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授業の内容(Course Description) |
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経済学の理論は大きく分けると、ミクロ経済学とマクロ経済学に分かれる。マクロ経済学が、国家単位で集計して巨視的な観点から経済にアプローチするものであるのに対し、ミクロ経済学は、一人一人の消費者や労働者、それから一つ一つの企業などに注目して、経済を営む最小単位からアプローチするものである。ミクロ経済学での大きなテーマは、マーケットにおいて価格を使って取引する「市場機構」にどんな法則が働き、どんなメリットやディメリットがあるか、ということだ。 わたしたちは、毎日、経済に参加している。消費者として商品を購入したり、アルバイトや正規の労働者として商品を作ったり、運んだり、販売したりしている。これらがあまりに日常的なので、わたしたちは、それらの行動にどんな必然性や合理性があるかを振りかえって考えることはほとんどない。ミクロ経済学では、このようなわたしたちの日常の経済行動の背後にある理屈を掘り起こす。それは一言でいえば、わたしたちが商品に見出す「価値」とは何であり、それがわたしたちをいかなる行動に導くか、ということである。 ミクロ経済学を学ぶメリットはたくさんある。例えば、オークションという取引にどんな法則性が働いているかがわかったり、モノを買うときどうやったら無駄なく有利になるかを知ったり、人に何かを買ってもらうにはどうすればいいかが掴めたりすることである。したがってミクロ経済学の知識は、諸君が実業界で活躍するとき、余すところなく活かすことができるだろう。 本講義では、ミクロ経済学の基礎となるさまざまなツールを解説することにしよう。前期は、「個人の合理性」から市場機構の働きを講義したので、後期はそれを受けて、「集団の合理性」について講義する。わたしたちの経済社会は、基本的に「協力」によって成り立っている。会社で商品を生産することが、社員の「協力」によって成り立っていることはいうまでもないが、商品の売買も販売者と購買者の「協力」の結果といってもいいのだ。なぜなら、交渉によって互いの利益の一致を見て行われるからである。また、貿易も複数の国家国民の「協力」によるものだし、複数の地方自治体が共同の設備を作るときにも「協力」関係がなされる。このような「協力」の背後にどのような原理が働いているか、それを講義することにしよう。最終的に前期の講義と同じ結論にたどりつく知的興奮を味わっていただきたいと思う。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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協力ゲームのコアとシャプレー解の理解し、それらから市場原理を再理解することを到達目標とする。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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講義内のプリント演習を抜き打ちで3回実施し、出席ボーナス点を与える(計30点程度)。それに期末テスト(70~80点満点)の点数を加えて評価する。履修カードの提出、カードリーダーの出席記録、プリントの提出が不足の場合、期末テストの受験資格を与えないので注意すること。就活は欠席の理由として認めない。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキスト:小島寛之『ゼロからわかる 経済学の思考法』講談社現代新書
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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次の講義までに前回の講義の復習を60分程度行うこと。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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必ず出席して、課題をこなして、ボーナス点を獲得すること。出席回数・プリント提出枚数の少ない学生には期末テストの受験資格を与えないので、必ず初回の講義に出席してルールを確認すること。就活で欠席が多くなる学生は履修しないこと。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 講義ガイダンス~講義の内容、単位取得方法などを説明 【第2回】 社会における協力をゲームに仕立てる~協力ゲーム 【第3回】 協力ゲームを数学的に記述する 【第4回】 2人ゲーム~アダムスミスの考えを協力ゲームにしてみる 【第5回】 2人ゲームの解:シャプレー解 【第6回】 3人ゲーム〜バンドのギャラの配分問題 【第7回】 3人ゲームの解:コア 【第8回】 投票ゲーム〜多数決をゲーム化する 【第9回】 投票ゲームのコアの非存在 【第10回】 商品の売買~売買取引を協力ゲームにしてみる 【第11回】 2人売買ゲームのコア 【第12回】 4人売買ゲームの定義 【第13回】 4人売買ゲームのコアと需要・供給の原理 【第14回】 総合演習 【第15回】 講義の遅れに対する調整または最終演習
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