Web Syllabus(講義概要)

平成28年度

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観光経済学 II 小沢 健市
選択必修  2単位
【観光経営】 16-1-1130-3752-10

1. 授業の概要(ねらい)

 今学期は国際観光の経済分析を主要なテーマに取り上げ,国際観光(人の国際間移動)をテーマに,国際経済理論に依拠しながら,国際観光を経済学的にどう分析可能かを受講生に平易に説明したい.
 国際貿易はモノの移動のみを考えがちであるが,実は国際観光,つまり人々の国家間の移動は,移動する人々が訪問する先々で滞在のために必要な財や・サービスを購入し,また土産品を購入することを意味し,それは,換言すれば,人々の移動による財・サービスの輸入を意味しているということである.したがって,かつては,国際観光は「見えざる貿易」と呼ばれていた.
 現在の我が国では,海外からの日本への訪問者がさまざまな財・サービスを購入し帰国している.正に訪問者による個人貿易であると言ってもよいであろう.国際貿易の基礎理論を平易に解説しながら,国際経済学の基礎理論を用いて国際観光を財・サービスの輸出入として説明することがこの講義の目的である.

2.
授業の到達目標

 受講生諸君に国際観光が「貿易」であると認識してもらうこと,そして国際経済学の基礎理論,すなわち,貿易がなぜ行われるかを受講生に理解してもらうこと,さらに国際経済学の基礎理論を用いて国際観光がどう分析可能かを理解してもらうこと,の3点であり,これらの理解を通じて,受講生自らが国際的なさまざまな問題を解決する能力を身につけられること.

3.
成績評価の方法および基準

 成績は,授業への参加度,期中に実施する中間試験,そして期末の試験の3点により評価するが,それらのウエイトは,授業への参加度および期中の試験が30%,期末の試験が40%として評価する.但し,授業への欠席が三分の一を超える受講生は,原則として,不合格にするので,注意すること.

4.
教科書・参考書

 テキストは特に定めないが,講義開始前に受講生にはプリントほぼ毎回配布し,それを参考に講義を進めるが,欠席者には、原則としてプリントは配布しないので注意すること.

5.
準備学修の内容

 受講生は,必ず復習をするように心がけることが大切である.復習は,講義の内容を自分なりにまとめ,受講生各自が自身の講義ノートを作成することを意味し,そのノートをもとに,講義の内容を確かめたり,試験の際に利用したりすることが可能であり,それは自身の講義内容の再確認に繋がり,さらにこの科目の内容全体の正しい理解に繋がるからである.

6.
その他履修上の注意事項

 学生諸君は,可能であれば,国際経済学や国際貿易理論といった科目を同時に受講することが望ましい.それによって国際経済学や国際貿易の理論の正しい理解が可能になるからであり,それはさらにこの科目の理解の促進に繋がるからである.

7.
各回の授業内容
【第1回】
受講に当たっての諸注意と我が国の国際観光の過去から現在までを統計によって確認する――日本の国際観光収支は長い間赤字であったが,一昨年下旬から黒字へと転じた
【第2回】
何故貿易は行われるのか――ある財・サービスが国際価格より安い国と高い国が存在するとき,価格が安い国から高い国へとその財は輸出され,輸出国の国内価格は上昇し,輸入国の国内価格は下落するといってよいか
【第3回】
貿易が行われる主たる理由――古典的な絶対優位と伝統的な比較優位の概念の平易な説明
【第4回】
比較優位は生産可能性フロンティアによって見出すことが可能――比較優位の生産可能性フロンティアを用いた計算方法
【第5回】
比較優位を導出するための計算例――貿易は,絶対優位ではなく,比較優位で行われる
【第6回】
観光における比較優位とは何を意味するか――観光にとっては比較優位のみならず,絶対優位も重要ではないか.例えば,エッフェル塔やグランドキャニオンは重要な観光資源であり,一つしか存在しない.
【第7回】
貿易には比較優位の他に貿易をする際の交易条件が必要――交易条件と貿易
【第8回】
これまでのまとめと中間試験の実施
【第9回】
比較優位再論――比較優位の理論の理解を完全にするために仮想的な問題を提示し,それをどう説明可能かを平易に解説する
【第10回】
伝統的な貿易理論から需要面に焦点をあてた新しい貿易理論――リンダーの貿易の需要理論の説明と国際観光への応用
【第11回】
貿易の新しい経済理論――規模の経済性の存在と製品差別化の説明
【第12回】
所得水準の類似性が貿易をするかしないかを決定する重要な要因である――何故か
【第13回】
多くの国々が国際観光政策として実施している戦略的観光政策の基礎理論――戦略的観光政策の意味とクールノーの複占モデルの説明
【第14回】
クールノー・モデルの国際観光政策への応用とその評価
【第15回】
この講義のまとめと試験の実施