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授業の内容(Course Description) |
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こんにち私たちが領土や国境の問題を語るとき、明確な国境線で区分された地図上のかたちを当然のものと考えがちだが、その地域区分や「境界」は、実は多分に恣意的に設定されたものである。 本講義ではその実例を、近代国家の「辺境」――具体的には中国と東南アジア大陸部交界部の歴史を通じて学ぶ。従来これらの地域は、「不法地帯」のような否定的イメージを持たれてきたが、その要因は19世紀以降の近代国家の建設・領土画定過程に根ざすものでもあった。 「辺境」である現地の立場から現在に至る「地域」が創りあげられてくる歴史を学ぶことで、私たちは国境や領土についてこれまでと異なる視点を獲得することだろう。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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「近代」前後で対象地域の政治や社会にどのような変化が生じたか簡潔に説明できる。 また、「地域」の区分に関わる諸要因を列挙し、そのメカニズムを説明できるようになる。 さらには現代のわれわれを取り巻く課題についても比較の上で見解を述べられることを期待したい。
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3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
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期末試験(85%)及び平常点(15%)より評価する。平常点は出席確認を兼ねた不定期のレスポンスペーパー及び出席状況より判断する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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教科書はとくに指定しない。参考資料を適宜配布し、関連文献はその都度紹介する。 主な柱となるのは以下の文献となる。 『地図がつくったタイ 国民国家誕生の歴史』トンチャイ・ウィニッチャクン(石井米雄訳)、明石書店、2003年 『境界を超えて 東アジアの周縁から』(アジア理解講座1) 中見立夫(編)、山川出版社、2002年 『雲南の歴史 アジア十字路に交錯する多民族世界』川野明正、白帝社、2013年 『世界単位論』高谷好一、京都大学学術出版会、2010年
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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準備学習・復習を前提として講義を行う。具体的には授業初回に指示するが、各回毎の参考文献の購読が主になる。講義で紹介した内容は文献の購読により各自で理解を深めておくこと。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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授業時間外の学習が前提である。各自関心を持った事項については図書館の活用等を通じ自主的な学習を期待する。 なお、講義中は私語を慎むこと。 また、資料は原則その該当時間内のみ配布のため注意すること。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 イントロダクション 【第2回】 東南アジア大陸部の地誌 【第3回】 世界単位と生態空間 【第4回】 伝統的地域単位と地理認識 【第5回】 地図と国境:近代の国境問題 【第6回】 中心と周縁:主権の行方 【第7回】 地域イメージの生成:地図と「領土」 【第8回】 地理・歴史・国家:「国土」ナショナリズム 【第9回】 ナショナリズムと地域の包摂:「周辺化」のメカニズム 【第10回】 "みえない地域"「少数民族」の世界 【第11回】 狭間の人々:「少数派」リーダーたち 【第12回】 「辺境」を眺めた人々 【第13回】 「分けられた」地域:タイ文化圏 【第14回】 「地域」の区分とは何か 【第15回】 まとめ(予定)
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