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授業の内容(Course Description) |
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21世紀は『環境といのちの世紀』と言われている。それは20世紀の後半に経済が多くの歪みを伴いながらかつてないほど急速な成長を遂げたことにより『環境といのち』が危うくなったことを反省している為である。現在世代の暮らしは将来世代の取り分まで使いながら、あるいは地球にその環境収容力以上の負担を掛けることによって成り立っている。 『持続可能な発展』という方向性が示されてから40年が経つが、グローバル化・肥大化・細分化する現状のもと、格差のある先進国・新興国・発展途上国の個人は全体を見通すことが出来ず、21世紀を豊かな『環境といのちの世紀』することは混迷を深めている。 例えば、福島の原発の事故も想定する範囲を限定し、全体を捉ええることをせずに我々が無定見に"安全神話"を受け入れたことが大きく作用した。このように物事を見通すことは簡単ではない。 このような現状を考えると、我々は新たな世界観・価値観を構築し21世紀の地球のあるべき姿のビジョンを描くことが重要であることが分かる。 この授業では現在の『人の暮らし』が地球にどのような負荷をかけているかを、700万年の人類の歩みの中で考える(700万年前に誕生した人類は、250万年前に石器を使えるホモとなり、20万年にホモ・サピエンスがアフリカで生まれ数万年前から世界に展開した。その時期は氷河期と間氷期を繰り返す厳しい時期であり、2万数千年前にネアンデルタール人は滅びてしまった。大型獣が少なくなる中で食糧に事欠き小さな草の実に目を向けることで農業を始めた。その結果数千年前には、文明が勃興し人口が急増した。次の人口急増は18世紀の産業革命により引き起こされ、第二次世界大戦後の経済の急成長はその増加に拍車をかけ、現在の人口は70億を超えており、21世紀には90億の人々が一つの地球でどのように暮らしていけるかは誰もが考えなければいけない問題である)。即ちゴーギャンがタヒチで問いかけたように『われわれはどこから来たのか、 われわれは何者か、 われわれはどこへ行くのか』を考える必要がある。 我々の歩みを歴史的に理解することを一つの軸として、風土・伝統・文化を異にする世界の人々が通底してもてる世界観・価値観を探り、我々が直面しているグローバルな問題に、共に立ち向かう方途を考えたい。 この授業は『地球といのち』(137億年前のビックバンから人類誕生前の地球誌・生命誌)に引き続くものであるが、この講義単独でも受講できる。 具体的なテーマとしては①現在の我々の抱える環境問題がどのように起こり、我々はそれにどのように立ち向かっているかを整理する。②人類の700万年の足跡を辿る。③農業の開始から現在の農業の問題点(遺伝子組み換え作物を含む)までを理解する。④農業は森を伐採しながら発展してきたが、それを含め我々は森にどのような負荷をかけて来たのかをまとめる。⑤森林伐採あるいは漁業など我々は生物多様性に大きな影響を与えている。その現状を分析し、将来の方途を考える。⑥現在の豊かな生活は化石燃料の大量消費に支えられているが、そのことによりもたらせる温暖化を長い地球の気候変動の中で捉え、今後の暮らしぶりを考察する。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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地球といのちの成り立ちを知ることにより、各自の地球観・生命観を持つことが出来るようにする。 環境問題について考え、その考えを授業中に発表できるようにする。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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レポートと毎回の小コメント。授業中の発言。試験は行わない。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキスト:プリント配布 準テキスト:臼田 秀明『地球・生命・人間の成り立ちから考える環境・文明試論のためのノート』 参考文献:臼田 秀明 『知は地球を救う』 1.はじめに ―豊かな生命と環境の世紀をめざして― 帝京大学文学部教育学科紀要 34:97−104(2009) http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/husuda1_34.pdf 臼田 秀明 『知は地球を救う』 2.人類の進化700万年 ―予断に捉われないことの難しさ― 帝京大学文学部教育学科紀要 34:105−144(2009) http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/husuda2_34.pdf 臼田 秀明 『知は地球を救う』 3.作物の栽培化から遺伝子組み換え作物まで ―豊かさの広汎化と豊かな多様性・地域性の併存を目指して― 帝京大学文学部教育学科紀要 35:123-180(2010) http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/kyoiku35-10.pdf 臼田 秀明 『知は地球を救う』 4.森と人 ―森と人の共生から多様な生命が集う生態系の保存をめざして― 帝京大学文学部教育学科紀要 36:79-152(2011) http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/kyoiku-36-09.pdf 臼田 秀明 『知は地球を救う』 5.我々の暮らしと地球への負荷 -目を閉じて全体を静かに心で見てみよう- 帝京大学文学部教育学科紀要 37:161-260(2012) https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/tos4-5.html#37 水俣病問題に係る懇談会. 2006. 提言書. http://www.env.go.jp/council/toshin/t26-h1813/honbun.pdf. 上記のものは帝京大学のホームページのLMSからダウンロードできます。初回の授業で説明します。
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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教科書、参考文献を読んでおくこと。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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受講者の人数により授業の形態を変える予定であるが、積極的な発言・参加を期待している。 皆さんの親の世代から、皆さんへ、我々の地球に住む全ての人が直面する環境問題について、生命・生態を考える立場からのメッセージを伝えることが目的である。知識を覚えるよりは、皆さんの"自分流の"地球・生命観を作って貰い、皆さんの子どもたちにも、他の生物と共存するような地球をつくるために行動してもらうことを願っている。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】~【第3回】 ガイダンス・なぜ今『環境といのち』なのか?急速な経済成長とその歪み、(受講者の人数 前歴(地球といのちの受講の有無)により内容・分量柔軟に対応) 【第4回】 人類の誕生・人類とチンパンジーは何が違うのか? 【第5回】 人類は道具を使う?人類の脳はどのように拡大したのか? 【第6回】 ホモ・サピエンスはいつ現れ、どのように世界に展開したのか 【第7回】 ネアンデルタール人が滅びる中、ホモ・サピエンスは壁画などを描きながら如何に生き延びたのか 【第8回】 ヒトは狩猟採集の他になぜ面倒な農業を始めたのだろうか? 【第9回】 イネはどこで栽培が始まり、日本には稲作がどのように伝わったのだろうか?日本人はどのように形成されたのだろうか 【第10回】 コロンブスの新大陸の再発見・産業革命は農業に何をもたらしたのだろう 【第11回】 第二次世界大戦後の急速な人口増加を支えたのはどのような農業だったのだろう 【第12回】 現在、我々の抱えるの農業問題(アフリカは農業のGDPに占める割合いが高いが、工業先進国から主食の穀物を輸入している)・遺伝子組み換え作物とは? 【第13回】 森の伐採と人類による生物多様性の喪失 【第14回】 (1)生物多様性の保全に対する取り組み (2)過去の気候変動と文明 【第15回】 物質・エネルギーの地球における循環・炭素の循環と温暖化。まとめ(現在) 【第1回】~【第3回】の授業の進行状況により『不都合な真実』(ビデオ鑑賞)あるいは授業計画に若干の変更を行う。
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