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授業の内容(Course Description) |
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金融商品取引法(金商法)は、企業の資金調達手段である有価証券の発行・流通、投資家の資産運用に関わる「市場の法」として、資本主義経済を支える存在であり、現代の経済・社会の動きを読み解くために、その理解が不可欠といっても過言ではない。特に、企業の粉飾決算、資産運用会社の不正や、インサイダー取引等の不公正取引など、金商法に絡む問題が、しばしばマスコミを賑わせている。また、グローバルな市場間競争を背景とした、証券取引所同士の統合、証券・金融・商品にまたがる総合的な取引所の実現に向けた動きなど、前向きな新しい話題も進展している。 他方で、金商法は、ボリュームが大きく、条文が難解と言われており、また、カバーする範囲が多方面にわたり、その理解のためには、金融のほか、会社法、民法、行政法、刑法など関連する分野の知識が一定程度必要とされる。 講義では、金商法を構成している主要な制度の成り立ち、基本的考え方を中心に解説するが、必要に応じ、条文解読のための知識や、関連する分野の関連部分についても簡単に触れていく。 前半のAの講義では、金商法の構成、証取法以来の歩み、有価証券の定義・デリバティブ取引の仕組み、投資家・金融商品取引業者等の金商法の世界に登場する主体、といった総論的部分から入り、続いて、有価証券の発行・流通に係るディスクロージャー(情報開示)制度、企業買収等に係る公開買付け(TOB)、株券等の大量保有報告制度(5%ルール)までを取り扱う。金商法の全体を理解するためには、秋期の「金融商品取引法B」と通して受講することが望ましい。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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金商法について、実用的な知識を習得し、現実の社会・経済とどのように関わっているのかを理解できる(例えば、日経新聞の記事を読んで、何が問題になっているのか、が分かる)ようにすることを目標とする。ただし、「実用的」ということばから連想される、浅い、表面的なハウツーもの的な知識の暗記ではなく、規定されている諸制度が、どのような考え方で成り立っているのか、基本に立ち帰った理解が得られることを目指す。頻繁に改正される金商法の一時的、断片的な知識を得ても、基本が理解できていなければ、動きについていくこともできず、実際の役にも立たないからである。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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期末の試験を基本とする。これに、出席状況も加味する。 また、新聞記事や雑誌の論文をもとに、レポートの提出を求める(ごく簡単なもの。数回)等により、受講生自身の努力の成果を評価に反映させることとしている(出席していないと、レポートが課されたこと自体を知らないままに過ぎてしまう等のことがあるので、要注意)。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキスト:黒沼悦郎『金融商品取引法入門』(日経文庫) なお、参考文献は、授業の中で紹介するが、比較的やさしいものとしては、近藤光男ほか『基礎から学べる金融商品取引法』(弘文堂)がある。
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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毎回の授業で、次回の説明項目を予告するので、テキストの該当箇所にひとわたり目を通しておくこと。 受講後は、出てきた条文をもう一度、手持ちの六法で確かめておくこと(金融商品取引法Aで扱う条文は、小さい六法でも収録されていることが多い)。収録されていない条文は、総務省が運営しているインターネットの「電子政府の総合窓口」の「法令データ提供システム」を検索することにより、調べることができる。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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日々のニュースや解説記事等に常に関心をもって接すること。 特にこの分野は、毎年のように法改正等があるなど、書物だけでフォローし切れないところがあるが、授業では最新の状況についても説明していくので、授業には出席すること。 【関連科目】上記のように、金融論、会社法・商法、民法、行政法、刑法・刑事訴訟法、憲法など関連する分野が多く、ある程度の知識があることが望ましいが、講義の中で必要に応じ、これらの関連分野についても、説明を加える。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】・【第2回】 金融商品取引法とはどのような法律か 【第3回】~【第5回】 金融商品取引法の適用対象――有価証券とデリバティブ取引 【第6回】・【第7回】 金融商品取引法の世界に登場する主体――投資家、金融商品取引業者など 【第8回】~【第11回】 企業内容等のディスクロージャー制度――有価証券の募集・売出し、有価証券報告書など 【第12回】~【第14回】 企業買収と金融商品取引法――公開買付制度(TOB)、大量保有報告制度(5%ルール) 【第15回】 まとめ、この時点までの法改正の動き等 《注》進行状況に応じて前後することがある。また、受講者の理解の程度により、項目のリストラもありうる。
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