1. |
授業の概要(ねらい) |
|
発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(LD)などがあり、平成16年以降、我が国では法律で発達障害が定義され、発達障害支援が国の施策として進められている。これらの「障害」は自身を定型発達として捉えている我々にとっても決して特別なものではなく、乳児期からの成長・発達過程を通じて、我々の自己・他者認識(身体観・世界観)とも深く関わっている。発達障害は、基本的に脳機能障害であるが、その病態の医学的な解明は、21世紀に入ってやっとその途についたばかりであり、また、これらの疾患概念や呼称も診断基準の改定のたびに変遷している現状がある。一方、世間には「発達障害」に関する、科学的根拠のないさまざまな誤解も広まっている。さらにいえば、関係する医療関係者(精神科医、小児科医など)でさえ疾患・障害を正しく理解し、適切な治療・療育を行っている施設自体が未だ限られるという問題もある。 授業は、現時点で解っている最新の知見を踏まえ、疾患や障害を健常(定型)発達と比較しながら、これらの障害について医学的・科学的に理解できるように構成した。
|
2. |
授業の到達目標 |
|
多様な発達障害における疾患の特徴や疫学、診断法、治療について、医学的な観点から多面的に理解できるようにする。 また、実際の教育現場で障害児に対して適切な配慮を行うための、実践的な療育・支援の基本的概念と各種アプローチ法について理解する。
|
3. |
成績評価の方法および基準 |
|
実習は公休扱いにするが、出席点には含めない。10分以上の遅刻は欠席扱いとする。 評価は、出席点(10%)、課題図書のレポート(10%)、講義中の計3回小テスト(80%)の成績を総合して行う。 60点以上の獲得が単位取得に必要であり、合格者に対してのみ相対評価を行う。
|
4. |
教科書・参考書 |
|
特定のテキストは使用しない。図書館(医学コーナー)を積極的に利用すること。 発達障害や脳の機能に関する書籍は多数出版されているので、これらをできるだけ多く読み、考える時間を作って理解を深めることが望ましい。 参考図書: 1.『発達障害の子どもたち』 杉山登志郎 講談社現代新書 2.『発達障害のいま』 杉山登志郎 講談社現代新書 3.『自閉症スペクトラム障害-療育と対応を考える』 平岩幹男 岩波新書 4.『自閉症スペクトラムとはなにか-人の「関わり」の謎に望む』 千住淳 ちくま新書 5.『自閉症という謎に迫る-研究最前線報告』 小学館新書 6.『ソーシャルブレインズ入門-<社会脳>って何だろう』 藤井直敬 講談社現代新書 7.『自閉症っ子、こういう風にできてます!』 ニキ・リンコ×藤家寛子 花風社 8.『ぎゅっと抱きしめたい-自閉症児こもたろのドタバタ成長記』 moro 主婦と生活社 9.『発達障害と感覚・知覚の世界』 佐藤幹夫編著 日本評論社 10.『自閉症だったわたしへ』 ドナ・ウィリアムズ 新潮文庫 11.『怠けてなんかいない!-ディスレクシア』 品川裕香 岩崎書店 12.『天才の脳科学 創造性はいかに作られるか』 ナンシー・C・アンドリアセン 青土社 13.『自閉症の脳を読み解く』 テンプル・グランディン、リチャード・パネク NHK出版 14.『乳幼児の発達障害診療マニュアル 健診の診方・発達の促しかた』 洲鎌盛一 医学書院 15.『ミラーニューロン』 ジャコモ・リゾラッティほか 紀伊國屋書店 16.『視覚障害教育入門』 青柳真弓ほか編著 ジアース教育新社 17.『聴覚障害教育の基本と実際』 中野善達ほか編著 田研出版株式会社 18.『病気がみえる vol.7 脳・神経』 メディックメディア 19.『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス 早川書房 20.『発達障害の子どもの心と行動がわかる本』 田中康夫 西東社 21.『脳の中の身体地図』 サンドラ・ブレイクスリーほか インターシフト 22.『コネクトーム-脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』 セバスチャン・スン 草思社
|
5. |
準備学修の内容 |
|
LMS上に毎回の講義レジュメ等を掲載するので、必ず事前に確認し自己学習しておくこと。 課題図書のレポートや小テストの連絡も、LMSに掲示する。 講義資料の内容を理解している前提で、講義をすすめる。
|
6. |
その他履修上の注意事項 |
|
「障害」の意味を、自身や身近な家族・友人の問題としてもとらえ、理解を深めていくことが重要である。 講義内容の質問などは、木曜10時~13時、ソラティオスクエア1F診療所にて対応する。
|
7. |
各回の授業内容 |
|
【第1回】 |
発達障害総論:診断、疫学、病因 |
【第2回】 |
中枢神経系の機能と発達 |
【第3回】 |
発達障害における感覚・知覚の世界 |
【第4回】 |
社会脳:ソーシャル・ブレインズ |
【第5回】 |
自閉スペクトラム症(ASD):心のはたらき |
【第6回】 |
自閉スペクトラム症(ASD):治療と支援 |
【第7回】 |
アスペルガー症候群 |
【第8回】 |
注意欠陥多動症(ADHD) |
【第9回】 |
特異的学習障害(LD)、ディスレクシア |
【第10回】 |
視覚障害:視認知と読字・言語理解 |
【第11回】 |
聴覚障害:手話と言語発達 |
【第12回】 |
脳性麻痺、運動麻痺 |
【第13回】 |
ダウン症と出生前診断 |
【第14回】 |
虐待による愛着障害と発達障害 |
【第15回】 |
まとめ:「障害」から「健常」を理解する |
|