Web Syllabus(講義概要)

平成26年度

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東洋史概説 II 柿沼 陽平
選択  2単位
【教育】 14-1-1340-3482-23A

1. 授業の内容(Course Description)

 本講義は、中国古代史に関するものである。
 そもそも人と人が何かを交わすという意味での広義の交換(communication)は、太古よりつづく人類の営為のひとつである。人びとは言葉を取り交わし、こころをくみ交わすのであり、それによって社会というものが形成される。それゆえ、ある時代・地域の歴史を解明しようとするばあいには、そこに存在する個別具体的な交換のあり方を検討せねばならない。このような歴史の見方を「コミュニケーション・ヒストリー」とよぶ。
 では、このような観点から中国古代史をみると、一体どのような歴史像がみえてくるであろうか。本講義では、このように最先端の歴史学的手法の一つである「コミュニケーション・ヒストリー」を駆使し、新しい中国古代史像を模索する。とくに殷周時代から魏晋南北朝時代までの通史を扱い、貨幣・爵位・家族・任侠等の時代を彩る要素について検討する。ちなみに本講義では、ヴィジュアルな授業を心がけ、中国古代の遺跡や遺物の写真を数多く紹介する。また経済学・文化人類学・社会学の成果を隨時援用する。これらを通じて学生の皆さんには、中国古代通史を学習するのみならず、ものごとを多角的に考察する目も養ってもらいたい。
 なお前期はおもに殷周時代から前漢時代中期までを扱い、後期はおもに前漢後期から三国時代(いわゆる三国志の時代)までを扱う。できれば前期・後期の講義を両方受講することが望ましいが、どちらか一方のみを受講しても内容が理解できるように配慮するつもりである。

2.
授業の到達目標(Course Objectives)

 ・「コミュニケーション・ヒストリー」の基本的な考え方を理解する。
 ・中国古代史の概略を理解する。
 ・殷周時代・秦漢時代・魏晋南北朝時代それぞれの時代的特質を理解する。

3.
成績評価方法(Grading Policy)

 ・平常点30%(出席率、授業中の態度等)。
 ・試験70%(授業中に説明する基本的用語について、穴埋め問題や論述問題を課す)。

4.
テキスト・参考文献(Textbooks)

 陳寿『正史三国志』(日本語訳、筑摩書房、全八巻)

5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)

 授業で説明した内容の理解に努める。授業中に紹介した論文・書籍を適宜読む。

6.
学生への要望・その他(Class Requirements)

 私語厳禁。まじめな学生を歓迎します。

7.
授業の計画(Course Syllabus)

【第1回】
 オリエンテーション(本講義の目的と概要)
 本講義の目的と概要について説明する。またコミュニケーション・ヒストリーの基本的な考え方を説明する。
【第2回】
 中国古代の恋愛
 コミュニケーションの歴史といえば、もちろん男女などのあいだでおこる「恋愛」「結婚」を忘れるわけにはいかない。この授業ではアジアの歴史上、「恋愛」という言葉がいつ生まれたのか、「愛」とはなにか、「恋」とはなにかといった問題を史料に即して検討する。
【第3回】
 中国古代の任侠
 中国古代の人間関係・コミュニケーションのひとつとして「任侠」に注目する。「任侠」とは、いわゆる現代的なヤクザとは異なる特殊な人間関係をさす。そのありようを説明する。とくに前漢武帝さえ押さえ込むことができなかった中国最強の任侠である郭隗を例にとり、中国史の裏の世界について説明する。
【第4回】
 前漢武帝の対外遠征と諸政策①――匈奴問題
 前漢成立以来、前漢は北方の匈奴の侵攻に悩まされていた。この前漢と匈奴との対立を説明する。その上で、前漢武帝が匈奴遠征を行い、前漢最大の版図を築くに至った過程について論じる。そしてその一方で、そのような遠征を支えた当時の内政政策に言及する。
【第5回】
 前漢武帝の対外遠征と諸政策②――南越問題
 前漢成立以来、前漢は北方の匈奴の侵攻に悩まされていた。この前漢と匈奴との対立を説明する。
【第6回】
 反逆の西羌
 後漢時代は西方異民族の「西羌」に長らく悩まされてきた。西羌は後漢とは異なる経済的・政治的・家族的構造を有しており、独特のコミュニケーション・システムを構成していた。そのことについて論じる。
【第7回】~【第14回】
 『三国志』と三国時代
 小説『三国志演義』や、それを参考にした映画「レッドクリフ」は、本来後漢末より始まる三国時代を描いたものとして著名であるが、創作部分を多く含む。今回はその大まかな歴史を史料に即して説明する。
【第15回】
 まとめと試験