電機大学出版局, 1997) 5.「量子コンピューティング」 J. グルスカ (森北出版, 2003)
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7. |
その他 |
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講義を基本とし、学生の自主学習とレポート提出を求めます。
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