Web Syllabus(講義概要)

平成27年度

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演習 II 西田 令一
必修  2単位
【経済】 15-1-1120-3873-06

1. 授業の内容(Course Description)

 中国経済の成長の歩みと背景、いわば過去を追った春季を踏まえ、秋季はその現在を見つめ将来を展望します。
 今の中国には、長期の高度成長の陰でさまざまな問題やひずみが噴き出しています。中国がそれらを克服して経済を安定成長軌道に乗せ、米国を凌いで世界第1の経済大国になれるかどうかを探ってみたいと思います。
 差し迫った最大の課題は、不動産、投資・信用のバブル状況を軟着陸させられるかどうかにありましょう。技術革新を進めて高付加価値製品を生み出すなど全般的に経済を高度化していくことや、成長が一部の分野を除けば国有企業に偏している現状の改善、輸出主導から内需主導の経済への転換なども待ったなしです。
 「世界の工場」を支えた安価で豊富な労働力も、すでに始まった人件費の上昇と、いずれ急速に進む少子高齢化で先細りしてくるのは必至です。経済が減速して失業者が増大したときに、発展に不可欠な社会的安定が曲がりなりにも維持できるかも含め、一連の政治的課題を解決する能力が共産党指導部には求められています。
 現下の諸課題を総ざらいしたうえで、今後あり得る中国経済のシナリオをいくつか描ければ、と考えます。同時に、そうした中国経済に、日本企業として今後、どう対応していけばいいのか、も模索します。

2.
授業の到達目標(Course Objectives)

 中国経済の将来を確実に見通すことなど、現状では到底不可能ですし、ここでの目標とはしません。現在の実情をきちんと押さえてもらい、先行きについて、常識の範囲で幅広に捉えてもらうことを目指します。換言すれば、中国経済を的確に見据えることの難しさを認識してもらう、ということでもあります。

3.
成績評価方法(Grading Policy)

 個別のテーマを割り振り、それに関するレポートを、最後に提出してもらいます。その評価を中心に据え、出席状況や演習態度も十分に勘案して、最終判定します。

4.
テキスト・参考文献(Textbooks)

 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアシリーズ)
 『貧者を喰らう:中国格差社会からの警告』(増補新版)(阿古智子、新潮選書)

5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)

 折々に、次の演習までに事実関係を調べて報告するようにとお願いしたりするつもりです。そうした時は、しっかり準備して演習に臨むようにしてください。上記参考文献などをコピーして事前配布することもありますので、準備学習は不可欠です。

6.
学生への要望・その他(Class Requirements)

 演習ですので、受講する皆さんには、通常の授業にも増して能動的な姿勢が求められます。努めて出席するようにしてください。

7.
授業の計画(Course Syllabus)

【第1回】
 イントロダクション
【第2回】
 中国経済が米国を追い越し世界1になる日が来るか
【第3回】
 現在のバブル状況を収束させて安定成長に乗れるか
【第4回】
 技術革新進めハイエンド市場を狙えるようになるか
【第5回】
 国有企業太り民間細る「国進民退」を変えられるか
【第6回】
 人件費上昇と少子化で陰る「安価で豊富な労働力」
【第7回】
 国内消費主導型の経済への転換を阻む「格差拡大」
【第8回】
 減速経済で失業が増大すれば社会的安定に黄信号も
【第9回】
 治安維持、国防にカネかけ後回しの社会保障の充実
【第10回】
 覇権的姿勢を強めれば地域の不安定化が進む恐れも
【第11回】
 習近平氏が旗振る汚職撲滅運動は権力闘争に堕して
【第12回】
 諸課題の解決を難しくする「国家資本主義」の限界
【第13回】
 楽観、悲観、180度も違う中国経済の将来見通し
【第14回】
 生産拠点と巨大市場両にらみの日本企業の選択肢は
【第15回】
 レポート