Web Syllabus(講義概要)

　既に刑法総論、刑法各論を履修して多少その知識があることを前提にした上で、復習を兼ねて犯罪論を体系的に講義することにより刑法の基礎知識の習得を図るとともに、あらかじめ配付するプリント等により、主として刑法総論における犯罪論を中心に刑法各論の殺人、窃盗、放火等の罪にも言及して、日常生活で生起する事件を具体的な事例形式で取り上げ、その問題点を分析、検討する。そして指名されたレポーターによる発表、全員の討論、多数決による刑責の判断等を行った上、実務的な結論の導き方を学習し、実践的な紛争解決のための法的思考能力の涵養を図る。

　①刑法に関する知識を深め、法的バランス感覚を習得して起案力・発言力等を身に付け、各種試験に対応することができる。
　②刑法総論における犯罪論の体系及び刑法各論における個別的犯罪の体系を、それぞれテキスト（下記4参照）の目次に従ってその概要を理解できるようにするほか、主として刑法総論に関して作成・配付するプリントの具体的事例に関し、日常用語、法律用語を読み書きし、かつ、問題点の分析、検討とそれに対する解答を準備した上で、数人の面前で分かりやすく発表する能力を身に付け、資格試験・入社試験等の受験対策に資する応用力を涵養する。

　定期試験（又は授業内ペーパーテスト）30％、出席状況70％の割合で総合的に評価する。
　基本的には、刑法総論中の特に犯罪論の体系順に従って、あらかじめ配付する具体的事例の設例問題について、レポーターに指名された数名の学生がレジュメを作成するなどし、その発表を通して全員で討論するという参加型授業を行うので、これに対する積極的な学習意欲（出席、発表、討論等）を高く評価した上で、さらに定期試験（又は授業内ペーパーテスト）の結果も加味し、総合的に評価する。

　テキスト（教科書）としては、五島幸雄著―『実務に即した刑法総論』（成文堂）及び五島幸雄著―『実務に即した刑法各論』（成文堂）を使用する。
　参考文献としては、刑法及び刑事実務等に興味を持てるものとして、五島幸雄著―『熱血検事駆ける！（第2版）』（法学書院）を購入しての併読を勧める。
　なお、六法全書は必携であり、『岩波基本六法』（岩波書店）、『ポケット六法』（有斐閣）のいずれかの購読を勧める。

　事前に配付する具体的事例の設例問題については、レポーターに限らず、学生全員が関係条文も含めて問題文を精読し、簡単な図面を作成するなどしてその内容を理解するとともに、学生間で討論できるように予習し、論点（争点）を整理しておく必要がある。なお、授業後の復習による知識の習得は必要不可欠である。

　①【関連科目】公務員試験等の受験志望者は、刑法総論、刑法各論の履修を前提として、この科目の履修を薦める。
　②授業は、主として現実の実務に即した具体的事例を設例問題として、犯罪の成否、刑罰、量刑等を学生自身がグループに分かれてそれぞれ研究・検討し、お互いに議論して結論を導き出していくことを内容とするから、欠席はもとより遅刻、早退せずに、可能な限り出席して授業に参加することが肝要であり、討論の場において主体的・積極的に取り組むことを切望する。また、授業出席に際し六法全書の携帯は必須である。

【第１回】
　自己紹介
　オリエンテーション（授業の進め方、刑法総論の体系的な学習方法）
【第２回】
　日本の刑事司法制度（裁判所、検察庁、警察、被告人・被疑者、弁護士）
　設例問題のプリント配付
【第３回】
　刑事事件の流れと裁判員制度
　設例問題のレポーターの決定
【第４回】
　設例問題１　構成要件該当性①―不作為犯・殺人
【第５回】
　設例問題２　構成要件該当性②―不作為犯・放火
【第６回】
　設例問題３　構成要件該当性③―因果関係・傷害致死
【第７回】
　設例問題４　構成要件該当性④―事実の錯誤・殺人
【第８回】
　設例問題５　違法性①―正当防衛・傷害致死
【第９回】
　設例問題６　違法性②―緊急避難・傷害
【第10回】
　設例問題７　責任―原因において自由な行為・傷害致死
【第11回】
　設例問題８　未遂―実行の着手・強姦
【第12回】
　設例問題９　共犯①―共犯と身分・保護責任者遺棄
【第13回】
　設例問題10　共犯②―共犯の錯誤・強盗殺人
【第14回】
　設例問題11　共犯③―共犯と未遂・強盗致傷
【第15回】
　総　括　　刑法総論(特に犯罪の成立要件）の総復習
　授業内ペーパーテスト（1時間）