1. |
授業の内容(Course Description) |
|
金融商品取引法(金商法)という名前は初耳という者も多いと思われるが、学べば学ぶほど、単に法律の1つの分野を勉強することに尽きない奥の深さを感じさせられる分野である。 金商法を学ぶことは、証券市場、金融、経済といった幅広い分野に目を開かれることにつながる。また、金商法の知識を伴わない会社法の学習は、上場会社という、会社中の会社ともいうべき「山」に、道半ばで登るのをやめてしまうようなもの、と言っても過言ではない。さらに、憲法、刑法、行政法などの基礎的な法分野についても、金商法のような応用分野を学ぶことにより、これまで学んだことが本当に身についているか、確認することができる。 この講義は、その重要性の割に、難解と言われてとっつきにくいイメージを持たれている金商法について、なるべく平易なことばを用いて、制度の基本的な考え方や背景にある事情を解説しようとするものである。 講義では、春期の「金融商品取引法Ⅰ/A」を履修していない者のために、まず金商法の全体像を示したのち、後半のテーマである、有価証券の流通市場の仕組み、インサイダー取引、相場操縦等の不公正取引の禁止や、業者の顧客に対する販売勧誘に関するルールなどの事項を解説する。春期の「Ⅰ/A」を履修した者にとっても、より馴染みやすく、直感的に理解しやすいテーマが多いと思われる。 レジュメ・資料を配布し、関連する法分野、条文の約束事についても触れていく、という点は、「Ⅰ/A」と同じである。 (詳しくは、「金融商品取引法Ⅰ/A」のシラバスを参照のこと)
|
2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
|
金商法について、実用的な知識を習得し、現実の社会・経済とどのように関わっているのかを理解できる(例えば、日経新聞の記事を読んで、何が問題になっているのか、が分かる)ようにすることを目標とする。ただし、「実用的」ということばから連想される、浅いハウツーもの的な知識の暗記ではなく、規定されている諸制度が、どのような考え方で成り立っているのか、基本に立ち帰った理解が得られることを目指す。頻繁に改正される金商法について、ある一時点での断片的な知識を得ても、基本が理解できていなければ、その後の動きについていくこともできず、実際の役にも立たないからである。
|
3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
|
期末の試験を基本とする。これに、出席状況も加味する。 また、新聞記事や雑誌の論文をもとに、レポートの提出を求める(ごく簡単なもの。数回)等により、受講生自身の努力の成果を評価に反映させることとしている(出席していないと、レポートが課されたこと自体を知らないままに過ぎてしまう等のことがあるので、要注意)。
|
4. |
テキスト・参考文献(Textbooks) |
|
テキスト:黒沼悦郎『金融商品取引法入門』(日経文庫) テキストの記述では簡潔すぎてわかりにくいと感じられる場合には、サブテキストとして、より噛み砕いて説明している次の書を奨める。 近藤光男ほか『基礎から学べる金融商品取引法』(弘文堂) その他、参考文献については、授業の中で紹介する。
|
5. |
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
|
テキストの順序に沿って進んでいく。毎回の授業でも、次の説明項目を予告するので、テキストの該当箇所にひとわたり目を通しておくことが望ましい。 受講後は、出てきた条文をもう一度、手持ちの六法で確かめておくこと。「金融商品取引法Ⅱ/B」に出てくる条文は、小さな六法では、従来よりは収録範囲が拡大しているものの、「Ⅰ/A」に比べると省略されているものが多いので、総務省が運営しているインターネットの「電子政府の総合窓口」の「法令データ提供システム」で検索することを奨める。
|
6. |
学生への要望・その他(Class Requirements) |
|
日々のニュースや解説記事等に常に関心をもって接すること。 特にこの分野は、毎年のように法改正等があるなど、書物だけでフォローしきれないところがあるが、授業では最新の状況についても説明していくので、授業には出席すること。 【関連科目】金融論、会社法・商法、民法、行政法、刑法・刑事訴訟法、憲法など関連する分野が多く、ある程度の知識があることが望ましいが、講義の中で必要に応じ、これらの関連分野についても、説明を加える。
|
7. |
授業の計画(Course Syllabus) |
|
【第1回】 イントロダクション――金商法とはどのような法律か 【第1回】~【第3回】 金融商品取引市場――取引の仕組み、取引所の組織・機能など 【第4回】~【第6回】 不公正取引の禁止――インサイダー取引、相場操縦など 【第7回】~【第9回】 金融商品の販売・勧誘のルール――金融商品取引業者等の行為規制 【第10回】~【第13回】 金融商品取引業の規制――業の区分と登録制、登録金融機関、周辺の業(金融商品仲介業、格付会社)など 【第14回】・【第15回】 金融商品取引法のエンフォースメント――金融行政機構、課徴金制度、自主規制機関、金融ADRなど 全体のまとめ 《注》進行状況に応じて前後することがある。また、受講者の理解の程度により、項目のリストラもありうる。
|