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授業の内容(Course Description) |
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中央教育審議会答申「道徳に係る教育課程の改善等について」(2014年10月21日)によって、道徳の教科化はほぼ既定路線となった。だが、「なぜ今、教科化しなければならないのか」「そもそもどうやって道徳を教えるのか(教えられるものなのか)」といった点、すなわちその不可能性や実施の副作用についての建設的議論の深まりはなく、只々「道徳教育は必要だ」という「使命感」ばかりが先行している。「昔はよかった」「今は、日本人の規範意識が低下した」などという言明は何の歴史的根拠ももたないにもかかわらず、また、的確な社会状況への視点を欠いた単なる体感不安の表われでしかないにもかかわらず、である。 一方、学校現場では、教育方法・技術の面に問題意識が特化した結果、ニセ科学(「水からの伝言」)や偽史(「江戸しぐさ」)の介入による道徳教育の無節操な実施を許しているという問題が生じている。 このような現状を少しでも相対化できるよう、本演習では道徳教育についての専門的な研究蓄積(著書・論文)に学んでいく。日本における道徳教育の史的展開やそこで浮き彫りとなってきた、理論的・実践的課題への理解を通し、学生各自が「道徳教育を見る眼」を鍛えることをねらいとしたい。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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①「社会のなかでの教育」という視点から、日本の学校教育・道徳教育のもつ課題を捉えることができる。 ②専門分野の研究成果(著書や論文)の内容を的確に読み取ることできる。加えて、その論旨を他者にわかりやすく口頭で説明できる(レビューする力がある)。 ③先行研究の到達点と課題を理解し、それとの関連が明確な、自身独自の課題意識、分析視点をもつ。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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授業参加度(授業準備、積極的な発言など)、提出物(リアクション・ペーパー、レジュメ)、および報告・プレゼンのパフォーマンスに基づいて、総合的に評価する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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本演習は、道徳教育に関する書籍・論文・雑誌記事など検討資料を教員が適宜選択し、受講生の報告をふまえながらその内容を検討する、読書会形式で進めていく。資料配布の準備は基本的に担当教員が行うが、ウェブ上で閲覧可能なものについては、各自ダウンロード―プリント・アウトしてもらう。
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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受講生には、担当資料についてそれぞれレジュメを作成し、発表してもらう。自身の担当箇所についてはもちろん、それ以外にも積極的に「読む」作業を通した授業参加なくしては、ねらいは達成されない。予習・復習を通して構築した自分の見解を持ちよりながら、授業に参加すること。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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この授業は、「講義」ではなく「演習」である。学生の主体的な授業参加~調査・発表・討議~が中心となる。自らすすんでたくさんの関連文献を渉猟すること、充実した報告資料の作成・参加者(学生・教員)に有益な学びをもたらす綿密な発表への意識を、本演習履修者には求めたい(私の「道徳の指導法」受講経験者は、授業で配布した「参考文献リスト」を活用してほしい)。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 イントロダクション~履修上の注意、自己紹介、グループ編成~ 【第2回】 「道徳」「道徳教育」とは~辞典・事典から調べる~ 【第3回】 「道徳」教科化の背景(1)~議論の変遷を追う~ 【第4回】 「道徳」教科化の背景(2)~論文記事をよむ①特設「道徳の時間」をめぐる議論~ 【第5回】 「道徳」教科化の背景(3)~論文記事をよむ②特別教科をめぐって~ 【第6回】 中央教育審議会答申「道徳に係る教育課程の改善等について」をよむ 【第7回】 「道徳」教科化の背景(4)~補足と討議~ 【第8回】 道徳教育の歴史(1)~レジュメ作成、報告~ 【第9回】 道徳教育の歴史(2)~レジュメ作成、報告~ 【第10回】 道徳教育の歴史(3)~レジュメ作成、報告~ 【第11回】 道徳教育の歴史(4)~補足と討議~ 【第12回】 道徳教育の理論(1)~レジュメ作成、報告~ 【第13回】 道徳教育の理論(2)~レジュメ作成、報告~ 【第14回】 道徳教育の理論(3)~レジュメ作成、報告~ 【第15回】 まとめの討議 (※受講生の人数や問題関心の実態・要望に応じて、授業計画に若干の変更を加えることがある。)
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