1. |
授業の概要(ねらい) |
|
現代社会において、行政機関と「情報」は切っても切り離せない関係にある。そもそもすべての行政活動は、その目的達成のために必要な情報(行政情報)を基礎として行われており、行政はそうした情報をさまざまな手法を用いて収集している(行政調査:春学期・行政法Ⅰの講義で取り扱っている)。行政は、そうしてため込んだ情報を、文書化したり、行政目的に「利用」したり、必要に応じて私たちに「公開」したり、保存期限の過ぎた文書を「廃棄」したり、価値ある文書は公文書館などにおいて「保存」したりしている。
こうした行政機関の情報政策のあり方に、私たちは無頓着ではいられない。昨今、情報通信技術は飛躍的に進展し、多種多様かつ膨大なデータの収集・分析が可能となった(「データベース社会」とか、「ビッグデータ」という言葉を耳にしたことはないだろうか?)。そのおかげで、私たちは官民問わず、さまざまな恩恵を受けている。しかし、それは私たち一人ひとりの「生き方」にどのような影響を与えるだろうか?そこでこの授業では、まず前半でこうした行政と情報のあり方を昨今の情報技術の発展や法制度の仕組みから学んでいく。
他方で、行政の活動は、私たちにサービスを与えてくれるだけではなく、私たちの利益にダメージを負わせてくることもある。そうした場合に、私たちは泣き寝入りするしかないのだろうか?そこでこの授業の後半部分では、
行政活動により権利利益を損なわれた国民の救済をはかるための法制度を学んでいく。
また行政機関と聞いておそらく頭に浮かぶのは「厚生労働省」であるとか、「消費者庁」といった「省庁」であろう。行政機関は、そのような「組織」からなり、これら組織は、行政組織法によって定められている。この授業では、最後にこうした行政組織の法制度(公務員法や公物法も含む)について学んでいく。
なお、テキストは指定のものを使用するが、かなり簡易なものであるので授業の際は講義レジュメを配布し、適宜補っていく。
|
2. |
授業の到達目標 |
|
授業内容でも触れているが、この授業の目標は以下の3つである。
(1)行政と情報のあり方と情報技術の発展や法制度の仕組みについての理解
(2)行政活動により権利利益を損なわれた国民の救済制度についての理解
(3)行政組織の法制度についての理解
|
3. |
成績評価の方法および基準 |
|
レポート又は小テスト30%、学期末試験70%を基本とし、これに平常点(授業態度)を加味する。
なお、出席は学生の当然の義務であるので、成績評価には加味しない。
|
4. |
教科書・参考書 |
|
テキスト:自治体公法研究会編『新要点演習 行政法』(公職研、2016年4月)
参考文献①:宇賀克也『行政法概説Ⅰ(第5版)』(有斐閣、2013年)
参考文献②:櫻井敬子・橋本博之『行政法(第5版)』(弘文堂、2016年)
参考文献③:宇賀克也・交告尚史・山本隆司編『行政判例百選Ⅰ・Ⅱ(第6版)』(有斐閣、2012年)
|
5. |
準備学修の内容 |
|
予習:テキストの該当箇所を事前に読んでおくこと
復習:授業終了後に参考文献と照らしあせて復習をしておくこと
なお授業の理解度をはかるために、何度かレポート提出を命ずることがある。
|
6. |
その他履修上の注意事項 |
|
他者に迷惑をかける行為(私語、食事、教室徘徊など)はこれを厳禁とし、相応の対処をする。場合によっては、成績・単位認定において平常点としてマイナス評価を加えることがある。
|
7. |
各回の授業内容 |
|
【第1回】 |
授業計画は以下の通りであるが、諸般の事情により計画を変更する場合がある。その場合は、事前に授業中に告知をする。 行政と情報社会―情報資源管理サイクル・ビッグデータ |
【第2回】 |
行政機関による情報収集と行政機関個人情報保護法 |
【第3回】 |
民間部門の個人情報の保護・マイナンバー制度 |
【第4回】 |
行政情報の保存管理と公開 |
【第5回】 |
行政手続法 |
【第6回】 |
行政活動に対する救済 ―行政不服審査法、苦情処理、オンブズマン― |
【第7回】 |
行政事件訴訟法とは ―行政事件訴訟の類型― |
【第8回】 |
取消訴訟の要件① ―処分性について― |
【第9回】 |
取消訴訟の要件② ―原告適格について― |
【第10回】 |
取消訴訟以外の訴訟類型 |
【第11回】 |
国家賠償 |
【第12回】 |
損失補償 |
【第13回】 |
行政組織法① ―行政組織の一般理論― |
【第14回】 |
行政組織法② ―公務員法制、公物法― |
【第15回】 |
まとめ |
|