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授業の内容(Course Description) |
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私たちの身の回りには財政に関係する事柄が溢れている。この講義概要を読んでいるあなたのことを思い返してほしい。まず、公立の幼稚園や保育園、学校に通った経験があるのではないだろうか。また、今日キャンパスに来るまで、あなたは歩道と車道が区切られ、信号や街頭の設置された道路を歩いてきたのではないだろうか。これらは、政府がお金を出して運営あるいは設置するものであり、そのお金は人々が政府に支払った税金、あるいは政府の公債発行による借金を通じて賄われるものである。このような、私たちの身の回りの公共サービスを提供し、租税の徴収、あるいは公債発行を通じてその財源調達を行うという一連の政府の活動を、財政という。 しかし近年、世界各国で財政危機が叫ばれている。ギリシャの財政破綻に端を発するユーロ危機、アメリカにおける「財政の崖」を巡る連邦議会の紛糾やデトロイトの財政破綻など、その例は枚挙に暇がない。そしてそれは日本においても例外ではない。これまでテレビのニュースや新聞記事などで、「今年度の一般会計予算が○○兆円を超えた」、「国の累積債務残高がGDPの○○%を超えた」、などと報道されているさまを目にしたことがあるだろう。実際、日本は先進国の中で群を抜いて巨額の財政赤字を抱えており、この状況は、税収が国債発行額を下回る状況が続いていることに起因しているのである。 以上のような財政状況、そして財政を通じて社会統合を行う政府の役割を分析する学問を財政学という。財政危機といわれる今日の状況がいかにして生じたのか、何が今日の財政問題の要因であるのか、そして、それが私たちの暮らす社会にどのような影響を及ぼしてきたのか。本講義「財政学I」では、財政の歴史的分析を通じて、以上のような問題を解き明かしていくことを課題とする。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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本講義の到達目標は以下の通りである。 1)今日どのような財政に関する問題があるのかを把握・説明できること。 2)今日の財政に関する問題がいかにして生まれたのかを説明できること。 3)以上に関連する財政の基本的な知識を身につけること。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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学期末試験(8割)とレポート(2割)で総合的に評価する。 成績評価や試験の詳細については初回の講義において説明するので、受講を希望される学生は可能な限り出席されたい。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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基本的には講義中に配布するレジュメに沿って講義を進める予定である。 講義内容の理解を深めるには、以下の文献が良い参考になるだろう。 ・可部哲生[2014]『図説 日本の財政 平成26年度版』東洋経済新報社。 ・片桐正俊編[2014]『財政学-転換期の日本財政 第3版』 東洋経済新報社。 ・井手英策[2012]『財政赤字の淵源-寛容な社会の条件を考える』有斐閣。 ・持田信樹[2009]『財政学』東京大学出版会。 ・神野直彦[2007]『財政学 改訂版』有斐閣。
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授業時間外の学習《準備学習》(Assignments) |
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配布するレジュメや参考文献を利用して講義毎に復習されることが望ましい。また、新聞やニュースで報道される財政に関する事項について分からないことをその都度調べることも参考となるだろう。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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・予備知識のない学生でも理解できるよう講義を進めていくので、安心して受講されたい。 ・「財政学II」の講義内容に連なるよう講義を進めていく予定なので、双方受講されることが望ましい。 ・特別な事情がない限り、必ず毎回の講義に出席すること。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 本講義の問題意識 【第2回】 今日における財政の基本的問題 【第3回】 財政の起こり(1) 【第4回】 財政の起こり(2) 【第5回】 戦争と財政:第一次世界大戦までの財政 【第6回】 大恐慌と財政のパラダイムシフト 【第7回】 第二次世界大戦から戦後にかけての財政 【第8回】 高度経済成長期における財政とその行き詰まり 【第9回】 新自由主義の台頭 【第10回】 1990年代における社会の変化と財政の関係 【第11回】 21世紀における日本財政の麻痺 【第12回】 日本と他国の財政の比較(1) 【第13回】 日本と他国の財政の比較(2) 【第14回】 今日の財政問題の要因とは? 【第15回】 総括 ※進度などの関係で、内容は変更する場合がある。
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